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公開 | チバタカコ

札幌発、犬用車いす「ONE OFF PRO」

犬用車いすワンオフプロ

 
愛犬が椎間板ヘルニアになり、立てなくなったことがきっかけで犬用車いすの開発・製造をはじめた「ONE OFF PRO」。試作品67台の末生まれた犬用車いすには、愛犬だけではなく飼い主への想いも込められていました。

 

目次

・オリジナリティのある一品ものをつくる「ONE OFF PRO」
・愛犬のヘルニアが犬用車いす開発のきっかけ
・犬用車いすの特徴
・リハビリ用立位補助器具、義足、そしてAIを取り込んだ車いすも


 

オリジナリティのある一品ものをつくる
「ONE OFF PRO」

札幌市東区の住宅街に、小さな工房があります。

 
札幌市東区にある「ONE OFF PRO」外観▲札幌市東区にある「ONE OFF PRO」
 

札幌市東区にある「ONE OFF PRO」看板

 
店の正面には、タイヤが二つついた椅子のようなものが数台陳列されていました。
 

札幌市東区にある「ONE OFF PRO」の正面▲出入口にタイヤのついた乗り物?が…

 
札幌市東区にある「ONE OFF PRO」の試乗車いす▲犬のぬいぐるみがセットされている…これは?
 

ここは、障害を持った犬用の車いすや介護用品を開発・製造している「ONE OFF PRO」(ワンオフプロ)。
 
「ONE OFF PRO」とは、一人のお客さんに対し、その人だけのためにオリジナリティのある一品ものをつくるという意味が込められているそう。
 
「ONE OFF PRO」代表の高木浩行さんに、犬用車いすについて、お話を聞いてきました。
 
 

愛犬のヘルニアが犬用車いす開発のきっかけ

高木さんの仕事は、実験用機械や食品オートメーション機械、車の装飾などを企画・設計・開発・製作する製造業。

 
有限会社ONE OFF PRO代表取締役、高木浩行さん▲有限会社ONE OFF PRO代表取締役、高木浩行さん
 

高木さんの実家は「高木機械」という製造工場で、子どもの頃から「ものをつくる」という環境にはいましたが、家業を継ぐつもりは全くなく、進学先も商業系。卒業後、いったん販売業に就職しましたが、その後辞めて家業の手伝いをしていました。
 

ONE OFF PROの工房内▲ONE OFF PROの工房内。さまざまな機材があり、何でもつくれそう
 

やがて、代表権が父から高木さんに譲られたことで、「高木機械」の看板を下ろし、お客さん一人ひとりのオーダーに応えてものをつくる「ONE OFF PRO」を立ち上げました。
 
その頃、飼っていた愛犬、フレンチブルドッグのリュウが2歳という若さなのに椎間板ヘルニアになり立てなくなりました。
 

今は亡き愛犬のリュウ▲今は亡き愛犬のリュウ

 
獣医には、手術はできるが治るかどうかはわからないと言われ、愛犬のために何かできることは…と考えていた時に、犬用車いすをつくることを思いつきます。
 
元々手先が器用で、機械に限らず、革や布の縫製、イラスト描き、デザイン、アクセサリーづくりなど、なんでも一人でこなしていたことから、特技を活かして本格的に犬用車いすの製造を始めました。

 
犬用車いすの設計図
 

しかし、苦難の道はそこから始まりました。
 
「犬の後ろ脚をカバーする車いす」と単純に考えていたところ、全くそうではなく、何よりも肝心のリュウが車いすに乗って歩いてくれません。
 

リュウが実際に使っていた車いす▲リュウが実際に使っていた車いす。「ONE OFF PRO」の初号機、すべてはここから始まりました。タイヤはローラーブレードのものを使っています

 
試作品をつくっては、そこにリュウを乗せるのですが、乗るだけで一歩も動かずじーっとしているだけ。
 
体のどこかに当たって痛むのか、窮屈なのか、高さや幅が合わないのか、重いのか等々、本業を忘れるくらいに没頭し、1年半~2年で試作を繰り返すこと67回。
 
そしてついに、67台目にして、初めてリュウが車いすで歩いてくれました。
 

車いすの特徴について説明してくれる高木さん▲車いすの特徴について説明してくれる高木さん。細部に至るまでリュウへの愛がぎゅっと詰まった車いすでした

 
今から12年ほど前のことです。
 
「自分と同じように歩けなくなった愛犬のために車いすを欲しがっている飼い主がたくさんいるのではないだろうか」と、これをきっかけに仲間数人で別会社を立ち上げ、セールスを開始します。
 
案の定、オーダーはどんどん舞い込んでくるのですが、人件費や必要経費など、きちんと利益を出さないとこれ以上営業ができないと考えて、また一人に戻ります。
 

車いすの説明をする高木さん
 

その後、高木さんのこの取り組みが新聞やテレビで何度も取り上げられ、それを見たという飼い主さんから問い合わせが殺到したそうです。
 
しかし、高木さんがつくる犬用車いすは、完全オーダー制で一つとして同じものはありません。丁寧に一匹ずつ合わせてつくっているものなので、「道新とかNHKとか、マスコミに出まくったのでお客さんに逆に迷惑をかけることになってしまった」と高木さん。
 
