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公開 | チバタカコ

上富良野町「後藤純男美術館」の楽しみ方、北海道Likersが徹底ガイド

上富良野町後藤純男美術館


後藤純男(1930-2016)は、北海道上富良野町にアトリエを構え、北海道の雄大な自然を愛した日本画の大家です。道内外はもちろん、海外からもファンが訪れる「後藤純男美術館」の楽しみ方、北海道Likersが徹底ガイド!

 

目次

・日本画家、後藤純男とは
・日本画と洋画の違い
・後藤純男美術館の楽しみ方
・レストラン「ふらのグリル」
・後藤純男の見た景色を見る
・後藤純男美術館の存在意義
・首相官邸に貸し出していた作品11点を、2年ぶりに展示


 

日本画家、後藤純男。
「私の人生は『絵』だけでいい」

後藤純男(ごとう すみお)は、1930年、千葉県関宿に真言宗豊山派住職の次男として生まれました。

幼少期にはお寺の修行もしましたが、「画家になりたい」という純男少年に住職の父は「自分の好きな道を行きなさい」と理解を示し、画業へと進みます。


後藤純男画伯▲後藤純男画伯(1930-2016)
※写真提供:後藤純男美術館


所属の日本美術院(横山大観らが設立)では日本美術院賞(大観賞)の他、内閣総理大臣賞など多数の受賞歴の後、理事として後進の指導にも尽力。

東京藝大(晩年に名誉教授の称号)や中国・西安美術院(名誉教授)など国内外で日本画の発展に活躍しました。

2006年に旭日小受章を受章、2016年に日本芸術院賞・恩賜賞を受賞。

さらに同年、アトリエのあった埼玉県松伏町名誉町民、自宅のあった千葉県流山市名誉市民、晩年の中心的アトリエのあった北海道上富良野町特別名誉町民の称号も受けました。

そして、2016年10月18日永眠。

取材を受ける時間があるなら絵を描いていたいというくらい、真摯に日本画に向き合っていた人なので、メディアなどの出演はほとんどないそうです。

そんな中でも貴重な出演が、1981年、51歳の時に一年間起用された、「違いがわかる男」で有名なインスタントコーヒーのCMです。

また北海道の人たちにとっては、81歳の時に出演した、北海道米販売拡大委員会の2011年度北海道米キャンペーン「北海道米LOVE」のCMを覚えている人もいるのではないでしょうか。

弟子を持たず、同じ画家の道に進んだ息子にも、身内びいきなところは一切なく、「この世界は、実力がすべて」と自分にも周りにも大変厳しい人だったそうです。

また、とても義理堅いところがあり、これ!と決めたら、何があろうと揺るぐことはなかったとか。

後藤純男は、「私の人生は『絵』だけあればいい」と言ったそうです。


上富良野町にある後藤純男美術館外観▲上富良野町にある後藤純男美術館


生涯を日本画に捧げた後藤純男の世界にどっぷり浸れるのが、上富良野町にある「後藤純男美術館」です。

 

日本画と洋画の違い、わかりますか?

後藤純男の世界に浸る前に、「日本画」についてちょっとだけでも知っておくと、絵の見方が変わります。

日本画と洋画の定義は、学術的にはいろいろあるのでしょうが、ざっくり言うと「画材が違う」ということ。

日本画
・画面は、和紙や絹製の布を使用
・絵具は、天然の鉱石などの粉末を使用
・にかわ(動物由来のコラーゲンを固め、乾燥させたもの)で画面と絵具を接着する



日本画用絵具▲日本画で使う絵具


日本画用絵具いろいろ


洋画
・画面は、麻を織ったキャンバスを使用
・油絵具を使用

日本画は、鉱石を粉末にしたもので着色しているので、見る角度や光の当たり方で、絵の表面がザラっとしていたり、粒がキラキラと光るのがわかります。


日本画用絵具天然鉱石▲天然の鉱石の粉末を使います


着色で使う天然の鉱石は、孔雀石やアズライト、トルコ石、ラピスラズリ、金、プラチナなどで、まるで宝石店のようなラインナップ。

なので、日本画の絵具は実はとても高価なものです。日本画一枚を描くとそこに使われる絵具の値段は…とついつい下世話なことを考えてしまいます。

でも、このことを知ってから後藤純男美術館を見ると、彼の描く一枚一枚の絵のスケール感、迫力が、また違うものに見えるはずです。

 

