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公開 | 木村健太郎

知られざる秘境を見よ!令和に誕生した福島町の「岩部クルーズ」を体験してみた

絶景や秘境の宝庫である北海道。道内各地でその絶景を海から紹介しようと様々なクルージングが展開されていますが、令和元年に入り新たな絶景クルーズが誕生しました。その名は北海道松前郡福島町の「岩部クルーズ」。道南地方や地元の人でも知らないという秘境・岩部海岸の魅力を紹介するクルーズに実際に乗船してみました!
 

▲ドローンで撮影された絶景の岩部海岸。こちらは福島町パンフレットの表紙にもなっています(提供=岩部クルーズ)▲ドローンで撮影された絶景の岩部海岸。こちらは福島町パンフレットの表紙にもなっています(提供=岩部クルーズ)

 

目次

岩部海岸とは?
町を挙げての新たな観光事業に
乗ってみた!予想以上の絶景に「青の洞窟」も
驚きのハプニング!


 

岩部海岸とは?

道南地方の福島町は、函館から西南方面へ約60㎞にある人口4,020人(2019年7月末現在)の小さな町です。世界最長の青函トンネル掘削工事を行う縦抗が吉岡地区にあったため、青函トンネル記念館が人気を呼んでいます。また、千代の山、ウルフの異名で一世を風靡した千代の富士(故・九重親方)という2人の横綱を出した町です。
 
しかし、近隣には日本有数の観光都市・函館や、北海道唯一の城下町で桜が有名な松前町があるため、町のオリジナリティーを出した観光アイテムが必要でした。そこで、ここ10年来構想に挙がっていた、秘境・岩部海岸を紹介するクルージング「岩部クルーズ」が誕生したとのこと。その経緯は後述します。
 
 
▲受付・集合場所となる福島町岩部交流センターです▲受付・集合場所となる福島町岩部交流センターです。福島町中心部から東の海岸線を通る道道532号線の行き止まりにあります。
 
 
岩部海岸は、松前郡松前町から福島町、知内町の海岸線を結ぶ約30㎞の「松前矢越道立自然公園」内にある福島町東部の海岸です。約5㎞に渡る断崖絶壁が、太古から人が入り込むことを拒んできた結果、現在でも手つかずの自然が残ります。
 
町民でも漁師以外はその全容は知らないという、秘境中の秘境といわれる岩部海岸の絶景をグラスボートで約90分かけて周遊するのが「岩部クルーズ」です。
 

▲乗船場所となる岩部漁港も非常に小さな港です(提供=岩部クルーズ)▲乗船場所となる岩部漁港も非常に小さな港です(提供=岩部クルーズ)
 
 
福島町西部は250万年前にできた断層が多く複雑で、地層の標本と言われる一帯で、同町東部は西部と比較し新しくできた火山岩の地層が海岸近くまで分布し、奇奇怪怪な断崖を形成しています。同海岸一帯は、青函トンネル掘削事業のため昭和20年代から地層や地質調査が続けられ、その成り立ちが他地域より明らかになっています。

 

町を挙げての新たな観光事業に

 
前述したとおり、岩部海岸を観光に利用する計画は、約10年前から福島町で話が上がっては立ち消えになっていましたが、現在の鳴海清春町長になってから実現に向けて動きだしました。町民31人で合計1,000万、福島町1,000万を出資し官民合同会社「福島町まちづくり工房」を立ち上げました。
 
同社の理事でクルーズのガイドを担当する運行管理責任者・平野松寿(しょうじゅ)さんは「岩部海岸は北海道の中でも知られざる秘境中の秘境。目的がないと絶対来ない場所です。そこにスポットライトを当て、お客様を呼び込む動きをしようと3年前から計画をスタートさせました」と話しました。
 
 
▲車で岩部漁港まで向かう道程も断崖が続き秘境感タップリです▲車で岩部漁港まで向かう道程も断崖が続き秘境感タップリです
 
 
まさに町を上げての観光事業の一環と言えますね!
 
平野さんは福島町出身ですが、高校は恵庭市、就職は東京と町から離れていました。しかし、実家の仕事を継ごうと福島町に帰って来た時に、同クルーズの話が持ち上がっていて、やってみようと思ったとのこと。


▲ガイドを行う平松さん。自身も岩部海岸に魅せられている1人です▲ガイドを行う平野さん。自身も岩部海岸に魅せられている1人です
 
 
まず、岩部海岸を知ることから始めました。福島町史や、昭和40、50年代など町の広報紙などを読み込んで歴史や事象を調べ、春になり船を出すようになると実際に船に乗って検証してみたり、実際ガイドのように話してみるなど、実地検証には約1年をかけました。
 
同時進行で国(運輸局)への各種申請など手続きを経て認可を得ました。
実は昨年度に昆布漁に使う漁船を使って開始予定でしたが、町から新造船建設予算が出たため運航時期を延ばし、約800万円をかけ11人乗りの船底から海底を観ることができるグラスボートを建造します。
 
