
「中華まんじゅう」をご存知ですか?
北海道Likers読者には初歩的な質問かもしれませんね。肉まん、あんまんでお馴染みの熱々な中華まんじゅうではなく、北海道で中華まんじゅうといえば、コレですコレ!

あんこたっぷりの三日月形をした和菓子が、北海道が誇る中華まんじゅうなのです。
中華まんじゅうで有名な十勝・芽室町にある「お菓子のまさおか」にうかがいました。
1つずつ手焼きで丁寧に
長く愛される中華まんじゅう
まさおかは1917年(大正6年)創業。102年もの歴史を持つ老舗の和洋菓子店です。
店内には古い時代の写真が飾られていました。

中華まんじゅうを焼くのは、会長の正岡宣征さんの仕事。長年使い続ける銅板で、生地から1枚ずつ丁寧に、でも手早く中華まんじゅうを仕上げていきます。
その仕事を見せていただきました。





別名は「葬式まんじゅう」
中華まんじゅうの由来と歴史
ところで、この製法の和菓子を北海道ではなぜ中華まんじゅうと呼ぶのでしょうか。
「諸説ありますが」と前置きした上で、4代目で息子の崇さんが教えてくれました。
1つには、江戸時代のころ、現在の長野県で奥女中の千代さんがつくった菓子なので、千代菓まんじゅう→ちゅうかまんじゅう→中華まんじゅうとなった説。
もう1つは、小麦粉、砂糖、卵でつくる生地を「中花種」と呼ぶため、その中花が転じて中華となり、中華まんじゅうと呼ばれるようになったという説。

調べてみると、似た和菓子は道外にもあるようですが、なぜ北海道で中華まんじゅうとして長く愛されているのでしょうか。
「昭和の時代まで、中華まんじゅうは冠婚葬祭に使われていたんです。特に葬式の香典返し、法事の引き出物といえば中華まんじゅうだった。うちもそうだけど、ほかの店でも受注生産で焼いていたんですよ」と、正岡会長。
そうです、中華まんじゅうは別名「葬式まんじゅう」。親が持ち帰った長方形の化粧箱にきれいに詰められ中華まんじゅうを、喜んでいた昭和の子どもは多いはず。

「でもね、中華まんじゅうは返品できない訳です。特に葬式は弔問客の数がわからないから、返品可能なお茶、海苔、パッケージ入りクッキーなどが香典返しの定番に取って代わった訳です」。
受注生産だった中華まんじゅうはその後、同店だけではなく、道内の菓子店で姿を見かけなくなったのです。
ところが…。

「今から22~23年前に、札幌の三越さんの催事で中華まんじゅうの実演販売をしてみたんです。最初は葬式や法事のイメージがあるから、あまり良い気がしないんじゃないかと心配していたんですが、全然違いました。
みなさん『懐かしい』と好評で。4年続けてやったのですが、毎年待っていてくれるお客さんが多くて、それなら定番の商品にしようと」。

以来、中華まんじゅうはまさおかの看板商品のひとつに。今では店頭で買い求める人、まとまった数を予約する人など、さまざまなニーズがあるようです。「ありがたい存在ですよ」と正岡会長は笑顔を見せます。
2018年には、4つの味の中から食べたいものを選ぶ「中華まんじゅう総選挙」を行い、1位を獲得したカスタード味を期間限定で商品化したことも。
令和の時代になっても受け継がれる中華まんじゅう。素朴な味わいの中に、昭和の古き良き時代が流れています。

取材・文 / 北海道Likers ライター 小西由稀
撮影 / 北海道Likers フォトライター 髙田美奈子
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