今は、2年ほど前にリニューアルした犬用車いすの基本形を、犬の大きさに合わせて何台か用意しています。まずはそれを試乗してもらって、どのパターンが一番飼い犬にフィットするかを確認してから製造を開始しています。
 
「飼い主さんとは、時間をかけて面談して、飼い犬にとって何が一番良いのかを探り出し、試乗してもらってから、実際につくるのかどうかを決めてもらっています」(高木さん)。
 
 

「ONE OFF PRO」の犬用車いすの特徴

「ONE OFF PRO」に相談に来る犬種の多くは、胴が長く、腰に負担がかかるダックスフンドとコーギーだそうです。
 
車いすに使っている素材は、どこにでもある鉄やデニム生地ですが、設計やデザインはすべて高木さんオリジナル。
 

犬用車いすのパーツの一部▲細かなパーツをいくつも組み合わせてつくっています。「精密機械と同じですよ」と高木さん


犬用車いすのタイヤはラジコンタイヤ
 

犬用車いすのタイヤ▲タイヤはラジコンタイヤを使用。「タイヤとホイルは、いろいろな種類があるので、好きなのを選べますよ」
 

犬種や症状、犬の体形・体重などに合わせて強度や仕様などを計算します。
 
「同じ犬種でも、関節や股関節の位置や角度など、それぞれ骨格が違う。一つひとつ合わせていくと、もう工学だけでは間に合わないんですよ」。
 
そこで高木さんは、独学で動物学=犬について学んだと言います。
 
「イギリスが、こういう犬の介護などの先進国なので、ネットで調べて、英訳ソフトを使って翻訳して、どうしてこのカタチなのか、なぜこうなるのかなど、調べて勉強しました」。
 

ダックスフンド用に開発された犬用車いす▲ダックスフンド用に開発された犬用車いす。体を乗せる部分が、少し長くなっています
 

犬用ではありますが、その実情はひとの車いすとなんら変わりないそうです。

 

しんみりしないで、逆に見せびらかすくらいの明るさで

一緒に暮らす愛犬は、家族同然。その愛犬に障害があると、家族みんなが心配し、心を痛め、「かわいそう…」としんみりしがちです。そして、歩けないことで外にも出なくなり、ひとも犬もふさぎこんでしまうことにも…。
 
しかし、犬用車いすがあることで、室内で自由に行き来することができ、また外に散歩に出かけることもできるようになります。
 

ワンオフプロの高木さん▲「デザインも塗装もすべてオーダー通りにつくりますよ」
 

高木さんは言います。
 
「犬のことを一番に考えて、どうすれば、何をすれば犬にとっていいのかを考えてつくっています。同時に、飼い主さんも、車いすがあることでまた愛犬と一緒に散歩もできるので、気持ちを明るくすることができます」。
 
「だから、車いすだからと言ってしんみりするのではなく、逆に、『うちの子の車いすかっこいいでしょ!』と見せびらかすくらいの気持ちになってほしい。私も、そういう気持ちで製作しています」。
 
飼い主さんの中には、基本形を好みでカスタマイズして、「ガンダム風にデザインして」とか「もっと明るい色で」など、車いすづくりを一緒に楽しむケースもあるそうです。
 

犬用車いすのタイヤ、キャタピラバージョン▲タイヤだけではなく、キャタピラをつかったものもあります。「体力のある元気な犬なら、これくらいの遊び心があってもいい」と高木さん
 

犬用車いすのタイヤ、冬バージョン▲ここは北海道なので、冬道用にソリにしたものもありました


犬用車いすの実例▲実際に車いすを使用したみことちゃん(左)とムースちゃん
※写真提供:ワンオフプロ

 

リハビリ用立位補助器具、義足、
そしてAIを取り込んだ車いすも

犬用車いすが主なものですが、もちろん、猫でも応用できます。が、高木さんによると「猫は、嫌がって車いすに乗らない」とのこと。
 
しかし、全身まひで動けない猫や寝たきりになっている犬などのために、立位補助器具を開発し、実際リハビリなどで使用されているそうです。
 
「犬や猫のように四本脚で立つ動物は、寝たきりだと内蔵にダメージが出ます。なので、短い時間でもいいから、四本脚で立たせることが大事。そのための補助器具をつくっています」。
 

ワンオフプロの立位補助器具▲立位補助器具
 

ワンオフプロの犬用義足▲小型犬の義足
 

そして、今後の目標として、犬用車いすのAI化を研究中だとか。
 
「iPhoneを活用することで、Siriの命令で動いたり、歩き疲れた犬のアシストができたりする車いす。これからはいろいろなところでAIが導入される時代なので、こんな車いすの試作品を考えているところです」。
 
さらに、動物の介護や介助のための総合商社のようなものを目指したいと、高木さんは語ってくれました。
 
「愛犬リュウをもう一度歩かせたい」という思いから始まった「ONE OFF PRO」の取り組みは、日々チャレンジを繰り返しながら、これからも続いていきます。

 

関連リンク

有限会社ONE OFF PRO(ワンオフプロ)
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