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公開 | 小西 由稀

大地を創る人。WILD MILKを通して酪農の楽しさ、その可能性と価値を伝えたい。山本照二さん(中標津)

山本牧場の山本照二さん


何だろう、このすっきり感。夏の暑さの中でも、グイッと飲み干したくなるおいしさ。
 
北海道の東部・中標津町で生産されている「山本牧場」の養老牛放牧牛乳「WILD MILK」は、季節感を映し出す牛乳です。
 

養老牛放牧牛乳▲WILD MILKの瓶は、夏は緑色、冬は赤色と、エサによって色分けしているのも特徴
 

一年365日、乳牛を完全放牧で飼育。
 
夏は青々とした夏草を、冬には発酵・熟成した干草を食べる牛たちは、夏にはさっぱりとした後味の、冬には濃厚な味わいのお乳を出します。
夏と冬、それぞれの移行期にはまた違う味わいになるのだそう。
 
均一化されていない自然のおいしさを楽しむ。そんなWILD MILKを生産する山本さんもまた、自然体で大らか。そして、ちょいワルも入っています。
 
 

ひとかたまりになり吹雪をやり過ごす
完全放牧の“日本一たくましい牛たち”



山本牧場の山本照二さん
 

新宿生まれの新宿育ちの山本さん、北海道に移住したきっかけをこう話します。
 
「都会でしょ、その反動で自然が大好きで。学生時代はバイクで開陽台を目指してよく走りましたよ。以来、道東が好きになっちゃってね」。
 
食関係の流通の仕事をする中で、北海道でものづくりがしたいという思いが強くなる日々。北海道でものづくりといえば、農業だ。大好きな道東でやるなら酪農しかない。
 
まっすぐな道東愛を引っさげ、家族で移住したのは1999年のこと。2年後には中標津町養老牛で営農を開始しました。
 

山本牧場
 

北海道でも放牧酪農家の数は少なく、ましてや冬も屋外で放牧する生産者はほとんどいません。それでも、山本さんは理想の酪農スタイルと省力化、経済性を両立すべく、完全放牧の道を選んだといいます。
 
冬にはマイナス30度になる日がある厳しい環境。初年度は40頭いた牛のうち、数頭が命を落とすことに。
 
「めちゃくちゃ反省。自信をなくしました」。
 

山本牧場

 
ところが、牛たちはたくましいもので、この環境に次第に順応。吹雪の夜はエサ場にひとかたまりになってやり過ごすなど、自らの体を守り、自然と共存する術を身につけていったといいます。
 
「その強さ、生命力が、WILD MILKの味わいにも表れると思うんです」。
 
 

量よりも質、牛の健康が一番
オーガニック&グラスフェッドへの挑戦

 現在は青草、乾草のみを与える「グラスフェッド(牧草飼育)」の山本牧場ですが、当初は違いました。
 
ホルスタイン種は、穀物など多くのエネルギー、カロリーを摂取し、たくさん乳量を出すように改良された乳牛。
ゆえに、山本さんは8年という時間をかけ、毎年少しずつ穀物飼料を減らし、牧草の割合を増やしていきました。

 
山本牧場の山本照二さん
 

そこまでして穀物飼料、特に輸入の穀類を避けたのは、山本さんが酪農研修生の時に世界的に発生したBSE(牛海綿状脳症/狂牛病)問題がありました。
飼料に含まれた肉骨粉が原因といわれ、食品安全、牛に与えるもの、飼育方法、牧場の在り方をあらためて考えるきっかけになったといいます。
 

山本牧場
 

乳量ではなく乳質を重視。
全体的に搾る量は減っても、牛の健康を第一においしい牛乳をつくりたい。その思いは、農薬と化学肥料を使わず、太陽と土の力で育てる牧草づくりにも反映されています。

 

酪農って楽しいし、可能性がある
さまざまな活動でその価値を伝える

牛乳はエサや飼育環境、体調、要は日々で味わいが変わるもの。
放牧牛乳の味わいを生かすため、自社でミルクプラントを持ち、ノンホモ低温殺菌製法でゆっくり時間をかけて殺菌しています。
 
牧場の中でWILD MILKを楽しめるようにと、2015年にはコンテナを改装したアンテナショップ「ミルクレーム」を牧場内にオープン。
 

ミルクレーム
 

WILD MILKでつくるソフトクリームがまた、牛乳の味わいを楽しめておいしいのです。
オリーブオイルやバーボンメープルシロップなど、トッピングにもひと工夫、ひと練りあって、まさに“おとなのソフトクリーム”。
 

 ソフトクリーム▲ワッフルコーンは手焼きで、プレーンとココア味がある
 

また、2019年春には、東京・調布のつつじヶ丘神代団地に直営店「山本牛乳店」をオープン。
 
「牧場&ローカルクラフトメーカーが東京に牛乳宅配店を出店するのは、全国初の取り組みじゃないかな」と、山本さん。
 
宅配を柱に、ソフトクリームとスイーツを提供。地元農家の野菜やオーガニック商品も揃え、
「地域のコミュニティの要として、産地と都会を結びながら、酪農の魅力や生命の温もりを伝えていく広場になればなぁと、思っています」。
 

養老牛放牧牛乳
 

さらに山本さんは、SDGs(持続可能な開発目標)の活動にも取り組み、持続可能な農業を地域と連携して進めています。
 

山本牧場の山本照二さん▲「道東SDGs推進協議会」事務局長を務め、SDGsの考えを多くの人に伝えている

 
「自然に生かされている地域なので、環境に負荷をかけない農業という考え方は大切だと思っています。
 
いろんな酪農のカタチがあるので、それぞれができるところから少しずつ変えていく。
 
SDGsの意識を持つことでこの地域がさらに良くなっていくし、輪が広がってきていると実感しています」。
 

山本牧場の山本照二さん


酪農って楽しい。その価値を高めたい。その可能性を発信したい。
 
WILD MILKとともに、山本さんのチャレンジはまだまだ続きます。

 

関連リンク 

山本牧場
山本牛乳店Facebookページ 
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「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。
 
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小西 由稀

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