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公開 | 木村健太郎

2019年度ばんえい競馬が開幕!~ばん馬最高峰レース「ばんえい記念」への道

世界で唯一、北海道にしか存在しない「ばんえい競馬」の2019年度開催が4月27日から帯広市の帯広競馬場で開幕します!2020年3月24日までの26開催151日間というロングラン開催。

1年を通して様々なトピックがありますが、今回は、ばんえい最高峰のレースであり、馬主、調教師、騎手、生産者など、すべてのばんえい関係者が目指す「ばんえい記念」の様子を中心にタップリ取り上げていきます!


▲2018年度ばんえい記念を制したセンゴクエースの口取り写真
 


目次

「ばんえい競馬」と「ばんえい記念」
馬の力と騎手の駆け引きが醍醐味の第2障害
新馬戦から始まるばんえい記念への道のり
今年度開催の注目馬
競馬場で観てみよう!


 

「ばんえい競馬」と「ばんえい記念」

 ばんえい競馬とは、サラブレッドの2倍以上の大型馬が、最大1トンの重りを載せたソリを曳(ひ)いて、200mのコースにある大小2つの障害を越え、勝ち負けを競うレースです。
 
サラブレッドの2倍以上もある「輓馬(ばんば)」が懸命にソリを曳く姿はド迫力!
 
北海道開拓には当初、北海道和種「ドサンコ」が重用されましたが、明治後期に大型でパワーのあるフランスのペルシュロン種が十勝地方に輸入されます。その他にブルトン種(フランス・ブルターニュ地方種)なども輸入され、開拓や農耕馬として大活躍しました。
 
各開拓部落で自慢の馬をお祭りで力自慢を競わせた「草ばん馬」が発展したのがばんえい競馬です。草ばん馬は東北地方(青森県が盛ん)でも行われていますが、騎手がソリに乗って曳かせる形は北海道独特のものとか。

現在でも草ばん馬は北斗市や森町、共和町など道南地方を中心に行われていて、おひざ元の十勝地方では鹿追町が有名です。


▲1トンを超えるばん馬が障害を登る競走は迫力満点!

 
戦後復興策として昭和22(1947)年にばんえい競馬が開催され、同28(1953)年に「市営ばんえい競馬」が発足し、帯広市、岩見沢市、旭川市、北見市の4場で開催されます。

レース形態は試行錯誤の末、2つの障害を越える現在のコースとなったのは昭和49(1974)年からです。
 
昭和40~50年代は未曽有のばんえいブームとなりましたが、バブル崩壊により売り上げが激減。平成18(2006)年度開催を最後に帯広市以外の3市が運営から撤退。廃止の危機を迎えましたが、翌19(2007)年、民間会社の支援を受け「ばんえい十勝」として新たな歴史を踏み出したのです。
 
「ばんえい記念」は昭和43(1968)年に創設された重賞競走で、すべてのばんえい競馬関係者にとっても特別なレースです。1着賞金は1000万円(通常の重賞は最大200万円)、全重賞レースでも唯一1トンという凄まじい重量を乗せたソリを曳くレースは人馬ともに死力を尽くしたレースになります。
 
通常のばんえい競馬のレースタイムは馬場状態にも左右されますが、通常競争は1分半から2分台が多く、ばんえい記念は速くて3分半、通常は4分台のレースになるので、その過酷さが分かるでしょう。このレースを制した馬が、ばんえい最強馬、そして力自慢「世界最強馬」の栄誉を得るのです!
 
「ばんえい記念は馬の力と騎手の駆け引きが最も出るレースです。ほかのレースとは全然雰囲気が違う。そこに向けて皆、やってきていますし、乗せてもらえるだけで光栄です」と西謙一騎手会長は語ります。


▲ばんえい記念でカンシャノココロに騎乗した西騎手。結果7着でしたが乗れるだけで名誉なレースなのです


このレースのものすごさは、実際に現場で観た方しか分からない、心の底から湧きあがる感動があります。涙もろい方なら、おそらく涙を流すでしょう。筆者もその一人です。
 
年度最終開催期間に行われるこの大レースは全国のばんえいファンも帯広競馬場に集い、お祭りムードになります。
 
筆者は今年3月24日に行われた2018年度最終開催の「第51回ばんえい記念」を取材しましたが、昨年度を上回る6500人余りの観客が訪れていました!