昨年度は小舟を使って町民240人に対しモニター乗船を行い、そこで手ごたえを得て、令和に変わった6月から満を持してクルーズをスタートさせたのです。

 

乗ってみた!予想以上の絶景に「青の洞窟」も

前振りが長くなりましたが、実際に乗船してみました!料金は大人3,000円と同種のクルーズとしては格安だと思います。
 
 
▲岩部交流センターからトンネルと覆道を抜けて岩部漁港に向かいます。期待感が高まります▲交流センターからトンネルと覆道を抜けて岩部漁港に向かいます。期待感が高まります
 
 
▲岩部漁港は本当に小さな港です。クルーズ船以外は漁船も見当たりませんでした▲岩部漁港は本当に小さな港です。クルーズ船以外は漁船も見当たりませんでした
 

筆者が予約した時は風で波が高く欠航の憂き目に遭い、再予約でした。津軽海峡は複数の海流がぶつかり合い流れも速く、強風で波が荒い日も多く欠航がつきもの。同クルーズは運航率6割を目指していますが、まずは安全第一に考えています。
 
この日の波は珍しく凪に近い状態でしたが、曇り空で霧もかかり見通しの悪い生憎の天候。ですが平野さんは「岩部海岸は季節や天候、時間帯で常に見られる景色は変わります」と話し、毎日が唯一無二の景色が広がることを強調します。
 
 
▲低く雲や霧が垂れ込める天候も、逆に幻想的な風景になっていました▲低く雲や霧が垂れ込める天候も、逆に幻想的な風景になっていました
 
 
漁港を出港すると、すぐに海まで迫った断崖や巨岩、奇岩が目に留まります。まもなく現れるのが、まさに海の浸食のなせる業と感じた「オバケ岩」です。
 
 
▲正面から見るとよくアニメや絵本に出てくるオバケや妖怪に見えます▲正面から見るとアニメや絵本に出てくるオバケや妖怪に見えます
 
 
クルーズの序盤は3つのモニュメントがあるタタミ地区が見応えがあります。クルーズ中、海の透明度が最も高くウニやアワビが大量に生息している地域です。
 
 
▲崖の尾根から流れおちる畳の滝です。岩部集落の山奥に浄水場があるため、一年中水量が一定とのこと▲崖の尾根から流れおちるタタミの滝です。岩部集落の山奥に浄水場があるため、一年中水量が一定とのこと
 
 
▲グラスボートの船底から海中が見られます。分かりにくいですがムラサキウニがゴロゴロしていました▲グラスボートの船底から海中が見られます。分かりにくいですがムラサキウニがゴロゴロしていました
 
 
▲岩部海岸は海鳥の宝庫。写真はハヤブサです。ほかにもミサゴ、アオサギ、ウミウ、イワツバメなども見かけました▲岩部海岸は海鳥の宝庫。写真はハヤブサです。ほかにもミサゴ、アオサギ、ウミウ、イワツバメなども見かけました
 
 
タタミ地区の象徴と言える巨大な奇岩『耳岩』は波の寝食により中央に穴が開き、穴が開いた正面から見ると人間の耳に見えるため名づけられました。
 
 
▲耳岩です。確かに人間の耳に見えますね。高さは50mで近くに寄るとその大きさに圧倒されます▲耳岩です。確かに人間の耳に見えますね。高さは50mで近くに寄るとその大きさに圧倒されます
 
 
耳岩の後に見られるのがシタン岩です。アオサギやカモメが営巣し、カモメのヒナもいましたよ!
 
 
▲手前のシタン岩と耳岩を入れた絶景が平松さんイチオシのフォトスポットです。霧が垂れ込め幻想的な景色ですが、晴れていればより映えたはずです▲手前のシタン岩と耳岩を入れた絶景が平野さんイチオシのフォトスポットです。霧が垂れ込め幻想的な景色ですが、晴れていればより映えたはずです
 
 
▲ドローンで空撮したシタン岩と岩部海岸。海の透明度がスゴイですね(提供=岩部クルーズ)▲ドローンで空撮したシタン岩と岩部海岸。海の透明度がスゴイですね(提供=岩部クルーズ)
 
 
希望者には平野さんがドローン撮影も行っています。これは全国の数あるクルーズでも初の試みで、思い出を残すには最適!
 
 
▲霧で隠れていますが、最大200mの高さがある切り立った岩部断崖は大迫力!雨の日などはいくつもの大小の滝が現れます。▲霧で隠れていますが、最大200mの高さがある切り立った岩部断崖は大迫力!雨の日などはいくつもの大小の滝が現れます。
 
 
絶景だけではなく歴史の爪痕が刻み込まれた岩礁『船隠(ふなかくし)島』もありました。
 
 
▲箱館戦争の舞台となった船隠島です▲箱館戦争の舞台となった船隠島です
 

1869(明治2)年、箱館を目指す新政府軍を迎え撃つため、旧幕府脱走軍はここに砦を築きます。新政府軍の艦船は島に無数の砲弾を打ち込んだそうです。地元の漁師さんの話では砲弾や銃弾の跡がたくさんあるとか。
 
また、名前の由来は北海道に密航した人々が島の裏に船を隠したことからくるそうです。
 
ある意味、同クルーズのメインは奥行き80mの「青の洞窟」。北海道では小樽、積丹が有名ですが、福島町にもあるのです!
 

