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公開 | 佐々木葉子

情熱の仕事人。好きな言葉は、Don't Think! Feel. 結成20年のデザインコンビ「ワビサビ」

情熱の仕事人。Don't Think! Feel.結成20年のデザインコンビ「ワビサビ」


ワビサビは、工藤“ワビ”良平さん、中西“サビ”一志さんが
札幌を拠点に、日本、世界をまたにかけて活動するデザインコンビ。

あ・うんの呼吸で作り上げる作品は、あたまでっかちな観念をひっかき、
ある時は強烈に、ある時は寄せては返す波のように心にしみこんできます。

結成から今年で20年。ワビサビはどこから来たのか?何者なのか?どこへ行くのか?
1月に札幌で開催された「ワビサビ結成20周年展」のテーマを、Likers風に解明していきます。

 

INDEX

・ワビサビ、半端ない。思考回路、どうなってるの?
・ボツになったけど、おもしろいものもあったよね
・カッコいいもののルーツは日本の文化にあった
・ライフワークの「1年1盆栽」。その広がりと進化
・Don't Think! Feel.「考えろ」、「感じろ」


 

ワビサビ、半端ない。
思考回路、どうなってるの?

 ワビサビは、とにかく、イカしている。

まず、見た目。右手が工藤“ワビ”良平さん(以下、ワビさん)、左手が中西“サビ”一志さん(以下、サビさん)。ワビさんのゆるめの雰囲気、サビさんのかための感じ。そして、二人の間のこの微妙な距離。これがワビサビの風情。
 

▲「ワビサビ結成20周年展」2019年1月19日(土)~30日(水) 札幌市民交流プラザ1階SCARTSコートにて(C)ワビサビ 撮影:カワジリ リョウイチ▲「ワビサビ結成20周年展」2019年1月19日(土)~30日(水) 札幌市民交流プラザ1階SCARTSコートにて(C)ワビサビ 撮影:カワジリ リョウイチ


そして、当然、つくるものがイカしている。

代表作は、こちらの「生身の人間 Flesh and blood」。
2006年、世界で最も古い広告デザインの国際賞「ニューヨークADC」銀賞を受賞した作品です。

 
▲「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」金賞、「台湾国際ポスターデザインアワード」銅賞も受賞 制作年:2005 (C)ワビサビ▲「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」金賞、「台湾国際ポスターデザインアワード」銅賞も受賞 制作年:2005 (C)ワビサビ


じーっと見ると、確かにアルファベットで「Flesh and blood」が配置されているのがわかります。解読できますか?ワビサビが創作し、「ホルモン」と命名したオリジナルフォントと、人体の内側をのぞきこんだようなインパクトあるビジュアルが、かっちりシンクロしています。

この作品はどのように考え、生まれたのかとよく質問されるそうです(ですよね)。
「有機的な曲線、ちょっとグロテスクなもの、好き嫌いが分かれるようなデザイン…いろんなことが頭の中をめぐり、手を通って出てきたような気がする」とサビさん。ああしたい、こうしたいが熟して、ガラガラポンと産まれた、ということのようです。

 
▲ホルモン柄のシャツで「ニューヨークADC」授賞式へ (C)ワビサビ▲ホルモン柄のシャツで「ニューヨークADC」授賞式へ  (C)ワビサビ


それから約10年を経て、ワビサビのバイオグラフィに加わった最新シリーズが、こちらの「HERE MAN」。抽象的な、おそらく人であろう存在。作品にはそれぞれに人の名前が付いています。これは、海外では台風に名前を付けていることにインスパイアされたそうです。
 

▲「Camille」 制作年:2018 (C)ワビサビ 撮影:藤原晋也▲「Camille」 制作年:2018 (C)ワビサビ 撮影:藤原晋也


「この作品は、プリントの上に、筆でアクリル絵の具を重ね塗りしています。そうすることで、唯一のものになりますから」とワビさん。オリジナルとはなにかという問いに対して、技法を通して出したひとつの答えなのでしょう。