▲馬と一緒に移動しながら応援できるのも「ばんえい競馬」の魅力です。声援も馬と騎手にダイレクトに届きます


ばんえい記念は、レース前に観客に馬見せをするパドックから緊張感あふれるムードが漂います。

馬にも鬣(たてがみ)にリボンや飾りでコーディネートされ、ピカピカの馬体を披露しています。
馬も誇らしげに歩いているように見えます。


▲パドックのフジダイビクトリー号。鬣や馬具はピンク色に統一され華やかです。馬にとっても晴れ舞台


そして本馬場入場。
観客も柵にかじりついて馬達を見守ります。

引退レースとなるフジダイビクトリーには多くのカメラと声援が向けられていました(もちろんフラッシュは禁止ですよ!)。

馬も自分の仕事が分かっていて、普段はボーっとしているような馬も、本馬場入場やゲートに入る瞬間にスイッチが入るのだそうです。


▲本馬場入場でもファンから声援が送られます。鍛え上げられたお尻も筋骨隆々で彫刻のよう


レースは、高さ1mの第1障害を一気に乗り越え、第2障害にむかう直線から騎手の駆け引きが始まります。

特に、ばんえい記念は1トンのソリを曳くため、第2障害までは平地でも何度も馬を止め、馬の息を入れます。
この「止める」作業がばんえい競馬の醍醐味です。


▲第1障害は大体の馬が一気に乗り越えます(ばんえい記念以外の競走から)


騎手は平地競馬と違い、直接馬に触ってはいけません。馬から離れているソリに乗っているため、長手綱1本と声で馬に意志を伝えなければなりません。
 
ちなみに、騎手が手綱で馬のお尻を叩き、気合を入れる通称「鞭打ち(べんうち)」が、気の毒だと批判されることもあります。
しかし、平常時と鞭打ち時の心拍数を実際に測る実験を行い、心拍数がそれほど変わらないことがわかりました。
 
ばん馬は皮膚も厚く、痛みを感じるというより合図と受け取っているのですね。
馬は繊細な生き物。自分にとって嫌なことは絶対に拒否するといいます。

毎週末ごとの競走は自分たちの仕事として捉えているようです。


▲騎手は手綱で鞭打ちを行いますが、ばんばにとっては蚊に刺されたようなものなのでしょう

 

馬の力と騎手の駆け引きが醍醐味の第2障害

 観客も1.6mの第2障害までたどり着くまでは固唾を飲んでレースを見守ります。
各馬も、第2障害前で止まり、登るタイミングを伺います。

馬も気合が入っているので、障害をすぐに登りたがりますが、そこをこらえさせ、馬とのタイミング、息の入り具合を測るのも騎手の腕の見せ所です。

ばんえい記念ではより繊細な駆け引きが要求されます。観客からも「待て!」「まだ行くな!」と声がかかります。


▲第2障害では騎手が馬に息を入れさせ登るタイミングをうかがいます(ばんえい記念以外の競走から)


ちなみに、調教では勢いをつけるために「下がる」という練習も行われるのですって!
 
騎手は、馬の耳を見て、馬のやる気を判断しています。耳が前を向いている時は集中していて、声をかけた時に耳が後ろに向く時は指示が良く聞こえている証拠です。
 
満を持して馬が第2障害を登り始めると、会場中に大歓声が上がります。1トンのソリを曳くだけに、一気に登り切ることは不可能で、膝を折る(前足の膝を地面に着く)馬も普通です。それでも力を振り絞って、曳き上がるシーンは最も力が入り、観ていて鳥肌が立ちます。
 
正念場の第2障害を登り終えて、最後の直線にもドラマがあります。

1番手で障害を下りても、残っているスタミナや平地の得意不得意がカギを握ります。
第2障害からの最後の直線は、騎手は原則ばん馬を故意に止めることはできません。
しかし実際は、一気に駆け抜ける馬は少ないので、ゴール直前でも大逆転があるのです!