後藤純男美術館の楽しみ方

1960年、30歳の頃から後藤純男は北海道各地を訪れます。北海道の大自然と雪への憧れがあったと言います。

そして1991年に、いま美術館がある場所にアトリエを構えます。このアトリエは、現在非公開ですが建物外観は見ることができます。

これがきっかけとなり、1997年9月に後藤純男美術館が開館。2002には新館が増築されました。


後藤純男美術エントランス看板


館内には、大和路、中国、ヨーロッパ、北海道などテーマ別に第1~第6展示室、素描展示室、資料館、ミュージアムショップ、レストランがあります。


普通、美術館に行くと「順路」があり、それに従って鑑賞するのが一般的なマナーですが、後藤純男美術館にはそれがありません。


後藤純男美術展示室の様子▲近くでじっくり見たり、ちょっと離れたり、角度を変えたり。1枚の絵も見方によって、表情が変わります


第1展示室から順番に見てもいいし、一通りざくっと見てから、気に入ったところに戻ってじっくり見るもよし。


後藤純男美術展示室▲後藤純男美術館は、フラッシュと三脚は禁止ですが、館内写真撮影OK。SNSでの拡散も増えているそうです


どの展示室にも、圧倒的な存在感とスケール感、そして美しい色で、「これは!」と目を奪われる絵が、必ずあるはずです。


後藤純男美術館の桜の絵


個人的な印象と感想ですが、私はヨーロッパの風景がテーマの第5展示室がとても気に入りました。


後藤純男美術館第5展示室▲第5展示室だけちょっと暗くて、展示室の雰囲気が他とは違います


大作が多い中、ここは小さな絵ばかりなのですが、照明の効果もあり、日本画で描くヨーロッパの風景は、どこか宗教的。

中国がテーマの第3展示室には、14mの大作「雲海黄山雨晴」が壁一面にあります。


後藤純男美術館第6展示室▲第6展示室。「十勝岳連峰」を見ていると、そこに吹く風や漂う空気、温度、匂いまで感じるような気がします


北海道がテーマの第6展示室には、約7mの「十勝岳連峰」があるのですが、それを見ていると、この展示室だけまるで、気温が下がったかのように感じました。


2016年に日本芸術院賞・恩賜賞を受賞した「大和の雪」▲2016年に日本芸術院賞・恩賜賞を受賞した「大和の雪」


日本画を描く時の画材を知っていると、それぞれの絵の質感や輝きが、とても気になってきます。

かなり近づいて見ることができる作品もあるので、角度や立ち位置を変えながら、いろいろ楽しんでみてください。

 

レストラン「ふらのグリル」で、
「ふらの和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」を堪能

後藤純男美術館のもう一つのお楽しみは、レストラン「ふらのグリル」での食事です。


レストラン「ふらのグリル」内観▲レストラン「ふらのグリル」


旬の地元素材をふんだんに使った料理を味わいながら、窓からは雄大な十勝岳連峰、その反対側はのどかな丘陵地帯を眺めることができます。


レストラン「ふらのグリル」から見える十勝岳連峰▲こちらからは十勝岳連峰を臨む


レストラン「ふらのグリル」から見える丘陵▲反対側は、のどかな丘陵地帯。どこに座るか迷う!


北海道Likersの一押しは、「ふらの和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」。希少なふらの和牛の、その中でもさらに希少な部位「ほほ肉」を、ホロホロになるまで煮込んた逸品。


後藤純男美術館レストランふらのグリルの「ふらの和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」▲フォークを刺した瞬間に肉がほどけ、ナイフで切るとはらはらと崩れるくらい煮込まれています。が、肉の味、噛んだ時の柔らかい歯応えもしっかりあり、おいしいため息しか出ません!


