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公開 | 小西 由稀

大地を創る人。はじまって100年。さらに100年先へ向け、農をつなげる。大塚裕樹さん・早苗さん(新篠津村)

大塚ファームの大塚さん夫妻

 
うぶ毛がびっしり生えた元気なミニトマト。艶やかで美しいズッキーニ。
「大塚ファーム」の夏野菜は、眺めているだけで元気をもらえます。


大塚ファーム
 

札幌から車で約1時間。石狩平野の中心にある新篠津村に大塚裕樹さん、早苗さんご夫妻を訪ねました。
 
おふたりが経営する大塚ファームは、いち早く少量多品目の有機野菜の栽培に挑戦。現在は約30品目を栽培し、その野菜で加工品をつくり、販売も行っています。


大塚ファームの加工品▲有機野菜の元気スープ、有機ほし甘いも、パクチー&バジルドレッシング。加工品や販売は早苗さんの担当。一年を通して雇用を生み出している
 

女性や外国人を積極的に雇用するなど、さまざまな取り組みが「第43回日本農業賞」の個別経営の部で大賞に輝き、「農業の未来を作る女性活躍経営体100選」に選ばれるなど、全国でもその取り組みが注目されている生産者です。


大塚ファームの大塚さん夫妻
 
 

農薬アレルギー発症から
オーガニック野菜の栽培へ

大塚家が新篠津に入植し、2003年に100年を迎えました。…ということは、今年で106年!
 
同園4代目の裕樹さんは、学生時代から「農業経営者になる!」と心に決め、北海道立農業試験場に勤めながら農業技術を学び、20歳で就農。
 

大塚ファームのトマト
 

最初に栽培したのがミニトマトでした。
 
「農薬の被害に一番遭いやすいのは誰かわかりますか? 僕たち農業者です」。
 

大塚ファームの大塚さん
 

裕樹さんは初年度、農薬や化学肥料を使い栽培しましたが、農薬アレルギーを発症。
これがきっかけで、2年目から無農薬栽培に切り替え、さらに化学肥料を使わない有機栽培にも取り組み始めました。
 

サングリーン▲珍しいグリーン色のミニトマト「サングリーン」

 
23歳の時には、当時まだ珍しかった有機農家のグループ「オーガニック新篠津」を設立。統一ブランドにより有機野菜の普及に務めるほか、日々栽培技術の向上に力を注いできました。

 

小さな試みを積み重ね
育んできた有機栽培の技術 

大塚ファームの原点でもあるミニトマトは、現在43棟のビニールハウスで8種類を栽培。
 

トマトのハウス▲作業場の3階から眺めたハウスの屋根、屋根…。圧巻!
 

よく見ると、鈴なりに実をつけたトマトの株は、地中深くまで根を張って、栄養を摂れるように斜めに植えられています。
 
「水は週に1回だけ、地下152mから汲み上げた地下水を与えます。あえて厳しい条件下に置くことで、ミニトマト本来のおいしさを引き出すためです」。
 

トマトの樹
 

その言葉どおり、大塚ファームのトマトを頬張ると、糖度と旨味がしっかりと感じられます。
 
さらに、ミニトマトの隣にはバジルや空芯菜など、相性の良い共生植物「コンパニオンプランツ」を混植。
 
ハウス内の環境をトマトだけで単一化させないことで、病害虫の発生を防ぐ役割があるといいます。
 

トマトの横には空芯菜を植える▲トマトの手前に植えられているのが、空芯菜
 

また、夏は南風にのって害虫が増えるため、ハウスの南側にはスペアミントを植え、虫よけの効果を狙っています。
 

ハウスの横にはミントを植える▲写真左側がバンカープラントのスペアミント
 

どのハウスも入り口に品種名や定植日、株数を記し、日々の栽培管理を記録したノートを置いて、スタッフ間で情報を共有。また、収穫に使う台車の置き場所も徹底しています。
 

大塚ファームの大塚さん


「そこまでするのは省力化のため。うちのハウスは75mと長いので、台車を探していては収穫に時間がかかります。
 
有機栽培は薬に頼らない分、手作業が多く仕事量も増える。効率化を図らないとできない農法なんです」。
 
独学で有機栽培、自然農法を勉強し、手探りの中で体得してきた小さな経験の積み重ねが、大塚ファームの土台になっているのです。
 
 