▲第2障害を最初に下ったのはフジダイビクトリー。しかし、最後の直線では止まってしまい逆転を許します


最後の直線では2番手で障害を下りたセンゴクエースが驚異的な力を発揮し、直線半ばでトップに立つと、最後まで止まらずにゴールイン。

3連覇を目指した1番人気オレノココロの追い込みをしのぎ、初出走初優勝を飾ったのでした!


▲最後の直線で圧巻の強さを見せたのがセンゴクエース!止まることなく一気にゴールまで駆け抜けました


しかし、ばんえい記念はこれで終わりません。
下級条件から挑戦したドルフィンが、他馬がゴールした後も、第2障害を越えるのに苦闘していました。

それでも野次られるどころか、「頑張れ、ドルフィン!」「あとひと越え!」と会場から声がかかり障害を越えた時は大きな拍手が起こりました。


▲第2障害で取り残された最下位のドルフィンにも大きな声援が送られていました!


最後まであきらめずにゴールすると、再びねぎらいの拍手が起こります。
出走するだけで大変なレースだけに、観客も馬券を超えて全馬に敬意を払い、最下位の馬が入線するまで応援を続けるのです。

2017年度の同レースで、名馬ニュータカラコマがレース中に倒れ亡くなるという衝撃のシーンがありました。それだけに、全馬のゴールはファンも胸をなでおろしたでしょう。

勝ったセンゴクエースに騎乗した工藤篤騎手も同レース初優勝です。
「最後の直線はまるで普通のレースみたいに止まらなかった。これといった課題は見当たりません。(ばんえい競馬で)一番強い馬だと思います」と強さに舌を巻いていました。

今年度の古馬重賞路線は同馬が中心になるのでしょうか?

 

新馬戦から始まるばんえい記念への道のり

 ばんえい記念の余韻も冷めやらぬうちに、2019年度開催が始まります。

この1か月間はつかの間の休息となるかと思われますが、相手は馬という生き物。
調教は毎日のように行われます。

現在、ばんえい競馬には約600頭の馬と、約200人の調教師、騎手、厩舎関係者が所属しています。
 
この間、新馬として新しくデビューする2歳の能力検査(能検)が行われます。
今季は4月14日に第1回目が開催されました。


▲4月14日に行われた2歳馬の第1回能力検査から(写真提供=ばんえい十勝)


178頭が出走し72頭が合格、競走馬としてデビューすることになります。
能検は8月まで10回行われ、第1回目に落ちてしまった馬も再チャレンジする機会があります。


▲ばんえい記念の翌日、厩舎地区内では若馬の調教が行われていました


ちなみに馬は生まれた年は当歳(とうさい)、翌元旦に齢が増え、1歳として数えます。

早ければ1歳秋には厩舎に入厩し、ハミを付ける、馬具を付ける、ソリを装着するといった馴致、調教が行われます。
2歳は人間では小学生ぐらいでしょうか?開催初めは新馬戦も注目ですよ。

この中から未来のばんえい競馬を担うスターが誕生するかもしれません。


▲これでも2歳馬は古馬に比べるとやはり小さいです


2歳が曳く重量は500㎏ほど。1トンの半分です。
その後レースを重ねるにつれ、勝ち進んでいく馬は曳く重量も増えていきます。

3歳となる3月のイレネー記念で年度デビュー馬の最強決定戦を行いますが、重量は690㎏。
古馬のオープン馬になってもばんえい記念以外の重賞で曳く重量は900㎏ほど。

