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公開 / 更新 | 立花実咲

北海道下川町の家具作家「森のキツネ」が作り修理する、世界で一つのオーダーメイド家具とは

北海道の中央あたりに位置する、旭川市。そこから車で北上すること約2時間。
 
たどり着くのは森に囲まれた下川町という町です。人口約3,300人のこの小さな地域には、新しいチャレンジの舞台を求めて集まってくる人々が少しずつ、増えています。


森のキツネ


家具作家の河野さんも、その一人。

埼玉出身で、2016年の秋に下川町へ移住し、下川町の一の橋という小さな集落に工房を構えてもの作りをしています。

河野さんの屋号である「森のキツネ」のとおり、工房には時折キツネがやってくるのだとか。


森のキツネ「森のキツネ」Instagramより。工房の裏で眠る子ギツネ


「動物と人間の世界の中間で生きるキツネのような存在でいたい」と語る河野さん。20代後半で家具職人を志し、北国の町にたどり着いたその背景と、もの作りへのこだわりとは?

 

出身地が分かる木材でもの作りがしたかった

家具作家になると決め、東京での仕事を辞めて北海道の職業訓練校へ入学した河野さん。

そこで出会った北海道の雄大な自然に触れ、その魅力にすっかり心を奪わてしまいました。

「北海道は想像以上に自然が近くて、本当に驚きました。毎日湖でカヌーに乗ったり森に入ったりするのが楽しくて。関東に戻るつもりでしたが、すごく居心地が良くて戻れなくなりました(笑)」





その後、会社や職人さんの元で修行を積み、家具作家として独立してからだんだんと「自分が暮らす町の森で伐ってきた木でもの作りがしたい」と思うようになったといいます。

野菜やお米と違って、今の日本の林業・林産業はどの地域のどの森の木材なのかが曖昧なまま市場に出されます。河野さんは、出身地が分かる木で活動ができる場所を探し始めました。そこで出会ったのが、下川町だったといいます。


▲下川町の手入れされた森林


「下川自体は大きな町ではないですが、森が町面積の9割を占めています。その森の中でも、クルミやカエデなど広葉樹と呼ばれる木材もたくさん生えていて。下川では広葉樹の製材から木材の乾燥まで一貫して町内で行うことができます。僕としては、木材がどうやって手元に届くかがクリアに感じられて、良いなって思ったんです」

60年以上、林業のトップランナーとして走ってきた下川だからこそ整っている、うってつけな環境。河野さんは、より森に近い場所でもの作りをするために、町内の中でも市街地からは外れた一の橋地区へ移り住みました。

 

モノが溢れる時代だからこそできること

河野さんが作っているのは、大きく分けてふたつ。カッティングボードやカトラリーなどのクラフト品と、スツールやテーブルなどの家具です。


森のキツネ▲カードスタンドになる「ぼくの家」。木の形によるのでどんな家ができるかは毎回違う


森のキツネ▲ハルニレでできたベンチ。サイズ:L 950mm × W 280mm × H 400mm 


森のキツネ▲こちらもハルニレでできたラウンドテーブル。サイズ:L 850mm × W 850mm × H 700mm 


特に家具は、どれも組み立て式というのが特徴。持ち運びができるように、宅配便の送料が割増にならないギリギリの大きさで、家具のサイズを決めています。

特に意識していたわけではないけれど、家具の使い方に対して、河野さんなりのある思いが表れた結果、組み立て式が多くなっていったといいます。


森のキツネ▲自分で組み立てができるように、どの家具にもL字のレンチがついている


「これからますますライフスタイルが多様になると思います。その中で、家具もそれぞれの暮らしに合わせて変化していけたらと思うんです。だから、僕の作る家具は組み立て式か、オーダーメイドがほとんどです」

今後は、天板や家具の足まで、好きな樹種を選べるようにしたいと河野さんは話します。

「高さや形だけではなくて、樹種も、お客様の好みに合わせてカスタマイズしていきたいんです。例えば、木目の粗さや色味の違い、触った時の温度も樹種によって違います。よく、木は温かみがあると言いますよね。でも触っていただくと分かりますが基本的に木って冷たいんですよ。冷たいけれど、人肌に近い質感を持つ樹種は触れたときに親近感を覚えて、温かみがあるように感じられるんです」


