幻の魚イトウは、河川最強のプレデター!?

イトウが生息する道北地域のとある河川。
流れがゆるやかで河口周辺に広い汽水域のある川を好んで生活します。
 
 

 
4~5月に上流域で産卵を終えると、エサの豊富な中下流域に移動してきます。そこで産卵後の体力を回復するため、イトヨ、ワカサギ、ウグイなどの小魚をたくさん捕食するのです。
 
 

 
川岸に潜むイトウ。どうやらイトヨを待ち構えているようです。
「イトヨ」とは、道内の河川や湖に生息する、体長7cmほどの小さな魚です。
この川では、5~6月に海からたくさんのイトヨが産卵のために遡上してきます。

 

 
遡上の際、大型の魚から身を守るため水深の浅い岸際を泳いでくるイトヨ。
このような生態をイトウはよく分かっているのですね。
川岸の窪みや草の下で捕食の機会を伺います。
 
 

 
来た!口を大きくあけてイトヨを襲います。大きな体に似あわず素早い動き!
その攻撃をかわして水面から飛び上がるイトヨ。
写真で分かりますでしょうか?イトウの周りで跳ねあがる小さな魚がイトヨです。
 
 
 
 
イトウも負けずにジャンプ!
水深のある場所では、イトヨを狙って水面から飛び上がることもあります。
体長50cm以上の大きさで飛び跳ねる様子はかなりの迫力です。
 
小さな魚だけではなく、川に落ちたネズミやヘビなどを捕まえて食べることもあるというイトウ。漢字では、魚偏に鬼と書きます。ネズミやヘビまで捕食することから、このような字があてられたのでしょう。
 
 

 
写真はイトウの口の中。鋭い歯が舌の上にも付いています。
この歯で獲物をガッシリと捕らえて食べるのですね。
 
日本最大の淡水魚と呼ばれるだけあって大きなもので1m以上、最大2m以上のイトウが捕獲されたという記録も残されています。
1m以上の体格でこの鋭い歯。ネズミやヘビまで襲うというのも納得です。
 
 

 
迫力満点の大きなイトウとはうって変わって、春に誕生したかわいらしい稚魚の様子です。
4~5月の産卵・孵化を経て、稚魚が川を泳ぎ始めるのは6月末~7月頃。
初めはまとまって生活する稚魚たちも、少しずつ自分の縄張りを主張するようになります。
 
寿命15~20年という比較的長寿のイトウは、産卵後にその生涯を終えるサケとは異なり、数回にわたり産卵を行います。
寿命が長い分成長の遅いイトウ。稚魚は生後1年目の春で体長7cmほど。3年で20cm前後。成魚になるには、雄で4年以上、雌は6~10年もかかります。
この稚魚たちが成魚になれる確率はほんのわずかです。
 
「幻の魚」と言われている通り個体数が大幅に減少し、環境省のレッドリストでは絶滅危惧種IB類<近い将来における絶滅の危険性が高い種>に指定されています。
 
イトウは川の上流部から河口部までを生活の場とするため、川全体の環境が良好でないと生きていくことが難しいのです。河川環境悪化の影響を受けやすい魚、とも言えるでしょう。
今回写真を提供してくれた足立聡さんは、イトウの保全活動を続けている団体の一員でもあります。
北海道の「幻の魚」が本当の幻にならないよう、大切に守り続けていきたいですね。
 
最後に神秘的な足立さんの写真とコメントを掲載して終了します。




“夏至が近い6月の道北河川午前3時過ぎ。明るくなり始めた水面に大きな波紋が広がった。映っていた月が大きく揺れる。イトウが小魚を襲ったのだろう。堤防の上に停っている車は、釣り人の車らしいがまだ眠っているようだ”(足立聡)