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公開 | 小西 由稀

大地を創る人。希望という花火を上げ、農村と都市をおいしく、楽しく結ぶ。鈴木秀利さん(三笠市)

大地を創る人。鈴木秀利さん 


(株)三笠すずき農園・農園主の鈴木秀利さんは、ユニークな生産者です。トラクターに乗りつつも、ある時は八百屋の社長、またある時は滞在型レストランのオーナー。さて、その実態は…。
食や農でつながる三足のわらじを履く鈴木さんを訪ね、三笠市に向かいました。

 

農家は継がずに八百屋になる
農や食の価値を真っ直ぐ届けたい

ガハハと豪快に笑う人懐っこい人柄の鈴木さんは、「社長」「オーナー」「農園主」という肩書きから想像する、いわゆるやり手の農業経営者のイメージとは少し異なります。「面白そう」と思う道を歩んできた先に三足のわらじがあった…という感覚が近いかもしれません。
 

大地を創る人。鈴木秀利さん
 

三笠市萱野地区の農家の息子に生まれ育った鈴木さん。“農家の長男あるある”で、「農業を継ぐという価値観はまったくなかった」と、高校卒業後は農業資材を扱う会社に入社しました。
仕事で生産者を訪ねる中、売り先のない有機栽培の野菜と出会います。
 
「野菜なら自分でも売れるかも」と、24歳で思い切って脱サラ。岩見沢市で地場の野菜を直接販売する八百屋を始めます。
その翌年、あるご縁から札幌に商売の拠点を移し、有機栽培野菜や自然食品を扱う『有機やさいアンの店』をオープンしました。

 
有機やさいアンの店▲このイラストに描かれているのが、故・植木幹子さんと鈴木さん。パワフルな植木さんと出会い、一緒にアンの店を開く。植木さんが若くして亡くなり、鈴木さんが代表に就任

 
まだインターネットがなかった時代、有機農産物をつくり販路を探す生産者も、買い求めたい消費者も、双方をつなぎたいアンの店もクチコミが命。
有機農産物のマルシェをはじめ、積極的にイベントに参加するなどして、取り引きする生産者と顧客を少しずつ増やしてきました。
 

有機やさいアンの店▲さまざまな商品が所狭しと並ぶ店内。北海道の素材を生かした「パティスリー・アパレイユ」のお菓子も
 

アンの店では「野菜ができる過程を知ってもらいたい」と、農と食を結ぶ体験型のイベントを多数開催。
田植えや草取り、収穫体験、味噌づくりや料理教室など、消費者が産地へ出かけ、生産者と交流を持ちながら農の背景を知る。今でいう“共生産者”の考え方※をいち早く共有してきました。
 
※食べる人も食や農の背景を知り、生産者を積極的に応援し、共に支え合う関係性を指す。
 
「面白いことに、こういう活動を続けていると、消費者と生産者はだんだん親戚づきあいっぽい感じになるんですよね」。互いを思い遣る、これぞ共生産者の理想形。
 

鈴木秀利さん▲アンの店ではもっぱら事務仕事を
 

「シールやマークで買うのではなく、大きな資本力や情報に惑わされるのではなく、そのもの自体の価値を自分で判断して選んでほしいと思っているんです」。
 
楽しく、おいしく、生産者から消費者へ正直に食を届けたい。店の内外で種まきを続けてきたアンの店は、2019年7月で開店30周年を迎えました。

 

畑の中のレストランを通して
地域に元気を届けたい

鈴木さんに大きな転機が訪れたのは13年前。父親が倒れ、鈴木さんがすずき農園を支えることに。これまで田植えや稲刈りなど繁忙期に手伝いはしていたものの、自身が主体となるのは初めての経験。
 
朝は畑仕事、午後は札幌で八百屋…というサイクルに慣れてくると、若い頃には感じなかった「農村っていいよな」「田舎暮らしだって楽しいじゃん」という思いが自然と湧いてきたといいます。


すずき農園の野菜▲アンの店ではすずき農園の野菜も販売している
 

「実は農業はいつでもやめられると思って始めました。でも、せっかく畑があるのだから、もっと自由にいろんな交流ができるんじゃないか。農村をもっと身近に感じてもらえるんじゃないか。それなら、やりたいことをやっちゃおう!と」。
 
夏には畑の真ん中にテントを張って、一日限りのレストランを開いたり、そばをまき、手打ちそばを打ったりと、アンの店でも行っていた体験型イベントをさらに拡大。
 
そんな風に地元・三笠で過ごす時間が長くなるほど、鈴木さんには気がかりなことが…。
それは地域に元気がないこと。人口減少に高齢化。日本中の農村が抱えている問題ですが、定住人口を増やすことは難しくても、もしかしたら交流人口なら増やすことができるかもしれない。
 

鈴木秀利さん

 
「人が行き来することで、地域のプラスになるのではないか。食を生産する農村としてだけではなく、田舎の時間ごと楽しめて、心の拠り処にもなるのではないか」。
 
そう考えた鈴木さんは仲間たちとリンゴの木を植え、2019年春には宿泊施設を持つレストラン「EKARA」をオープンさせました。
 

ekara▲「EKARA」は「~で~をつくる」「~で~をする」という意味のアイヌ語に由来
 

「これが花火になって、この地域に人が来てくれればいいなぁって。特別なサービスはないけれど、畑の中のレストランに人が集まって、ニコニコとおいしいものを食べて、農村に癒されて、なごんで。ここで過ごす時間ごと一緒に楽しんでもらえれば嬉しいですね」と、笑顔を見せます。


鈴木秀利さん▲鈴木さんと仲間が植えたリンゴの木。かつてこの地域にはリンゴの畑があったという。数年後にリンゴが実ったら、シードルをつくるという楽しい計画も
 

「農家、八百屋、滞在型レストランのオーナーというのは、食でつながっているので、自分の中では仕事の区別は全然ないんですよ。どれかに絞ることも考えていない。種まきから販売、加工までできるのは面白いし、やらせてもらえるのはありがたいことですよね」。
 
鈴木さんと仲間たちが打ち上げた小さな花火が、トライアル・アンド・エラーの先にどんな大輪の花を咲かせるのか。地域と都市、ひとをつなぎながら、地域の価値をどう伝えていくのか。
 
「もうね、自分らしく泥臭くがんばりますよ。地域の資源とくっつけながら、自然体で楽しくいきたいですね」。

 

関連リンク

アンの店 
EKARA  

「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。
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小西 由稀

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