▲青の洞窟入口です。外見は普通の洞窟に見えますが、漁師さんにとっては神聖な地で無闇に踏み入ってはいけない場所でした▲青の洞窟入口です。外見は普通の洞窟に見えますが、漁師さんにとっては神聖な地で無闇に踏み入ってはいけない場所でした
 

▲洞窟の中に入ると神秘的な光景が広がっていました▲洞窟の中に入ると神秘的な光景が広がっていました
 
 
青の洞窟は毎日景色が変わります。文字通り青く輝く日もあれば、海が濁るとエメラルドグリーンに光り輝く日もあり、まったく青く見えない日もあるとか。天候や太陽光の角度、潮の流れや海の透明度などによって色が変わるのだそうです。
 
 
▲かつては人が住んでいたというツヅラ沢。右側の松の木が名残だそうです▲かつては人が住んでいたというツヅラ沢。右側の松の木が名残だそうです
 

青の洞窟を出てさらに東に行くと「ツヅラ沢」と呼ばれる大きな沢があります。ここはかつて、終戦後の昭和23年、旧樺太から引き揚げの元町民35人が3年間暮らしていました。イカやサメを獲ってフカヒレは本州、イカは塩辛に加工し札幌に出荷することで生計を立てていました。
 
また運が良ければヒグマやエゾシカ、キタキツネなどが沢に降りてくる姿を見られるとか。
 
クルーズの最終地点は矢越(やごし)岬で岬の東側は知内町です。岬の切り立った崖上の中腹に矢越神社の鳥居があります。
 
 
▲船でしか来ることができないまさに秘境の神社です▲船でしか来ることができないまさに秘境の神社です
 
 
歴史は古く、1655年に創設された矢越八幡神社です。
この地域の海は3つの海流がぶつかる所で海難事故が多く、さらに当時はアイヌとの争いが多いことで、海上の安全祈願と戦勝祈願のため建立されたと言われています。
 
昔はこの海域を通るたびに船から酒を撒いて漁や航海の安全を祈ったのだそうです。
 
また、義経伝説が残っている場所で『矢越』の名前も同伝説から来ています。詳細はぜひ乗ってガイドを聞いて下さい。
 
ここが最終地点となり、クルーズは岩部漁港に引き返していくことになります。

 

驚きのハプニングが!

漁港へ引き返す途中、カモメやウミネコが海面に大挙する場所がありました。これは、ブリの群れが餌となる小魚を追っていて、海鳥がそれを狙って取り合いを繰り広げています。
 
 
▲餌の取り合いは熾烈です。可愛げはなく厳しい野生の世界を垣間見ました▲餌の取り合いは熾烈です。可愛げはなく厳しい野生の世界を垣間見ました
 
 
そして、このブリの群れの向こうには何と、マグロがバシャバシャと飛び跳ねているではありませんか!
 
 
▲かなり遠い距離で豆粒ほどですがマグロを写せました!▲かなり遠い距離で豆粒ほどですがマグロを写せました!
 
 
船長さんも「ブリは普通だけど、マグロは珍しい」と言えば、平野さんも「3年間で初めてです」と興奮気味でした。津軽海峡は全国屈指のクロマグロの産地ですが、このようなシーンに出会うのは人生初!
 
 
▲こちらもマグロです。小さいですが小魚も飛んでいるので、追って食べようとしているのでしょう▲こちらもマグロです。小さいですが小魚も飛んでいるので、追って食べようとしているのでしょう
 

マグロのこんなシーンを見られるのは北海道でも道南地方だけでしょう。6月中旬まではイルカが姿を現すとか。
 
季節、時間、気候、天候によって観られる景色は一期一会。今回のマグロと遭遇も一期一会の奇跡です。
 
福島町としてはクルーズを中心に、岩部地区の大自然を生かし、空家や空き地を利用し観光客を呼び込む「岩部体験村」にする構想があるとのこと。岩部クルーズは新たな観光事業として上々のスタートを切ったようです。


▲2月から青の洞窟をイメージした「青の洞窟サイダー」も販売しています!▲2月から青の洞窟をイメージした「青の洞窟サイダー」も販売しています!


「1年目としては予想以上の反応を頂いています。感動した!との声や、歓声が上がるリアクションは本当に励みになります」(平野さん)。今年度の同クルーズ運航は10月一杯まで。唯一無二のクルーズをぜひ体験してみては?
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