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公開 | 佐藤 大輔

過去と未来の話がしたくなる、室蘭「HOQSEI CANDLE MUSEUM」の宇宙キャンドル

通信会社を経営する、脳やAIにも詳しい工学博士が、室蘭にある築100年超の建物で、宇宙キャンドルを作っている!」
なにかの聞き間違いかと思ってしまいそうな、個性大渋滞の謎を解き明かすため、北星株式会社の村田正望さんを訪ねました。
  

情報・脳・AI・心、そして宇宙

さっそく宇宙キャンドルを拝見!!と、いきたいところですが、まずは渋滞する村田さんの個性を紐解いてみましょう。ドキドキします

頂いた名刺には、
・北星株式会社 代表取締役
・HEARTSHEART Labo 代表
・AIビジョンラボ 所長
の3つの肩書が記載されています。

このうち「北星株式会社」は1976年に村田さんのお父さんが設立した、無線や通信技術を扱う「北星電機」が前身となる会社で、いわばグループの親会社のような存在です。
村田さん自身は宇宙物理学を学んだ工学博士。理化学研究所や通信総合研究所などで研究に携わったほか、通信エンジニアとしても活躍してきました。今ようやくスマホが5Gになるかならないかで大騒ぎしているというのに、その頃すでに6G・7Gの研究開発を手掛け、世界特許まで取得しています(!)。


村田さん(座る)▲各方面からAI関連の講演依頼が増えているそう


20年前に会社を引き継ぎ室蘭に拠点を移しましたが、研究を通じて深めた脳やAI分野の知見を生かし、「HEARTSHEART」「AIビジョンラボ」で企業の幹部向けに次世代AI活用のコンサルティング業務を請け負い、主に札幌や東京などで講演を行なっているそうです。

…あれ、キャンドルの話が出てこないぞ、なんだか余計に謎が深まってきた気が(笑)

 

世界観を表現するための触媒=キャンドル

お仕事内容の「未来感」がものすごい村田さんですが、お話を聞いていくと一貫したテーマは「これからの世界をどうやって生きるべきか?」なのでは、と感じます。
ICTや脳、AIなどの最先端技術はますます身近になっていくのでしょうが、それらは存在するだけでは意味がありません。それらを幸せに使いこなす想像力や感性を人間が持てるかどうかが重要になってきそうです。

想像力や感性の基礎になるのはきっと、人間の五感や感情、記憶など、いわゆる「心」と呼ばれる人間一人ひとりの根っこの部分。この根っこは、その人と社会とのつながり方、社会と世界とのつながり方、世界と地球、地球と太陽系、太陽系と銀河系のように、無数のつながりによって支えられていると言えるのではないでしょうか。


 ▲脳の研究が進んだことで、AIの話が理解されやすくなったそう


…と実は、このような村田さんの世界観を言葉で説明しようとすると、とっても時間がかかって難解。なので言葉以外で表現しようと思ったことが、「HOQSEI CANDLE MUSEUM」の宇宙キャンドル誕生のきっかけなのだそうです。


キャンドル入り口▲趣のある建物の一角が店舗になっている


プラネット▲太陽系の天体を表現した「Planets」3,300円~7,400円(税抜)


眺めているだけでも不思議な気持ちになる手づくりキャンドルは、同じものが2つとありません。独特のグラデーションと色使いは、絵を描いていたおばあちゃん譲りの感性が活きているのだとか。
全て独学で手作りだそうですが、「キャンドルは科学」だと言い切ります。博士なので科学ならお手の物なのです。なるほど。
2013年に誕生して以来「大丸札幌」や「乃の風リゾート」、新宿・マレーシア・シンガポール・上海の「伊勢丹」でも展示販売され、好評を得ました。
現在は会社のあるこの建物と、「道の駅みたら室蘭」、屋上に天文台のある「緑の風リゾート」で常設販売されています。


黄道十二宮▲星座の名前を冠する「黄道十二宮」2,300円(税抜)


ケイオスキャンドル▲ろう細工がかわいらしい「Chaos Candle」4,600円(税抜)