発想があって、定着がある。そのプロセスには、途方もないワークや想像を超えたジャンプがありそうです。ブラックボックスともいえるワビサビ。二人は一体どこで出会い、ワビサビはどこから生まれたのか。そこから聞いてみました。

 

ボツになったけど、
おもしろいものもあったよね

ここではワビサビの空気感を少しでも伝えたく、インタビュー形式で進めます。

●出会いは30数年前と聞きました。お互いの第一印象は?
ワビさん:当時、僕が勤めていた会社の社長が、サビが通っていた専門学校の卒業制作展を見に行き、飛び抜けたヤツがいると。それがサビで、会社に入ってきました。生意気で、自信に満ちあふれていました(笑)。サビは、時代に合った最新のデザインをしていて、僕が作るものとはまったく違ってました。

サビさん:会社に行くと、僕の席はワビの隣でした。ワビはいつも遅刻してましたね。あ、それは朝まで仕事してるからで、どうしてそうなるかというと、僕のスローな作業に合わせてくれていたから。湯気のような優しい先輩でした。
 

▲工藤“ワビ”良平さん:1963年、函館市生まれ。北海道綜合美術専門学校(bisen)卒業後、AD ARTSに入社。1990年、東急エージェンシーに入社。2010年、デザ院株式会社を設立、現在に至る。日本グラフィックデザイナー協会理事、札幌アートディレクターズクラブ運営委員▲工藤“ワビ”良平さん:1963年、函館市生まれ。北海道綜合美術専門学校(bisen)卒業後、AD ARTSに入社。1990年、東急エージェンシーに入社。2010年、デザ院株式会社を設立、現在に至る。日本グラフィックデザイナー協会理事、札幌アートディレクターズクラブ運営委員
 

中西“サビ”一志さん:1965年、帯広市生まれ。札幌デザイナー学院卒業後、AD ARTS、LEAVE、NOWを経て、2010年、デザ院株式会社に入社。現在に至る。日本グラフィックデザイナー協会会員、札幌アートディレクターズクラブ運営委員▲中西“サビ”一志さん:1965年、帯広市生まれ。札幌デザイナー学院卒業後、AD ARTS、LEAVE、NOWを経て、2010年、デザ院株式会社に入社。現在に至る。日本グラフィックデザイナー協会会員、札幌アートディレクターズクラブ運営委員


●その1年後、サビさんは他のデザイン会社に転職し、二人は離れます。
ワビさん:僕は7年勤めて、広告代理店に転職。そこで担当するクライアントの広告を一緒に作りたいと思い、サビを誘ったのですが、断られました。

サビさん:まだ、力不足だと思ったからで。

●普通なら、そこで関係が切れそうですが。
ワビさん:ところが、またしばらくして、僕がサビに言うんですよ。僕と仕事しない? 転職しない? って。

サビさん:二度目の誘いがあった頃は、僕もデザインすることが楽しめるようになっていました。また、同世代の中で自分がどれくらいの力量なのかを知りたい気持ちがあって、わかりましたと。ま、二回は断れないというのもありました。
 

▲ワビサビの拠点・デザ院にて。背景のショーケースには、フィギュアやら何やら、お宝がいっぱい▲ワビサビの拠点・デザ院にて。背景のショーケースには、フィギュアやら何やら、お宝がいっぱい


●二人での広告づくりは楽しかったですか?
サビさん:正直、最初の頃は、広告の仕事に慣れるまで大変でした。

ワビさん:グラフィックデザインと広告って、似ているようで違うんですよね。ロイヤルホストで粘ってラフ描いたり、したね。

●これだ!という案が出ない時は、どうするんですか?
ワビさん:考え続ける。とにかく考える。秀作が掲載されいている広告の年鑑があるんですが、そういったものはほとんど見ない。どちらかというと、僕は言葉からつめていくほうでもあるので。