農業が身近な存在になるように
交流を通して伝えたい

大塚ファームは野菜の直売はしていませんが、農業が昔のように身近な存在になるように、農業体験の受け入れや消費者交流なども積極的に行っています。
 
その様子を覗いてみましょう。
 
コープさっぽろが行っている「畑でレストラン」は、「コープさっぽろ農業賞」を受賞した生産者の畑に1日限りのランチレストランを開店する人気イベント。


大塚ファームでの畑でレストラン
 

記念すべき第1回目の同賞で「コープさっぽろ会長賞(現・コープさっぽろ賞)」を受賞した裕樹さんが、「生産者と消費者が一緒にごはんを囲む機会を」という発案から畑でレストランが始まりました。
 

大塚ファームでの畑でレストラン▲大塚ファームの野菜を使った料理を楽しみ、大塚さんとの会話を楽しむ参加者のみなさん
 

大塚ファームでの畑でレストラン▲食事の前にはファームツアーで農を体感
 

大塚ファームでの畑でレストラン▲今年、大塚ファームとタッグを組んだのは、青ちゃんことフードプロデューサーの青山則靖さん
 

大塚ファームでの畑でレストラン▲「大塚さんの野菜は味がしっかりしておいしい。なので、薄化粧する程度の味付けでその魅力を引き出す調理をしています」と、青ちゃん


大塚ファームでの畑でレストラン▲夏野菜のおいしさを多彩に楽しめた今回のメニュー。緑色のトマトで割ったサッポロクラシックのビールカクテルも登場


大塚ファームでの畑でレストラン▲この日だけの直売所もオープン。大塚家の三男くんもお手伝い
 
 

次の100年へ向けて
魅力ある農業づくりを

大塚ファームのパンフレットは、青空の下で笑顔はじける家族写真が印象的です。
あえて3人の息子が一緒に写った写真は選んだのは、次の100年に向けた大塚ファームの「誓い」の気持ちを込めているからです。


大塚ファームのパンフレット
 

「農業は誰かがやらねばならないもの。
息子たちやその次の代へと農業経営のバトンを渡し、安全で安心できる有機野菜を届ける生産責任を果たしていきたいと思っています。
 
みなさんの子ども、孫、ひ孫の代までいい野菜をつくっていくので、ぜひ応援してください。そんな気持ちでいるんです」。
 
自分たちにとっても、スタッフにとっても、息子たちにとっても、将来性を感じながら働くことができる魅力ある農場づくりを夫婦二人三脚で目指してきました。
 

大塚ファームの大塚さん▲「3本の矢と一緒で、3人で協力して力を合わせれば何とかなるでしょう」。現在、息子さんは高校2年、中学3年、中学1年
 

大塚ファームの大塚早苗さん▲「小さい時から農業に興味を持つように、親しんでもらえるように子育てしてきました」と、早苗さん。「加工でも輸出でも、息子たちそれぞれがやりたい農業を見つけてほしい」
 

4代目はあくまでつなぎ役。
 
台風や記録的な豪雪でハウスが倒壊し、火災でハウスとミニトマトの苗が焼失するという困難に見舞われた年もありました。
 
その度に気持ちを奮い立たせたのは、「やられたらやる!」という負けん気と、「次の世代へ農業経営をつなぎたい」という想いから。


大塚ファームの野菜▲大塚ファームの包装には、3人の息子を描いたロゴマークが
 

有機栽培は小規模なイメージがありますが、大塚ファームの栽培面積は9ha(全面積合計18ha)。
オーガニックの大規模化のロールモデルとして安定供給を目標に掲げ、新たな加工品づくりの構想も温めています。
 
「顔の見える生産者」から「取り組みの見える生産者」へ。
北海道農業の可能性を感じさせる大塚ファームの熱い挑戦に、今後も目が離せません!
 

大塚ファームの大塚さん夫妻

 

関連リンク

大塚ファーム
大塚ファームのFacebookページ

 

「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。
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小西 由稀

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