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公開 | 佐々木葉子

情熱の仕事人。障がいがあっても、着やすいドレスをデザイン。スタイリスト「石切山祥子」

▲情熱の仕事人。障がいがあっても着やすいドレスをデザイン。スタイリスト「石切山祥子」


石切山祥子さんは、道内きってのベテランスタイリスト。広告写真のコーディネートからテレビ番組の出演者の衣装提案まで、多様な分野のスタイリングを手掛けています。

ほしいものは、既製品でほとんど調達できる時代。でも、石切山さんは、ないものがあることに気づきました。障がいを持った人が着やすいドレスです。

私にできることはないか。そんな気持ちに引っ張られ、試行錯誤を繰り返した末、この春、ユニバーサルドレスブランド「Campanella(カンパネルラ)」を立ち上げました。

石切山さんが、美しいドレスに託した想いと忍ばせた工夫を、たっぷりご紹介します。

 

装いを楽しみたい気持ちは
みんな変わらない

それは約10年前のこと。石切山さんは、札幌市内の福祉施設で、入所者に着物を着てもらうイベントに、ボランティアで参加しました。

そこで目にしたシーンが、「Campanella」の“タネ”になりました。

「脊髄を傷めて動けないでいる女性が、着物を見たら、着物に向かってからだを動かそうとしたんです。障がいを持っていても、装いを楽しみたい気持ちはみんな変わらない。そのことに気付かされました」。

 
▲「福祉施設のイベントには、二部式の着物や帯を自分なりにリメイクして持参しました。これが、私がつくった、障がいを持った人も着やすい装いの第一号です」▲「福祉施設のイベントには、二部式の着物や帯を自分なりにリメイクして持参しました。これが、私がつくった、障がいを持った人も着やすい装いの第一号です」


障がいを持った人が着ている洋服を注意深く見てみると、予想通り、その多くは機能的ではあるけれど、おしゃれ感は物足りないものでした。そこで石切山さんは、既製のカジュアルウェアのリメイクも始めるようになります。

「袖は、腕を通しやすいドルマンスリーブにしたり、車椅子を操作しやすいように短くしたり。車椅子に座っている時は、おなかまわりに生地がたまりやすいので着丈は短く。目が行きやすい靴や靴下は、洋服に合うかわいいものを探しました(笑)」。

 
▲石切山祥子さん:室蘭市生まれ、札幌市在住。札幌大学外国語学部ロシア語学科卒業後、大手建設会社に入社。受付とお茶出しの日々に飽き足らず、趣味のカメラをきちんと学ぼうと、夜間の学校に通ったことをきっかけに、スタイリストの道へ。近年は、キャリアを生かした講演やイベントの出演も多い。「スプートニク」代表▲石切山祥子さん:室蘭市生まれ、札幌市在住。札幌大学外国語学部ロシア語学科卒業後、大手建設会社に入社。受付とお茶出しの日々に飽き足らず、趣味のカメラをきちんと学ぼうと、夜間の学校に通ったことをきっかけに、スタイリストの道へ。近年は、キャリアを生かした講演やイベントの出演も多い。「スプートニク」代表


一人で始めた活動はクチコミで広がり、リメイクした洋服のファッションショーをやってみないかと、誘いを受けるようになりました。

「ショーにモデル役で登場した障がいを持った女の子たちは、みんなとても喜んでくれました」と石切山さん。彼女たちとの接点が増えるにつれ、打ち明け話を耳にするようにもなりました。

 

ムリとあきらめなくていい
ドレスをつくればいい

「ドレスなんてムリ。周りの人に手伝ってもらわないと着られない、迷惑かける」。
「ドレスは背中にボタンがあるからダメ。裾を車椅子に巻き込みそうで怖い」。

そんな話を聞いた石切山さんは、心を痛めました。「みんな、はじめからドレスをあきらめているのが、とても悲しくて。そうじゃない、気楽に着られるドレスがあれば…と思ったんです」。

どうにかしたい!という気持ちから、石切山さんのドレスづくりがスタート。これまでに10着以上をデザインしました。それらが、「Campanella」のコレクションです。

たとえば、これはウエディングドレス。レースやチュールをたっぷり使い、華やかで優雅な一着に仕上がっています。


 Campanellaウェディングドレス


どのような作りになっているのかを、石切山さんに説明してもらいましょう。

「このドレスは、一枚ものではなく、二枚に分かれています。ブラウスは背中で留めるのではなく、コルセットのように紐を交差させて絞り、両脇で留めます。こうすると、車椅子に座っていても、ウエスト部分がすっきりします」。なるほど!