サビさん:そう、ワビは言葉、それも擬音が多い。で、僕も考えて考えて、時々落書き描いたり、手を動かしたり。

●そうした日常があって、ワビサビはどんなことから生まれたんですか?
ワビさん:考えて考えて作った案でも、すべてが通るわけではない。当たり前ですよね。でも、仕事としてはボツになったけど、あれ、おもしろいよねというものもありました。だったら、自分たちのデザインやって楽しまない? と。

サビさん:ワビにそう言われて、僕もそうだね、と。で、1999年にワビサビ結成となるわけです。

 

カッコいいもののルーツは
日本の文化にあった

ワビとサビの出会いから、ワビサビ結成までをハイスピードでお届けしたところで、気になる名前の由来を聞きました。

「タイポグラフィの入門書を出版したエミール・ルーダー(1914-1970)を調べていくと、岡倉天心に影響を受けていることがわかったんですね。そこで、自分がカッコいいと思っているものは、日本の文化にルーツがあることを知るわけです」とワビさん。洋風ではない名前をあれこれ考えた末、腑に落ちたのがワビサビでした。

名前が決まったら、次はロゴマークの作成です。「もともと、盆栽の形が好きだった」サビさんが考案したのがこちら。
 

▲鉢の上に、カタカナ4文字が枝のように広がるロゴマーク (C)ワビサビ▲鉢の上に、カタカナ4文字が枝のように広がるロゴマーク (C)ワビサビ


原案は、1階のサビと2階のワビのつなぎの部分が一直線でした。それを見たワビさん、すぐに2階部分をちょっと右にズラそうとひらめきます。「ワビが言うように、ここをズラすことで枝振りを感じられるようになって、より盆栽ぽくなった。ぐっと良くなった」とサビさん。あ・うんの呼吸です。
 

▲「ここ、ここがポイント」と指す、ワビサビ。かなりアツく語っていました▲「ここ、ここがポイント」と指す、ワビサビ。かなりアツく語っていました


このロゴのように、「サビさんが原案を作り、ワビさんがスパイスを加え、フィニッシュする」のがワビサビスタイル。聞くところによると、これまで意見が違ったり、もめたりしたことは一度もないそうです。
 

▲結成から2年ほどたった頃。和テイストにジョークをミックスするあたり、達者です! (C)ワビサビ▲結成から2年ほどたった頃。和テイストにジョークをミックスするあたり、ツワモノです! (C)ワビサビ

 

ライフワークの「1年1盆栽」。
その広がりと進化

「1年1盆栽」。それはワビサビが結成時に掲げたテーマであり、いまとなってはライフワークです。

ワビサビが出会った会社は、先程の話にもあるようにパッケージデザインがメインでした。パッケージデザインにはカリグラフィ手法による飾り罫が多用されることから、二人もこのアイテムを駆使し、日夜研究していました。

「飾り罫はパッケージの商品名やタイトル、洋風の装飾のために使いますが、違う使い方はないかとずーっと考えていた」とサビさん。その想いが時を経て発酵し、ポコッと生まれたのが、「カリ・ボンサイ」です。
 

▲よく見ると、盆鉢には青山フラワーマーケットのロゴが。「『カリ・ボンサイ』を用いたポスターが完成した数日後、ワビが売り込んで帰ってきた」とサビさん 制作年:2003 (C)ワビサビ▲よく見ると、盆鉢には青山フラワーマーケットのロゴが。「『カリ・ボンサイ』を用いたポスターが完成した数日後、ワビが売り込んで帰ってきた」とサビさん 制作年:2003 (C)ワビサビ


「自分たちの個性を生かした技法を獲得した第1号」と語るワビさん。その言葉通り、この技法がワビサビのデザインワークを勢いづかせ、評判を高め、「エリック・クラプトン ジャパンツアー」やナイキなどの広告に採用されるまでになります。
 