全てのキャンドルには、その人が暮らす空間にこのキャンドルを置くことで、ふとした瞬間に宇宙や五感を意識してもらえたら、という村田さんの思いが込められています。
たとえば電気を消したお風呂に浮かべてキャンドルをつけると、

「母親の胎内にいた頃は、自分もこうやって浮いていたんだろうなあ」
「この天体を見ている自分は、宇宙のどこにいるんだろう?」
「陸の生き物も、最初はこうやって海で誕生したのか」
などなど、色々な思いがめぐるはず。


巨大サイズ▲室蘭への郷土愛も並々ならない


当たり前に電気が使われるようになって、キャンドルを灯す必要性はほとんどなくなりましたが、一日の中に小さく揺らぐ炎の光を眺める時間をもつことは、心をリセットするための贅沢な時間の使い方なのかもしれません。

  

建物はなんと日本遺産「炭鉄港」の構成文化財



外観▲ここだけ時間が止まったかのようなレトロな外観


ところで北星株式会社が入居するこの建物、外観もさることながら館内のあちこちにその歴史の深さを感じます。
聞いてみるとそれもそのはず、ここは元々1915(大正4)年に建てられた旧三菱合資会社室蘭出張所の社屋だったのです。室蘭が北海道最大の石炭積出港として栄えた当時、空知炭鉱から鉄道によって運ばれてきた黒いダイヤを港から積み出す拠点であるとともに、石炭の質の分析などの研究場所としても使われていたのだそう。

ちなみにサッポロファクトリーに隣接する「旧永山邸」(北海道指定文化財)も、三菱合資会社が炭鉱事業を含む事業展開の拠点として買い取った建物で、石炭つながりの兄弟のような関係です。さらには北九州にも「旧三菱合資会社若松支店」という兄弟がいるのだとか。
 

内観▲当時の面影がそのまま残る館内は見学自由


きのこ▲これまた貴重なきのこ博士・西原羊一さんの資料も展示


12の素敵なこと▲「古い建物あるある」なPOPを発見、最後の一行は…笑


村田さんは元々この建物の持ち主である三菱マテリアルと建物の補修を行なっていましたが、2013年に保存に向けた調査を実施したところ、現代の耐震基準に合わないことから取り壊しの話が持ち上がりました。

しかし、この旧三菱合資会社室蘭出張所は、石炭積出港時代の室蘭の歴史と文化を残す貴重な建物。なんとか維持しようという市民有志が集まり、2014年に一般社団法人 むろらん100年建造物保存活用会が設立され、三菱マテリアルの協力のもとに建物を買い取りました。村田さんに新たな肩書「一般社団法人 むろらん100年建造物保存活用会 代表理事」が増えた瞬間です。
2015年にはめでたく築100年を迎え、今日に至っています。
 
こうした行動の背景には、前述した村田さんの世界観につながるものがあります。
この場所を訪れると、初めてきたはずなのになぜか湧きおこる懐かしさ。それは日本人が普遍的に持っている感覚なのかもしれませんし、単に似た場所の記憶がくすぐられているだけなのかもしれません。

理由はどうあれ、この場所に来たことで、視覚や嗅覚など五感が刺激され感情が揺れ動いたことが重要なのです。歴史のある建物にはそういう力がある、だから歴史的建造物は残し、活用していくべきだと村田さんは考えています。

2019年5月20日、日本遺産に「炭鉄港」のストーリーが選定されました。
旧三菱合資会社室蘭出張所はその構成文化財として名を連ねています。建物に染み付いた100年の記憶は、これから先の未来に残していくべき価値があると認められたのです。

 
 日本遺産▲館内に飾られた日本遺産認定書


宇宙キャンドルと築100年の歴史的建造物。
一見関係なさそうなものが、実はどこかでつながっていることを考えさせられる場所。

室蘭を訪れる際には一度キャンドルを手に取って、自分の五感と向き合ってみては?
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  • 過去と未来の話がしたくなる、室蘭「HOQSEI CANDLE MUSEUM」の宇宙キャンドル

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Writer

佐藤 大輔

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