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公開 | 北海道Likers編集部

札響で聴くシベリウス 東京公演迫る。指揮者・尾高忠明さんに聞く500da714 faab 40a3 988a 49088cf2d731

3月5日、サントリーホール(東京)で開催される「ホクレン クラシック スペシャル 札幌交響楽団東京公演2014」は、札響がフィンランドの大作曲家シベリウスの交響曲をたっぷりと聴かせるコンサート第2弾。人気の交響曲第2番も演奏されます。昨年に引き続き、この公演で指揮を務める尾高忠明さんに、札響とシベリウスについて話をうかがいました。


指揮者:尾高忠明氏▲尾高忠明さん

 
<札響のクリスタルな音>
 
北海道Likers(以下HL):尾高さんは、札響の特質は何だと思いますか。
 
尾高:僕が札響と最初に仕事をしたのは40年以上前ですけれど、音が透き通っていることに感心した記憶があります。その後、幾人かの音楽監督のもと、札響のクリスタルな音には磨きがかかりました。1998年から、ふたたび札響との関係が始まりますが、その時、公演でエルガーの交響曲を演奏してみて「音の良さを保ちつつ、上手くなっているな」と感じました。それは、とてもうれしいことでした。
 
HL:そのクリスタルな音は、どこから来ると?
 
尾高:風土と関係しているということ。北海道という、日本の中でもヨーロッパに近い風土、空気の澄みかた、札幌のような街のクリーンなところ、すべてが音のクリスタルさに表れていると思う。これは僕だけでなく、札響を指揮したことのある人は異口同音にも言いますね。
 
HL:創立以来の歴史のなかで、楽団員は入れ替わるわけですが、特色となる音の質が変わらないのは面白いですね。
 
尾高:ほんとうですね。まるで老舗のうなぎ屋さんが創業からのタレを継ぎ足しつつ使って伝統の味を守っている、みたいなところがあるんでしょうか。
 
 
<札響得意の「第2番」>
 
HL:なるほど。さて、東京公演ではシベリウスの交響曲第2番と第4番を演奏します。第2番は札響の「十八番」と聞きましたが。
 
尾高:フィンランドと北海道の、北国という親和性という以上に、札響はシベリウスを自分たちのものにしていると思います。第2番は「私たちの得意曲」という自信があります。2001年に札響とイギリスで公演したことがありますが、そこで演奏した第2番は、かなりエポック・メーキングな出来だったと思います。お客様もたいへんな盛り上がりでした。現地の音楽関係者に「BBC交響楽団の指揮で君のことは知っていたが、失礼ながら、日本のオーケストラがここまでやるとは思わなかった」と賛辞をもらいました。イギリスは音楽ファンにシベリウス好きが多い土地柄と知っていたので、これはうれしい体験でした。
 
HL:尾高さんは個人的にも第2番がお好きとか。
 
尾高:札響と関わりを持つ前から、最も好きな曲のひとつです。若い頃、東京フィルの常任指揮者にしていただいた時、「常任になったら、好きな曲をやっていいぞ」といわれ、ブルックナーの交響曲第9番を挙げました。でも「まだ早い。子どもの振る曲じゃない」と却下されまして(笑)、それならと選んだのが、シベリウスの交響曲第2番なんです。ですから、第2番は僕の常任指揮者デビュー曲。思い入れのある大事な曲です。
 
 
<人気曲「第2番」の解釈>
 
HL:そうだったんですね。その第2番には、これまでに何度となく取り組んだことと思いますが、尾高さんの解釈や表現は変わりましたか。
 
尾高:この曲には、オーマンディ指揮によるフィラデルフィア管弦楽団、それからカラヤン指揮によるベルリン・フィルの名演があります。カラヤンのものは、非常にゴージャスで、まるで豪華客船による船旅のような印象の素晴らしい演奏です。僕も、その方向での演奏を考えていたときがありましたが、フィンランドへ行って変わりました。
 
HL:シベリウスの故国で何が感ずるものがあったのですか。
 
尾高:シベリウス自身が考えた第2番は、祖国愛や郷土愛が流れ、希望を謳いながらも、派手さを抑えたものだったのではないかと思うようになりました。これはヘルシンキのオーケストラを指揮する機会があって、フィンランド人の気質に触れてみての実感ですね。
 
HL:そうなんですか。で、その気質とは?
 
