北海道情報サイト「北海道ライカーズ」北海道情報サイト「北海道ライカーズ」

what likers

Icon search探す

公開 | 小西 由稀

情熱の仕事人。第二の人生は食を通して社会活動を。日本ガストロノミー協会理事 「相内泰和」

情熱の仕事人、日本ガストロノミー協会理事の相内泰和さん


エプロン姿で微笑むこちらの男性が、相内泰和さん。
外資系金融機関に36年間勤めた後、食の世界へ転身。しかも、60歳で調理師学校に通い、調理師免許まで取得!

「第二の人生は、食を通して社会の役に立ちたい。その活動を北海道から始めていきたい」。そう語る相内さんに、食と北海道の可能性についてお話をうかがいました。

 

定年後、調理師免許を取得。
きっかけは東日本大震災。 

札幌出身の相内さん。高校時代にアメリカ留学でホームステイを経験し、大学4年間もアメリカで過ごしました。その後はJ.P.モルガンに勤め、バンクオブアメリカグループやドイツ銀行では在日代表などを歴任しました。


日本ガストロノミー協会理事の相内泰和さん▲相内泰和さん:1952年生まれ。デニソン大学(アメリカ・オハイオ州)政治学部卒業、国際基督教大学 行政学大学院卒業。J.P. モルガン、バンクオブアメリカグループ、ドイツ銀行と外資系金融機関で重責を担い、2014年に退職。現在、株式会社GFC Tokyo代表取締役


「子どもの頃から母の手伝いが好きで、よく一緒に料理をしていました」と相内さん。
留学先でも、銀行員時代にもその腕前を披露し、好評だったと話します。

いくら料理好きとはいえ、金融の世界とはまったく異なる食の世界。しかも、定年後に飛び込もうと思ったのはなぜなのでしょう。


日本ガストロノミー協会理事の相内泰和さん


「東日本大震災でのボランティア活動がきっかけでした」。

当時、相内さんが在日代表を務めていたドイツ銀行をはじめ、複数の外資系企業の有志で被災地の小学校に出向き、ハンバーグや焼きそばをつくってふるまい、屋外遊具を進呈・設置するなど、子どもたちや保護者、教師と楽しい時間を過ごしたそうです。


日本ガストロノミー協会理事の相内泰和さん、東日本大震災のボランティアの様子▲大きな転機となったボランティア活動。約500名分の食材を持ち込み、デザートまで用意したという。写真提供/相内さん


「その時のみなさんの嬉しそうな笑顔が忘れられなくて。第二の人生はこれだな!と思った訳です」。

人の喜びのために、食を通じて何かをしたい。そのためにも調理師の資格があると便利ではないかと思い立ち、60歳で「服部栄養専門学校」調理師本科に入学。翌年に調理師免許を取得しました。


日本ガストロノミー協会理事の相内さん▲服部栄養専門学校の卒業作品「味と美(みとび) 洋と和の融合」では、故郷・北海道をテーマに道産食材をふんだんに使用。優秀賞を受賞した。写真提供/相内さん

 

これまでのキャリアと食の融合。
和食の魅力を世界に発信。 

調理師免許を取得した相内さんは、2015年に「株式会社GFC Tokyo」を設立。社名は、世界(Global)と食(Food)の交差点(Crossing)という意味。食と健康をテーマに、食文化交流と料理教室を事業の柱に据えています。


日本ガストロノミー協会理事の相内さん▲調理中にカメラを向けられ、このポーズ。右は相内さんがつくった料理。写真提供/相内さん


特に力を入れているのは、ユネスコ無形文化遺産に登録後、ますます関心が高まる和食の魅力を世界に発信すること。外国人に英語で和食を教えたり、外資系ビジネスマンを対象とした夕食会を開いたりと、これまでのキャリアを生かした活動を行ってきました。


日本ガストロノミー協会理事の相内さん▲外国人を交えたイベント、外国人向けの料理教室の様子。写真提供/相内さん


それが縁となり、食文化の楽しみを体現する場を提供する「日本ガストロノミー協会」の理事に就任しました。

「つくる楽しさ、おいしい食材を探す楽しさ、若い料理人を応援する楽しさなど、食べ歩きだけではない幅広い食の魅力を、さまざまな活動を通して共有し、メッセージしています」。


日本ガストロノミー協会▲日本ガストロノミー協会は、世界一の美食都市といわれるスペイン・サンセバスチャンに古くからある「美食倶楽部」がモデル。食で人生を豊かに!写真提供/相内さん


同協会では、日本人と外国人が共に料理をつくり、食べて語らう「英語でワイワイ」という事業を相内さんが中心となり、運営。異国文化交流のハブとなることを目指しています。

 

食べることは共感の近道。
食の社会活動を北海道から種まき。

次に日本ガストロノミー協会として、相内さんが取り組もうとしているのが、「ソーシャル・ガストロノミー・ムーブメント」です。

「食の社会活動とも訳され、社会の不平等、貧困、食育、フードロスなど、食を通して社会問題に取り組むこの運動は、世界的な広がりを見せています」。


日本ガストロノミー協会の相内さん▲現在は東京と札幌を行き来する生活をしている


例えば、イタリア人シェフが始めた貧困層のための無料レストラン「レフェットリオ(Refettorio)」は、イタリア、ブラジル、イギリス、フランスで展開されています。

パリでは教会の地下に本格的なレストランを運営。公園などで行われる炊き出しとは印象が異なり、きちんとテーブルセッティングがされ、料理人もサービスもボランティアで行われています。

「利用者とボランティアが対等の立場であり、互いのことを考え、学ぶ機会になると、この活動の協力者がどんどん増えています。

年齢や性別、社会的地位に関係なく、おいしいものの前ではみんな笑顔になる。食を通して、ひとつになることができるし、世の中をより良く変えることもできるのではないか。食は共感の近道になると思うんです」。


相内泰和さん


フードロスもソーシャル・ガストロノミー・ムーブメントの大切な要素。リオ五輪では選手村で使わなかった食材を生かし、同様の活動が行われたといいます。

日本では「こども食堂」の動きなどが、その一環といえるのかもしれません。

「単発のイベントではなく、社会問題に対して恒常的に取り組んでいくため、ソーシャル・ガストロノミー・ムーブメントの考え方を広め、種をまいていきたい。それを北海道から始めたいのです。『SGM北海道』と名付けましょうか」。

“おいしい”のその先にある、食の可能性を信じたい。豊かな生産地である北海道から始めることに意義がある。相内さんはそう語ります。

SGM北海道に向け、どんなことができるのか、どんなことが求められているのか、どんな可能性があるのか、相内さんは有志と一緒にこの夏から少しずつ動き始めるといいます。


日本ガストロノミー協会の相内さん


「これだけの自然があり、環境が良く、食もおいしい。海外生活が長く、世界中を見て来た私から見ても、こんなに恵まれているところはなかなかない。北海道に大きなポテンシャルを感じています。

そのポテンシャルを形にして、前に進めて広げていきたい。がんばっている若い人も多いので、その応援もしたいと思っています」。
この記事をSNSでシェアしよう!
  • 情熱の仕事人。第二の人生は食を通して社会活動を。日本ガストロノミー協会理事 「相内泰和」

F3ea6fa5 2971 4d12 8e62 077dc40dce4f

Writer

小西 由稀

Title
Close