▲北京オリンピックの開催に合わせて掲出された、ナイキのビルボード広告「スプリンター」 制作年:2008 (C)ワビサビ▲北京オリンピックの開催に合わせて掲出された、ナイキのビルボード広告「スプリンター」 制作年:2008 (C)ワビサビ


「1年1盆栽」は、自由にテーマを拡張。2006年のテーマは「アイヌ文様」で、そこから生まれた作品がこちら。サビさんいわく、「アイヌ文様は左右対称が原則ですが、非対称の盆栽フォルムでもそのカッコ良さを成立させられました」。
 

▲タイトルは「ANKES」で、ワビさんが命名。「夜明け」、「訴え」という意味があるそう 制作年:2006 (C)ワビサビ▲タイトルは「ANKES」で、ワビさんが命名。「夜明け」、「訴え」という意味があるそう 制作年:2006 (C)ワビサビ


回を重ねるごとに進化&深化したライフワークは、「エアボンサイ」というある種の突然変異の誕生に行きつきます。ビニール人形の技法で盆栽をつくるという、聞いたこともない大胆発想。それが、こちらです。
 

▲今年、中国・深セン市で開催された展覧会にも出品され、注目を集めたとか! 制作年:2015 (C)ワビサビ 撮影:カワジリ リョウイチ▲今年、中国・深セン市で開催された展覧会にも出品され、注目を集めたとか! 制作年:2015 (C)ワビサビ 撮影:カワジリ リョウイチ


「エアボンサイのイメージは前から長い間あったんですが、外に引っ張りだすきっかけになったのが、アート&デザインコンペ『東京ミッドタウンアワード』(2007)です。この回の課題が『日本の新しいおみやげ』だったので、これは打ってつけじゃないかと、勇んで企画書を提案しました」。

そう語るワビさんの予感は的中し、「エアボンサイ」はこのコンペで準グランプリを獲得。その後、プロトタイプの製作を経て、2015年に製品化。現在はニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめ、「GINZA6」など都内4ショップで販売されています。

 

Don't Think! Feel.
「考えろ」、「感じろ」

ひとつのカラーやストーリーに押し込むことができない、ワビサビの曼荼羅的世界。そのど真ん中にあるものは、なんなのか。

「もっといいものはないか。何か違う方法はないのか。そうした欲が僕らには持続しているんですよ」。ワビさんがさらっと残したこの言葉が、もしかしたら核心なのかもしれません。


▲「ワビサビ結成20周年展」2019年1月19日(土)~30日(水) 札幌市民交流プラザ1階SCARTSコートにて(C)ワビサビ 撮影:カワジリ リョウイチ ▲「ワビサビ結成20周年展」2019年1月19日(土)~30日(水) 札幌市民交流プラザ1階SCARTSコートにて(C)ワビサビ 撮影:カワジリ リョウイチ

ワビさんの好きな言葉は、Don't Think! Feel. 

「ごちゃごちゃ考えないで、感じろ」と訳す人もいれば、「まず考えろ」と受け止める人もいます。ワビサビはきっと、いつも「感じろ」と「考えろ」を行きつ戻りつしている。だから、ある日ポコンと、とんでもないものが立ち上がってくる。そんな気がします。 


▲ホルモン柄のフレームからのぞきこんだワビサビの仕事場▲ホルモン柄のフレームからのぞきこんだワビサビの仕事場


みんなが知っているのに、どうにもうまく説明できない、侘び寂びという世界。
ワビサビという存在もそれに似ていて、まだまだ、その正体をつかむことはできそうもありません。


▲ワビサビの仕事場に飾られているこの書は、サビさんのお母さんの作。JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)新人賞受賞(2005)のお祝いに、したためてくれたものだそうです▲ワビサビの仕事場に飾られているこの書は、サビさんのお母さんの作。JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)新人賞受賞(2005)のお祝いに、したためてくれたものだそうです

 

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