尾高:日本人に似ているかもしれない。質実で自己主張も控えめな様子。ただ、日本人には熱しやすく冷めやすいところがあるのに対して、フィンランド人は熱しにくく冷めにくい。ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」を彼らと演奏したのですが、冒頭から派手にいく曲なのに、全然、熱くならないんです。お祭りなのに、真っ暗闇という感じ(笑)。でも、中盤から乗ってくると、これはもう、たいへんに素晴らしい頑張りを見せてくれました。
 
HL:国民性って、思っている以上に音楽づくりに影響しているものなんですね。
 
尾高:それからフィンランド人やハンガリー人、それにモンゴル人は遠い祖先を同じくするようですし、モンゴル人と日本人も古くはつながりがあった民族同士ですね。そうすると、フィンランドの音楽をなにもヨーロッパ経由で受け取らなくてもいいんじゃないか、僕たちの感性でそのまま受けとめた方がいいんじゃないか、という考えも成り立つ。
 

札幌交響楽団photo: Takashi Noguchi

 
<「第4番」誕生のうらに>
 
HL:たしかに。一方の交響曲第4番は、人気の高い第2番とは対照的な曲です。
 
尾高:第4番はシベリウスが生涯でおそらく最も辛かった時期に書いた曲です。喉に腫瘍ができて、死をも意識するような時期でした。それまでに書いた交響曲からここまで変わるか、というくらい内向的で重い印象です。かすかな光が見えるのですが、作曲者の辛苦が全面に出ているような感じ。交響曲第2番がシベリウスだと思っていると、奇異な感じを受けるかもしれない。でも、こうした伝記的な事実を知っておくと、第4番の面白さがよくわかると思います。
 
HL:聴き手としては、札響の第4番でシベリウスの新しい面を発見するのも楽しみですね。
 
尾高:ベートーヴェンやモーツァルトは多彩な交響曲を残していますが、それでも彼ららしさは一貫していると思う。気分の変調が激しく曲にも波があったといわれるマーラーでさえ、一連の交響曲にはやっぱり彼らしさが一本通っている印象がある。でも、シベリウスは第3番以降、大きく変化していますね。シベリウスのファンのなかには、本当の彼らしさは第3番以降、という人も多いんです。
 
HL:そうなんですか。お話をうかがうと、なおさら、第4番と第2番を一緒に聴く東京公演が楽しみになってきました。交響曲の前に組曲「恋人」を演奏しますね。
 
尾高:シベリウスはヴァイオリンが得意で、ウィーン・フィルに入ろうとしたのですが、選抜で落ちてしまいました。おかげで作曲家として素晴らしい交響曲ほかを数多く残してくれることになったのですが、ヴァイオリニストだけあって、弦楽合奏曲は多いですね。組曲「恋人」もそのひとつです。音の良く出る巧いオケは日本にたくさんありますが、こうした弦楽曲でシベリウスらしさをよく表現できるのが、札響ではないでしょうか。札響の弦の音色が、シベリウスの世界によく合っている気がします。
 
 
<大きい、聴衆の存在>
 
HL:東京公演は、札響にとってやはり特別なものですか。
 
尾高:今回のプログラムでは、キタラでの公演のすぐあとに東京公演ですが、東京では札響がプラスアルファの力を発揮することも多いですね。それはきっとお客様の期待を感じてのこと。
 
HL:聴衆の存在が、そこまで大きいとは思いませんでした。
 
尾高:期待、感動、興奮……コンサートホールで演奏者がお客様から受けるとるものは大きいんですよ。指揮者は舞台に出て、客席に向かってお辞儀をして、楽団の方に振り向いた瞬間に、もう分かります。音を出す前に、その日のお客様はどんな反応をしてくれるか分かるんです。
 
HL:ライブの面白さ、ですね。
 
尾高:同一のプログラムで2日間の公演があるとしたら、初日と2日目では、やっぱり仕上がりが違ってくる。お客様の中には、それをちゃんと聞き分ける方がいらっしゃる。
 
HL:そうすると、幾分かは聴衆も演奏に参加しているような感じなんですね。
 
尾高:そうですね。お客様の反応に乗せられると、演奏者も一層よい音を出せますし、その逆もある。お客様の存在あっての演奏会なので、お客様無しに同じような演奏をするのは難しいんです。そこが演奏会という場の面白さですし、よい演奏でよい時間がつくれた時の喜びにつながるんですね。
 
HL:札響のシベリウスを聴きに行って、そんな素敵な時間にぜひとも立ち会いたいと思います。
 
 
札幌コンサートホールKitaraの大ホール▲札幌コンサートホールKitaraの大ホールにて。この日は札響と「第九」のリハーサル
 
取材:読売新聞北海道支社
 
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尾高忠明さんの指揮する札響の東京公演は、前回に引き続き、フィンランドの大作曲家シベリウスの交響曲をたっぷりと聴かせる、ファン待望のコンサート。2014年3月5日、サントリーホール。
 
ホクレン クラシック スペシャル 札幌交響楽団東京公演2014
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札幌コンサートホールKitaraで、ひと足先に札響のシベリウスを堪能しませんか?「第567回定期演奏会 シベリウス交響曲シリーズvol.2」は、2014年2月28日と3月1日に開催。
 
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