森のキツネ


お客様に合わせて、好みやこだわりをヒアリングする──それはとても手間がかかりますし、家具の価格も上がります。

けれど、誰でももの作りができる時代になり、技術が発達して製造スピードも効率が上がってゆく今、河野さんが自分だからできることを考えてたどり着いたのが、いまの家具作りでした。

 

お客様と一緒に家具を作る「家具乃診療所」

家具を選ぶお客様も決して受け身ではなく、自分で選ぶ意思や思いを重ねて作られる、河野さんの家具。
 
そうしたもの作りの思いを、よりいろいろな人に知ってもらい体感できるようにと、河野さんが暮らす一の橋地区で新しく「家具乃診療所」を立ち上げることにしました。


森のキツネ ▲「家具乃診療所」になる予定の空き家前で


「診療所というと、病気を治したり悪いところを治療するというイメージがあります。その役割の通り、傷ついた家具や壊れてしまった部分を治す場所として、『家具乃診療所』はあります。でも、目的はそれではなくて」

「家具乃診療所」予定地は、一の橋地区にある元診療所。空き家だった物件を買いとり、クラウドファンディングで資金を集め、改修してオープンを目指します。


▲クラウドファンディングは2018年10月15日から11月末まで挑戦中


「もともとお客様の話を聞くのが好きでした。話といっても家具のことだけではなくてお客様の好きなものとか今まで生きてきた過去の話とか、雑談何ですけど(笑)。でも話をする中で感じる、その人の雰囲気とか人柄に合わせた家具を作れたらおもしろそうだなとは、ずっと思っていたんです。

暮らしはもちろん、家具の好みもヒアリングして、その人オリジナルのカルテを作って家具を作れたら……という構想は今から4年ほど前、独立したばかりのころから考えていました。“診療所”というコンセプトは、そこから来ています」

このイメージをベースに「家具乃診療所」では

・暮らしや好みを診療し、カルテを作成
・採寸用の椅子を使って人間工学をベースにオーダーメイドの椅子を作る
・下川の森に生えているクルミで、家具のメンテナンスオイルを作る
・オーダーメイドの家具の作成、購入
・壊れた家具を治す

といったことができる場所になる予定です。


森のキツネ


中でも「壊れた家具を治す」のは、ただ傷を綺麗にしたりオイルを塗り直したりするのではありません。やはりここでも重要なのは、お客様の暮らしと声です。

「家具は、お客様の人生が刻まれたものだと思っています。この傷はあの時ついちゃったものだ、とか、このシミはあの頃のものだ、とか……。壊れたり傷ついたりするのは必ずしも悪いことではなくて、記憶みたいなものだと思うんですよね。だから、家具を修理するときも、何もかも綺麗にピカピカにせず、その人が残した傷やほころびをあえて残して、環境に合わせて少し手直しをしようと思っています」

家具は、生活の道具でありつつも、人となりや暮らしの機微の記憶。そういう思いがあるからこそ、河野さんはなるべくお客様と対面で、話をすることにこだわるのかもしれません。





「これから、モノはどんどん売れなくなっていくでしょう。僕は、一つのものを長く保持し続けるのが必ずしもベストだとは思いません。

『家具乃診療所』は、自分がどんなものを選んで、どうやって使っていくかを考えるための場所にしたい。お客様が自分で考えて選ぶ家具が、僕の作ったものかもしれないし、違うものかもしれないけれど、診療所自体がモノとの向き合い方を知れる場所になったらと思うんです」


森のキツネ


人間と森の中間地点で暮らす「森のキツネ」こと河野さん。木々の声を聞きながら生み出す家具は、これからどんな人の暮らしに寄り添っていくのでしょうか。

それから、もし「まだ使い続けたいけれど、引っ越すから捨てなくちゃ」という家具があったら、ぜひ「家具乃診療所」を思い出してください。

 “院長”の河野さんが、使い続ける方法と手直しの相談に乗ってくれるはずですよ。


森のキツネ

 

関連リンク

「森のキツネ」公式サイト
「森のキツネ」Facebookページ
「森のキツネ」Instagram 
 
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Writer

立花実咲

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