実はこの料理、テレビで全国各地をブラブラするあの人が、富良野取材の時に来店してオーダーし、「これは、おいしい!」と堪能したそうです。


後藤純男美術館レストランふらのグリルの「ふらの和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」セット▲スープは季節で変わりますが、取材時はパンプキンスープ。パンは、道産小麦を使用。付け合わせの野菜も、甘くておいしい


「ふらの和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」を食べてくれるかな?

「いいともー!」

…とは言ってはいませんが、誰もが満足すること間違いなし!

「ふらの和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」(税込2,450円)は数量限定なので、「絶対食べたい!」という時は、予約をしてから行くのがおすすめです。

 

北海道Likers命名「後藤純男シート」で、
彼の見た景色を見る

後藤純男もよくこのレストランを利用していたそうで、来店した時は必ず決まって同じ席に座ったそうです。
そして、いつまでも窓の外の景色、十勝岳連峰を眺めていたとか。


後藤純男シートから見える十勝岳連峰▲後藤純男シートから見える十勝岳連峰。季節や天候、時間で変わる風景は、一つとして同じものはありません


レストラン一番奥の4人掛けテーブルです。

北海道Likersはそこを勝手に「後藤純男シート」と名付けました。レストランに行って、そこが空席なら、ぜひ座って、後藤純男が見た景色を、実際に体感してみてください。

 

後藤純男美術館の存在意義。
それは、日本の文化である「日本画」を知り、伝える場所 

後藤純男美術館には、彼の絵を観賞し、レストランで上富良野のグルメを味わうという他にも、日本の文化である「日本画」を知り、広く伝える場という一面もあります。

一般的な日本画のイメージは、掛け軸の水墨画や美人画、お城や寺社仏閣の襖絵などでしょう。


後藤純男美術館資料室の画材、絵具▲2階の資料室には、日本画の画材が展示されています


そして、私たちが美術の時間に学習するのは、たいてい水彩画です。画材も、チューブに入った絵具と洋画用の筆。

日本画に触れるのは、教科書で見るか、このような美術館で鑑賞するくらい。まして、日本画を描くなんていうことは、ほとんどの人が未経験のはず。


後藤純男美術館資料室の画材、筆▲日本画用の筆


しかし、日本画とはどういうものなのか、どのように描かれるのか、画材はどんなものなのかなど、日本の伝統文化の一つとして、茶道、華道などのように、「日本画」も知っておくべきものなのではないか、と感じました。

今回、館内を案内してくれた後藤純男美術館営業部長の小野寿樹さんも
「当館を通じて、もっとたくさんの人に日本画を知ってもらい、理解を深めてもらうことも、当館の存在意義なのではないかと思っています」
と話してくれました。

 

首相官邸に貸し出していた作品11点を、
2年ぶりに展示

2016年から、首相官邸に作品11点を貸し出していましたが、それが2年ぶりに戻ってきました。

後藤純男の代表作の一つ「渡月橋」は、首相官邸エントランスに飾ってあったので、首相インタビューの時などに、よくテレビや新聞記事に写り込んでいたそうです。

その11点が、2018年12月20日から展示されます。

新雪に覆われた京都の渡月橋を描いた絵はファンも多く、2年ぶりの里帰りに「待ってました!」という人も多いとか。


後藤純男美術館エントランス▲吹き抜けで開放的なエントランスホール


後藤純男美術館ミュージアムショップ▲エントランスにあるミュージアムショップ。気に入った絵のポストカードなど、記念のお土産はここで


20代の頃の作品から絶筆まで、年代ごとの変遷や、描くテーマによる技法の違い、壁一面の大作からサラリと描いたスケッチ等々、隅から隅まで見どころ満載の美術館です。

このあたりには、道内でも人気の観光スポットが多いので「ちょっと、ついでに…」と立ち寄る人もいるかもしれませんが、一歩足を踏み入れたら「ついでに」なんて言っていられないくらいの奥深さなので、あっという間に時間が過ぎているはずです。

しっかり時間をとって、ゆっくりと鑑賞してほしい美術館です。

 

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