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公開 | チバタカコ

アイヌ文化を学ぶアイヌの学生たちがいます。「札幌大学 ウレシパクラブ」

札幌大学ウレシパクラブのウレシパ・フェスタ
 
札幌大学(以下、札大)では、アイヌ民族の若者たちを毎年一定数受け入れ、和人の学生たちも一緒にアイヌ文化を学び、多文化共生を実践する取り組みとして、2010年からウレシパ(※1)・プロジェクトを実施しています。次代へ継承するアイヌ文化の担い手として学ぶ学生たちに会いに行ってきました。

 

札幌大学、ウレシパクラブ「ウレシパ・フェスタ」

イランカラプテ!(※2)
去る10月29日、札大で「第7回ウレシパ・フェスタ2016年」が開催されました。ウレシパ・フェスタは、ウレシパクラブの学生たちが、日ごろ学んでいるアイヌ文化を披露し、アイヌ文化を知って、理解してもらおうという年に1回のイベントです。
 
ゲスト(今年は日本語研究の第一人者、金田一秀穂氏)の基調講演やパネルトークの後、ウレシパクラブの学生たちによるアイヌ語劇と舞踊の発表が行われました。
 

札幌大学ウレシパクラブのウレシパ・フェスタ、アイヌ伝統舞踏
 
札幌大学ウレシパクラブのウレシパ・フェスタ、アイヌ伝統舞踏

札幌大学ウレシパクラブのウレシパ・フェスタ、アイヌ伝統舞踏

北海道Likersでは今までもアイヌ文化について取材し、紹介をしてきました。阿寒や白老、平取などで伝統舞踊や音楽を何度か見聞きしたことがありますが、ウレシパ・フェスタの舞踊や劇は、(そこは大学生、若いせいでしょうか?)初々しさを感じたと同時に、舞踊ではとても躍動感があり、はつらつとした印象でした。

 

札幌大学ウレシパクラブとは、ウレシパ・プロジェクトを推進する組織

ところでウレシパクラブとは、「クラブ」というくらいなので、札大の学生たちによるアイヌ文化のサークル活動のようなものなのでしょうか?さっそくウレシパクラブを訪ねてみました。
 

札大にあるウレシパクラブの活動拠点▲札大にあるウレシパクラブの活動拠点
撮影:チバ
 

「ウレシパ」とは、アイヌ語で「育て合い」を意味し、ウレシパクラブは正式には「一般社団法人 札幌大学ウレシパクラブ」と言います。この代表理事である本田優子先生に話をうかがいました。
 

札幌大学副学長、札幌大学女子短期大学部副学長で、ウレシパクラブの代表理事、本田優子先生▲札幌大学副学長で、ウレシパクラブの代表理事、本田優子先生
 

ウレシパクラブとは、札大が2010年から取り組んでいるウレシパ・プロジェクトを推進するための組織のこと。そして、ウレシパ・プロジェクトとは、札大にアイヌの若者たちを毎年一定数受け入れ、未来のアイヌ文化の担い手として大切に育てるとともに、多文化共生コミュニティーのモデルをつくり出そうとする試みです。
 
「ウレシパ・プロジェクトは、3つの柱からなっています。1つ目は、ウレシパ奨学生制度と言って、アイヌの若者たちを大学に進学させる制度。2つ目はウレシパ・カンパニー制度で、アイヌ文化に関心を持つ企業にウレシパクラブの活動への協力と参加を求めています。3つ目は、ウレシパ・ムーブメントと言って、アイヌの学生だけではなく、アイヌ文化に興味を持つ和人や留学生たちも一緒に参加することで多文化共生を実践し、私たちの日常の中に、極々当たり前にアイヌの人たちや文化がある、融け込むということを学内だけではなく学外にも広く発信していくことです」と本田先生は語ってくれました。
 

ウレシパ・フェスタのステージに立つ本田先生▲ウレシパ・フェスタのステージでは、本田先生も学生たちと一緒に踊りました。数年前のウレシパ・フェスタでは、あまりにもはりきって踊ったせいか(?)、なんとステージ上でアキレス腱を切ってしまい、救急車で運ばれたというエピソードも

 

アイヌ文化は北海道が誇るべき文化です

本田先生は、平取町二風谷(にぶたに)で11年間、アイヌ文化研究の第一人者であり、自身もアイヌである萱野茂氏の助手を務めていました。そこで、アイヌの子どもたちが優秀でも経済的な問題で大学進学を断念していることを目の当たりにし、アイヌの若者がアイヌ文化を勉強できる場所があればいいのに…と考えるようになったそうです。
 
やがて2005年に札大で教鞭をとるようになり、2008年に札大初の女性学部長に選ばれました。その時「学部長という職でなければできないことをやりなさい、と何か大きな力で言われているような気がした」という本田先生は、同年国会の衆参両議院が「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全員一致で採択したという時代の流れにも後押しされるように、学内にウレシパ・プロジェクトを提案しました。しかし、その時に言われたのが「逆差別ではないか」ということ。なぜアイヌだからという理由で、優遇されなければならないのだというものでした。
 

ウレシパ・フェスタの最後は、客席の人たちもステージに上がり、一緒に踊りました▲ウレシパ・フェスタの最後は、客席の人たちもステージに上がり、一緒に踊りました

 
しかし本田先生は、「ウレシパ・プロジェクトはアイヌのためだけの弱者救済措置ではない。札大文化学部の教育理念は『共生と調和』であり、文化の違う集団、つまり多文化共生のコミュニティーをつくることは、多様性を皮膚感覚で学ぶことができる。スポーツのルールをいくら学んでもその競技が上手くなるわけではない。それと同じで、アイヌの学生だけではなく共に学ぶ和人の学生たちにとっても、『共生と調和』を実践する機会になる」と訴えました。
 