ばんえい記念への道のりがいかに長く、特別なレースかわかります。


▲レースでは勇壮なばん馬も厩舎ではノンビリしています。サラブレッドより大人しい印象です
 
 
▲装蹄所では装蹄師さんが蹄鉄を鍛えている珍しい光景が。ばん馬の巨大な蹄鉄は幸運のお守りとして縁起の良い物とされています
 
 
かつてのばん馬はペルシュロンの血が強く出ていました。
「ばん馬の父」と呼ばれる偉大な種牡馬で、明治末期から昭和初期まで約600頭の子供を輩出したイレネー号もペルシュロン種です。
 
 
▲帯広競馬場内のイレネー号像。ばんえい競馬の礎を築きました
 
 
ペルシュロン種など純血種は古馬で800㎏が平均でしたが、今はデビューする2歳馬の体重です。

よりパワーやスピードのある血の交配が行われ、前述の純血種による混血や、日本の和種などとの混血により、世界最大級に大型化していきました。
現在のばん馬は1000㎏が平均で稀に1200㎏クラスもいます。ばんえい競馬のための、北海道オリジナル産馬と言っても過言ではないでしょう。
 
それだけ大型になっても、ばんえい記念は過酷で、たどり着くのはほんのわずか。
2歳からエリートコースを歩んだセンゴクエースでも、ばんえい記念を制したのは82戦目。7歳での優勝ですが、それでも若いくらいです。

1トンを曳けるようになるには、馬も相当なレース経験と鍛錬が必要なのです。
 
いきなり重いソリを曳かされて、障害を登れないなどの失敗があると、それがトラウマや後遺症となることがあり、ばんえい記念の出走には調教師も慎重を期します。
少しずつ経験を積ませ、調教で1トンを超えるソリを曳かせるなどして鍛え、重量に慣れさせてからの出走になります。

  
▲調教用のソリです。乗っている重りは1個100㎏です
 
 

今年度の注目馬は?

 今年度開催でセンゴクエースやオレノココロら歴戦の古馬達を脅かす若手が出てくるか。

ばんえい十勝の徳田奈穂子広報は「競馬は世代交代も楽しみの一つです。
現在4~6歳の馬が、先輩達にどこまで追いついていくかも注目です。有力馬はズラリといます」と話します。

徳田さんはメジロゴーリキ、ミノルシャープ(いずれも5歳)、アアモンドグンシンや牝馬のミスタカシマ(いずれも4歳)、メムロボブサップ(3歳)などを挙げてくれました。
 
また、2年4ヶ月の休養後、昨年度まで23連勝中のホクショウマサル(8歳)がどこまで連勝記録を伸ばすかも注目されます。
ですが、これだけ勝っていても曳いた最高重量は760㎏。

いずれはばんえい記念の挑戦を目指すと思いますが、真の名馬になるには重量が重くなる今年度が正念場でしょう。

 

帯広競馬場で観てみよう!

 2018年度の売り上げは24,429,193,700円と過去最高を記録しました。

ネット投票の影響は大きく、リアルタイムでレース映像も見られるようになりましたが、一度は現地で観てみることをオススメします。

レースだけではなく、かつてのパドックを改装した、ふれあい動物園もあり、そこにはポニーからばん馬、馬以外もウサギやヤギ、ニワトリまで、動物と直接触れ合う施設も充実しています。
おそらく日本で一番、動物と触れ合える競馬場です。


▲馬とふれあえるのも帯広競馬場の魅力!ニンジンを与えることもでき、家族連れでも楽しめます!
 
 
▲帯広市の嘱託職員で全国的人気の広報馬ミルキー号も病気療養から復帰し久々にお披露目されていました
 
 
レースだけでなく北海道の馬文化もダイレクトに味わえる「ばんえい競馬」。
力強くて美しい「ばん馬」を生で観るだけで価値があります!

帯広でぜひ楽しんでみて下さいね!

 

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同社は北海道と包括連携協定を結んでいて、北海道遺産に認定された「北海道の馬文化」を応援し、ふるさと北海道に貢献していきます。
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