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公開 | 北海道Likers編集部

春はシベリウスに乗って 札響の東京公演が楽しみ500da714 faab 40a3 988a 49088cf2d731

来年3月5日に開催される「ホクレン クラシック スペシャル 札幌交響楽団東京公演2014」は、フィンランドの大作曲家シベリウスの交響曲をたっぷりと聴かせる、ファン待望のコンサート。人気の「第2番」も演奏されます。北海道と札響、そしてシベリウスについて、コンサートマスター(首席演奏者)の大平まゆみさんに話をうかがいました。
 
 
▲大平まゆみさん
 
 
<住めば道産子>
 
北海道Likers(以下HL):よくオーケストラにも性格、地域色があるといいますが、大平さんも演奏家としてそう感じますか? 札響はどうでしょう?
 
大平:たしかに性格はありますね。札響の場合は、のびのびとした感じ。東京だと8つ、9つのプロ・オーケストラがあって、常にしのぎを削っている雰囲気がありますが、こちらはそれがなくて、ゆったりしています。そこが北海道らしいかも。「ゆるい」と思う人がいるかもしれないけれど、他を意識しすぎず、存分に個性を伸ばせる幸せな環境ではないでしょうか。
 
HL:大平さんは仙台のご出身でしたね。いま札響の楽団員のうち、道産子は3割弱だとか。それでも北海道らしさが感じられるとすれば、やっぱり、この北海道の風土の影響が大きい?
 
大平:それは、もちろん。住んでいると、みんな道産子になってしまうようです。北海道の気候風土やライフスタイルが音楽家としての精神やものの感じ方に作用するのですね、きっと。時間に追われず、おいしいものを食べて、いい音を奏でる。もう15年住んでいますが、自分の音楽活動の本拠地は北海道以外に考えられません。
 
HL:まさに北海道Likerですね。
 
大平:たとえば、こんな体験もあります。映画『ゴジラ』のテーマ曲で知られる作曲家、北海道出身の伊福部昭さんの作品をずいぶん昔、北海道に移る前に演奏したことがありましたが、正直、当時はその良さがピンとはきませんでした。でも、最近、その曲を弾く機会があったのです。「ああ、すごい」と思いました。先住民の文化や手つかずの自然を思わせるたくましい音楽で、北海道に根ざした素晴らしい作品だと実感できました。
 
HL:よく言われますけれど、道外出身者に、かえって北海道の魅力を教えられることが多いんです。
 
大平:そうみたいですね。北海道内各地を訪れるときに、私は自分で車を運転して行きますけれど、いまだに雄大な自然に心打たれます。それから、その厳しい環境のなかで暮らしを営んできた人々のことに思いを馳せ、北海道の持つ意味をいろいろと考えたりもしますね。やっぱり、人を惹きつけるものがあるでしょう?
 
HL:瓦屋根の連なる城下町や古い社寺仏閣のほうに憧れますけれど(笑)……。
 
大平:自分のところに無いものを求めてしまう(笑)。
 
 
<ホールと共に成熟>
 
HL:個々の演奏家だけでなく、そのまとまりであるオーケストラの音づくりにも、やっぱり北海道という場所柄は大事なんでしょうね。
 
大平:札響の場合、より具体的に言えば、コンサートホールKitara(キタラ)の存在が大きいと思います。私は東京のオーケストラに在籍していたことがありますが、札響のように自分たちの本拠となるホールを持っているオケは、まずありません。だから、演奏会ごとに異なるホールで演奏するケースが多いんです。でも札響はKitaraで練習も出来ますし、いつもKitaraで本番ができる。理想の音の響きをとことん追求できる。こんなに恵まれた条件は、なかなかないんですよ。
 
HL:そうなんですか。しかも、そのKitaraは国内外で評価が高い、すぐれたコンサートホール。
 
大平:その通りです。ここで公演を行なった内外の演奏者や指揮者は口を揃えて称賛されますね。コンサートホールも年を経て成熟していくものですけれど、札響の音もKitaraとともに成熟を重ねているような気がします。
 
 
<東京公演で届けたい>
 
 
▲2013年3月の東京公演でコンサートマスターを務めた大平さん(撮影:浦野俊之)
 
 
HL:道民も、もっとKitaraに足を運ばないと、もったいないですね。さて、札響の東京公演は来春で25回目。北海道にくらべると聴き巧者が多い厳しいお客さんのような気がしますが、どうなんですか?
 