さまざまな意見を受け止め、それでも一つひとつ説得しながら、ついにウレシパ・プロジェクトが学内で認められ、2010年にウレシパ奨学生第1期生を受け入れることになりました。
 

アイヌの伝統楽器トンコリを弾くウレシパクラブの学生▲アイヌの伝統楽器トンコリを弾くウレシパクラブの学生
 

アイヌの伝統楽器ムックリを奏でるウレシパクラブ学生▲アイヌの伝統楽器ムックリを奏でるウレシパクラブ学生
 

本田先生は「今、アイヌの人でさえ、アイヌの文化も歴史も知らないという人が多くいます。アイヌは自然の中で生きる、暮らす知恵をたくさん持っています。まずは、そういうことをきちんと学ばなければなりません。
 
でも、アイヌ文化を学んだからと言って、それだけで食べていける受け皿が今の社会にあるかというと決してそうではない。プロとして生きていくのはほんの一握りで、大半は普通の社会人、サラリーマンをしながらアイヌとして生きていきます。
 
アイヌ文化は北海道が誇るべき文化です。北海道の特徴としてアイヌ文化を打ち出すのが当然という理解が深まることで、アイヌ文化は北海道に定着すると思います。ウレシパクラブで学んだアイヌだけでなく、アイヌ文化を理解した和人が社会に出ていくことで、アイヌを理解するための橋渡しができるのではないかと思っています」と語ってくれました。

 

自分がアイヌと知って「うれしかった」

ウレシパクラブの奨学生で、白老出身の上河彩さんは、自分がアイヌだと知ったのは、高校3年の進路を決める時だったそうです。
 

札幌大学地域共創学群歴史文化専攻2年、上河彩さん▲地域共創学群歴史文化専攻2年、上河彩さん。進路を決める時、就職を考えていましたが、ウレシパ奨学生のことを知り大学進学を決めたそうです
撮影:チバ

 
「両親は白老のアイヌ博物館に勤めていて、父は小さい時に亡くなったのですが、進路を決める時に、アイヌ舞踊を踊っている父のビデオを見せられて、自分はアイヌだということを母に教えられました。母は私が『自分はアイヌだ』ということを知っていると思い込んでいたようなんですけど、本当に全く知らなくて、その時初めて知りましたよ(笑)」と上河さん。
 
その時の気持ちは「私はアイヌもアイヌ文化も何も知らなかったけど、父も母もちゃんとアイヌ文化を学んでいたんだということを知って、うれしく思った」とのこと。入学当時は、アイヌ語も文化も何もわからなかった上河さんでしたが、今ではアイヌ文化を学んでいたはずのお母さんより詳しくなっているそうです。
 
「今は踊りが好きなので、それを一生懸命やっています。将来は、両親のように博物館で働けたらいいなぁと思っています」(上河さん談)。
 
札大AO入試のウレシパアクションプログラムで入学した札幌出身の原田啓介さんは、アイヌではなく和人です。入学当初は「自分は北海道生まれで、ここで育っているんだから、アイヌ文化なんて余裕でしょ」と軽く考えていたそうです。
 

札幌大学地域共創学群地域創生専攻2年、原田啓介さん▲地域共創学群地域創生専攻2年、原田啓介さん。「最初はアイヌ文化をなめていたけど、知れば知るほど興味はつきない」
撮影:チバ

 
「アイヌの文化、歴史、世界観など、本当に何も知らない状態で入学したのですが、正直なめていました。しかし、知らなかったことがわかるようになると、どんどん楽しくなってきました。特に本田先生がとても優しく指導してくださるので、ますます興味を持つようになりました」と原田さん。
 
アイヌの物語にはさまざまな教訓が含まれており、その世界観が理解できるようになると、アイヌの物語への興味がどんどん深まっていくそう。また、アイヌの人に会って話をするのが今はとても楽しいと言います。「アイヌを知らずに、例えば平取や白老に行っても、ただの観光客になってしまいますが、和人の僕がアイヌについて語ると、アイヌの人たちはいろいろなことを教えてくれる。これは、自分がウレシパクラブにいるからできることだと思います」(原田さん談)。
 
ウレシパクラブの学生たちは、大学の授業の他に毎週2回集まり、アイヌ語や伝統舞踊などを学んでいます。また、研修旅行で海外の先住民族たちとも交流を深めています。彼らはアイヌ文化を学び、守り、継承し、そして発信しています。北海道に暮らす私たちも、もっと積極的にアイヌ文化に触れ、互いに理解を深めることで、本田先生のおっしゃる「北海道が誇るべきアイヌ文化」が、これから全道に広がり定着するのではないかと思いました。

 

「イランカラプテ」の次は、北海道の乾杯「イクアンロー」!?

最後に本田先生が教えてくれた、これから忘新年会シーズンに「使えるアイヌ語」を。それは「イクアンロー」。イク=酒を飲む、アン=私たち、ロー=~しよう、という意味で、「イクアンロー=乾杯」を意味します。集まったら「イランカラプテ」とあいさつをして、乾杯は「イクアンロー」。北海道の乾杯にどうです、これ。なかなか、いいんでないかい?
 

サッポロビールで乾杯をする様子
 
※1 正式には「ウレシパ」の「シ」は、小さい「シ」と書きます。
※2 正式には「イランカラプテ」の「プ」は、小さい「プ」と書きます。
 
 

関連リンク

一般社団法人札幌大学ウレシパクラブ
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