 
「Campanella」ドレスアップ


「スカートは巻きスカートの形状です。車椅子にスカートを開いて置き、その上に新婦が座ったら、スカートをくるっと巻いて、横のホックで留めます。ボリュームが出過ぎないように、スカートの後ろはフラットなシルエットにしています」。

 
▲ドレスは、障がいを持った人に試着してもらい、調整を繰り返しながらつくります。まさに二人三脚です▲ドレスは、障がいを持った人に試着してもらい、調整を繰り返しながらつくります。まさに二人三脚です

 

障がいがあると、ファッションを楽しめない
それって本当?

2019年5月6日(月・振替休日)、「Campanella」のウエディングドレスのファッションーが行われました。あえて余計な説明は付けません。その様子を写した一枚一枚をご覧ください。


 「Campanella」のウェディングドレスのファッションー1


「Campanella」のウェディングドレスのファッションー2


「Campanella」のウェディングドレスのファッションー3


ドレスも素敵ですが、モデルのみなさんの表情もとても明るくて、輝いていますよね。「たくさんの人が、その人らしいスタイルのウエディングを実現できたら。そう願っています」と石切山さん。このショーは、その大きな一歩です。

 
▲この日は重度障害児、難病の子どもモデルによる「Tenbo」のショーも同時に行われました▲この日は重度障害児、難病の子どもモデルによる「Tenbo」のショーも同時に行われました


▲ショーの前段にはパネルディスカッションがあり、石切山さんもパネリストとして参加(左から2番目)。モニタに映し出されている「障がいがあるとファッションが楽しめないって本当?」は、石切山さんの思いでもあるのでしょう。(札幌文化芸術交流センター1階 SCARTSコートにて)▲ショーの前段にはパネルディスカッションがあり、石切山さんもパネリストとして参加(左から2番目)。モニタに映し出されている「障がいがあるとファッションが楽しめないって本当?」は、石切山さんの思いでもあるのでしょう。(札幌文化芸術交流センター1階 SCARTSコートにて)

 

同行者として、
カンパネルラのように

「衣装のリメイクやドレスの縫製は、理解のある友人、知人が手伝ってくれています」と石切山さん。着物、カジュアルウェア、ウエディングドレスに続き、こんなカラードレスも作りました。

 
▲ドレッシーでゴージャスなデザイン。前から見るとボリュームたっぷりですが、車椅子の使用を妨げないよう、後ろはスッキリと仕立てています▲ドレッシーでゴージャスなデザイン。前から見るとボリュームたっぷりですが、車椅子の使用を妨げないよう、後ろはスッキリと仕立てています


「Campanella」のドレスは、サイズ調整が可能で、家族や友人など誰でも着せられる仕組みが特徴。靴とセットのレンタルを行っていて、遠方の方には郵送しているそうです。
 

▲靴は、不意に脱げたりしないように、既製品にベルトを付けています▲靴は、不意に脱げたりしないように、既製品にベルトを付けています

 
▲アトリエ兼事務所のクローゼットには、ドレス、靴、帽子、ブーケなどがぎっしり▲アトリエ兼事務所のクローゼットには、ドレス、靴、帽子、ブーケなどがぎっしり


「ドレスが素敵になったなら、車椅子も素敵にしたいということで、メーカーさんと華やかな車椅子の製作も進めています。おそらく年内には完成すると思います」。ワクワクする提案が、次々カタチになっていきそうです。

障がいを持った人のことを、挑戦するチャンスや資格を与えられた人という意味で「チャレンジド」と呼ぼうという流れがあります。石切山さんは、どう感じているのでしょう。
 

情熱の仕事人。障がいがあっても着やすいドレスをデザイン。スタイリスト「石切山祥子」


「立って動くのが苦手、だから、車椅子を使う。そういうことだと思うんです。手を動かすのが苦手な人でも、数多くの種類の中には、自分で留められる“得意なボタン”もある。そうした、できることを増やしていこう、それを応援しようという気持ちです」。


情熱の仕事人。障がいがあっても着やすいドレスをデザイン。スタイリスト「石切山祥子」


石切山さんのオフィスの名前・スプートニクは、ロシア語で「付随するもの」、「同行者」。ブランド名のカンパネルラは、宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』で孤独な少年ジョバンニと一緒に旅する友人の名前。

誰かと一緒に、何かをしたい。誰かのために、何かをしたい。

そうした情熱が、相手の目をまっすぐみつめて話す石切山さんの瞳を、キラキラと輝せているのでしょう。

 

関連リンク

Campanellaインスタグラム
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