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公開 | チバタカコ

おたる政寿司「政寿司道場」~8ヶ月で寿司職人を育てる

おたる政寿司、政寿司道場


「飯炊き3年、握り8年」と言われる寿司職人の修業を、わずか8ヶ月で育てるという自社教育をスタートしたおたる政寿司。北海道Likersは、「政寿司道場」と呼ばれる現場を取材してきました。
 
 

8ヶ月で寿司職人を育てる「政寿司道場」

2019年5月、小樽の老舗寿司屋「おたる政寿司」が自社の新入社員をターゲットに、短期間で寿司職人修業ができる「政寿司道場」をスタートしました。
 

小樽の寿司屋通りにある「おたる政寿司本店」

 
小樽の寿司屋通りにある「おたる政寿司本店」入口▲小樽の寿司屋通りにある「おたる政寿司本店」
 

そのきっかけは、毎年調理師学校から1~2人は入社していたのに、2019年は0人だったこと。寿司屋は職場環境が厳しいイメージがあり、「寿司職人になりたい」という人がいないという現実にぶつかりました。
 
「寿司職人は、今や絶滅危惧種みたいなものですよ。でもマーケットはすごく伸びている。ジャンプしたら飛べる業界だし、世界一になれるチャンスだってある。それほどエキサイティングな業界なのに、若い人にそのおもしろさが全く伝わっていません」。
 
そう話してくれたのは、おたる政寿司代表取締役副社長、中村圭助さん。

 
おたる政寿司代表取締役副社長、中村圭助さん▲おたる政寿司代表取締役副社長、中村圭助さん
 

一人前の寿司職人になるまでの修業イメージと言えば、テレビや映画などでよく見るのが、頑固な寿司職人や先輩たちが日々厳しい言動で、
 
「何やってんだい、てやんでい!」(イメージは江戸弁)
 
「見て覚えろってんだ、こんちくしょー」(やっぱり江戸弁)
 
…のようなもの。
 
「昔ながらの職場環境だと思われている、そのイメージをまずは変えたい」と中村さんは言います。
 
当然、今はそんな環境ではありませんが、それでも寿司屋で働きながら寿司職人の技術を磨こうとすると、日々の仕事が忙しくてスキルアップどころではないと言います。
 
そこで、「寿司屋で働く」ことと「寿司職人の技術を磨く」ことを分けて、集中的に技術を学ぶ環境をつくろうとスタートしたのが「政寿司道場」なのです。

 

寿司も握るが、業界の未来も握りたい

「本店に直結した魚屋を改装した道場で、週4回、午後4時から7時まで集中して学びます。江戸前寿司を基本に、北海道の強みを活かしながら、小鉢や煮物なども含めた寿司のフルコースを8ヶ月でつくれるようになる、というのが目標。そのためには腕の良い師範が必要で、職人歴40年のベテランに担当してもらっています」(中村さん談)。
 

政寿司道場外観▲政寿司道場
 

スタートしてからまだ3ヶ月(8月取材時)ですが、「政寿司道場」に入門した2人は、握りや巻物はカウンターで出せるくらいにはなったと言います。
 
「ただ、まだ3ヶ月です。社会実験的な意味もあるので、『ちゃんと教えたら人は成長する』ということが実証できれば、次のステップへすすめると思います」と中村さん。
 
若い職人が技術を学ぶだけではなく、教える側も同時に「どうすれば、わかりやすく教えることができるか」ということも模索している「政寿司道場」。
 

政寿司道場内▲政寿司道場内。調理実習室のように設備が整っています
 

今は自社の新人を育てるのが目的ですが、このシステムが構築できれば、もしかしたら小樽市の寿司職人、北海道の寿司職人を育てる基盤になるかもしれません。
 
「寿司も握るが、業界の未来も握りたい…ということで(笑)」と中村さんは笑って話してくれました。

 

政寿司道場の教材=食材は本物、
何もかも本番仕様

北海道Likersが取材した日の政寿司道場の内容は、タコの柔らか煮をつくることと、以前学んだハモの復習でした。
 
いきなり出てきたのは、活ダコ。生きています。
 
使う食材は、すべて店でも出せる新鮮なもの。
 
「本物を扱わなければ学ぶ意味がない。もちろん食材費はかかりますが、それは店で働く先輩職人たちがしっかり働いてくれているからできること。そういうこともちゃんと理解して、学んでもらいたい」と中村さん。
 
 
政寿司道場の様子▲タコの扱い方、切り方など細かく指導
 

政寿司道場の様子2▲道場生2人に師範1人。隅々まで指導が行き届く体制です
 
 

充実した学び環境で、
最短で寿司職人を目指す

道場生2人に、話をうかがいました。
 

2018年入社の荒木圭太さん▲2018年入社の荒木圭太さん。実家はえりも町で寿司屋を営んでいるそうです
 

「思っていた以上に、いろいろなことをたくさん教えてもらっています。ここで学ぶことで、仕事をしていても、食材をどうするか、これはどういう意味があるのかなど、とても興味がわいて仕事へのやる気が向上しました」と話してくれたのは荒木さん。
 

ハモを切る荒木さん▲ハモの復習の時には、前回のメモを見直し確認してから包丁を握りました

 
寿司屋修業には厳しくて怖いイメージがありますが実際には?と尋ねると、
「師範はとても優しいし、とても具体的に教えてくれます。時々叱られることももちろんありますけど、それにはちゃんと意味があって、決して怖いものではないです」。
 

2017年入社の笹山達也さん▲2017年入社の笹山達也さん。大学卒業後、寿司業界へ就職。英会話が得意
 

特技は英会話という笹山さんは、海外でも活躍できると中村さんは期待を寄せています。
 
「実際に使う食材で練習させてもらえ、経験を積むことができます。学ぶことがたくさんあり、『慌てたり、取り乱したりするな』とよく言われるのですが、そういうのは現場でも出てしまうことなので、意識して取り組んでいます」と笹山さん。
 

言われたことを真剣にメモに取る笹山さん▲言われたことを真剣にメモに取る笹山さん
 

最後に、師範である伊藤信夫さんに、2人の道場生と政寿司道場について、うかがいました。
 
「私の修業時代は、優しい先輩たちでしたので、辛くはなかったのですが、それでもやはり寿司屋は厳しいもので、それを乗り越えなければ生き残れないという時代でした」と、伊藤さん。
 
今、道場生たちに教える時に気を付けていることはありますか?
 
「どうすれば興味を持ってもらえるか、寿司の奥深さ、楽しさを伝えられるように考えています」。
 
 
職人歴40年のベテラン、伊藤信夫さん▲職人歴40年のベテランの師範、伊藤信夫さん。「彼らに怒鳴るのは簡単ですが、それは自分のストレス発散であって指導ではない。自分の足りなさを日々反省しながら教えています」
 
若い彼らには、どんな寿司職人になってもらいたいですか?


政寿司道場の様子3
 

「寿司職人は自分が経営者になるのが一番。彼らが親父(経営者)になって、自分の子(寿司職人)を育てるのが一番の成功です。そうなったら私は遠くから見ていますよ。食べに行くかって?いやいや、こいつらの寿司なんて…(笑)」。
 
8ヶ月の短期集中で、握り、巻物はもちろん、煮物20種類、焼き物20種類、小鉢100種類を全部自分一人でつくり、客に出せるまでに育てる政寿司道場。
 
そこには、寿司業界慣例の修業に対する改善、業界全体の人手不足、その先のさらなる人材育成など、さまざまな課題解決に結びつく一筋の光が見えたような気がしました。
 
 

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