大平:私は、聴きにいらっしゃる方を北海道応援団のように感じています。「北海道、札幌からよく来てくれたね」という想いが伝わってくるようで、その意味では期待の温度が少し高いかもしれません。
 
HL:そうですか。札響の演奏にはきっと、耳の肥えている東京の方にも喜んでもらえるものがあるんでしょうね。
 
大平:言葉にしようとすると難しいんですが、何かほっとできるような音づくりでしょうか。土や風、緑を思わせる雰囲気でしょうか。世界の名演を聴こうと思ったら、CDやDVD、衛星放送やインターネットで簡単に耳にできる時代です。そんな時代には、ただ完璧な演奏というだけでは、駄目なんですね。「札響の演奏を聴きたい」と思っていただける「何か」が、そこにないと。その「何か」を感じてもらえる演奏を届けに行きたいと、東京公演を私自身も楽しみにしています。
 
 
<シベリウスが好き>
 
HL:札響ではシベリウス生誕150年にあたる2015年に向けて、彼の交響曲の演奏を続けています。この年までに交響曲全曲を演奏するそうですね。前回の東京公演では交響曲第1番と第3番、そして来春は第2番と第4番です。北欧フィンランドの作曲家ということで、北海道のオーケストラとは馴染みのよい取り合わせと言えそうですね。
 
大平:それはよく言われます。やはり気候風土に相通じるものがあるのでしょうか。私は個人的にもシベリウスの音楽は大好きなんです。バイオリン・コンチェルトも素晴らしい曲ですしね。
 
HL:シベリウスの作品は概して難しいんですか?
 
大平:いいえ、そんなことはないと思います。イメージや全体像がつかみやすい作品が多いですしね。でも、シベリウスって、写真で見ると、いかめしい顔なんですよ。私、シベリウスのコンチェルトを練習するときは、その怖い顔の写真を譜面台の上に置いて、いつもシベリウスに見られているような感じで弾いています(笑)。
 
 
 
 
▲練習中の大平まゆみさん
 
 
HL:弾き間違うと、もっと怖い表情に変わったりして(笑)。シベリウスのような作風の曲を演奏で表現する場合、どんなことに注意を払うんですか?
 
大平:オーケストラとしてはまず指揮者の解釈を音にすることが大前提になりますが、個人としては曲の流れと音色を大切にしています。シベリウスは自身がバイオリニストだったので、交響曲でもバイオリンのパートに対するこだわりには並々ならぬものがあります。だから、私たちバイオリニストは燃えるんですよ。
 
HL:来春の東京公演では人気の高い交響曲第2番、そして第4番を演奏します。プログラムでは第4番、それから第2番の順ですね。続けて聴くと、まるで雪に閉ざされた冬から希望が芽吹く春への移り変わりといった印象があります。
 
大平:そうですか?素敵ですね。そう言えば、雪をかぶった針葉樹林だったり、寒い朝のピリピリした空気だったり、そんなイメージを喚起するものがシベリウスの曲の随所にあるような気がします。道内を車で走っていると、景色に触発されて様々な音楽が頭のなかに鳴りだすことがあるのですが、そんな時、シベリウスのメロディーがよく浮かんでくるのですよ。
 
 
<たっぷりとシベリウス>
 
HL:東京公演では組曲と交響曲、いずれもシベリウス作品のみ。ひとりの作曲家の世界に、たっぷりと浸れるわけですね。
 
大平:そうですね。これはオーケストラにとっても、取り組みがいのある公演です。もちろん名曲コンサートのようにバラエティに富んだ曲をお届けするのも、幅広いお客さまに楽しんでいただくうえでは大切ですが、たとえば前半と後半で演奏する作品の曲調・曲想が大きく異なると、演奏する側も聴かれる方もけっこう気持ちの切り替えが大変なのですよ。ですから、今回のようにシベリウスだけというのは、作品の世界をよりくっきりと提示できるので、よいと思います。
 
HL:なるほど。そういうものなんですね。
 
大平:そうすると、当日食べてくるものまで違うんです。これ、私だけかしら(笑)? ブラームスを弾くときには、ステーキが食べたくなる。お蕎麦じゃ力不足な感じですね。シベリウスの場合は何でしょう? やっぱりお肉になると思います。以前、ロシアで演奏したときは、当地の料理を食べ、ウォッカを飲んで「これだからチャイコフスキーの音楽が生まれるんだな」と妙に納得できました。音楽と食事の関係って、かなり大事なんですよ。
 
HL:とすると、北海道のように食材が豊かなところは……。
 
大平:音楽に取り組む者には、いい土地ですね、おいしいものがいっぱいの北海道は。しかも私は、ほとんど道産の食べ物ばかりを選んでいます。
 
HL:ありがとうございます。もう名誉北海道Likerと呼びたい大平さんですね。最後に来春の東京公演に向けての意気込みを聞かせてください。
 
大平:シベリウスをよく研究している方、音楽に包まれて日常から解放されたいと思う方、知り合いの楽団員の様子を見に来てくださる方……。同じコンサートでも、いらっしゃる方々が求めるものは、それぞれに違うことを改めて思うこの頃です。会場に一時でもフィンランドや北海道のような世界を作りだして、どなたにも満足していただけるように演奏したいですね。素晴らしい音だけでなく、特別な「何か」をお客さまの心に残せる東京公演にしたいと思っています。
 
 
取材:読売新聞北海道支社
 
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札幌コンサートホールKitaraで、ひと足さきに札響のシベリウスを堪能しませんか?
「第567回定期演奏会 シベリウス交響曲シリーズvol.2」は、2014年2月28日と3月1日に開催。
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