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公開 | 木村健太郎

上川から地方創生を!人と米と北海道を日本酒で結ぶ「上川大雪酒造」~北海道の酒蔵シリーズ(3)

北海道上川郡上川町に昨年誕生した地酒蔵をご存知ですか?上川町は札幌から北東へ約180㎞、北海道有数の観光地、層雲峡温泉や、スキージャンプ女子の高梨沙羅さんの出身地といえば分かる方もいるのでは?

今、人口約3700人の小さな町にできた「上川大雪酒造」が醸すお酒が急速に人気を高めているのです。
 
 
▲一見するとコテージのような日本酒蔵らしくないモダンな造りの緑丘蔵

 

清酒業界でも画期的な酒造免許移転で誕生

休業していた三重県の酒蔵から酒造免許を上川町に移転するという、清酒業界では前例のないウルトラCで誕生した上川大雪酒造。

蔵元となった塚原敏夫氏を中心に小樽や北海道出身つながりで出資企業が集まり、小樽市出身の名杜氏・川端慎治氏を迎え、「緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」が竣工したのは平成29(2017)年4月でした。
 
日本酒で上川、北海道を元気にするという「地方創生蔵」をコンセプトとし、同年5月18日、正式に旭川東税務署から「清酒及びリキュール製造場移転許可通知書」が出され、北海道12番目の蔵が誕生しました。
 
5月下旬からの試験醸造を経て、同年10月から1年目の醸造を開始しました。
 
醸すお酒は全量北海道産の酒造好適米を使用し、全量純米酒を造ること。すべての商品を純米酒にする蔵は当時は北海道初でした。
 
1年目は、役場の方や町民がボランティアで酒造りを手伝い、上川町総出で蔵を支援しました。そして誕生した「上川大雪」は北海道ではすぐに評判となり、飲食店などで高い人気を博しました。
 
 
▲ラベルのマークは、大雪山の「大」の文字、雪の結晶、アイヌ紋様をモチーフにしています
 
 
2年目の造りを迎え同蔵の川端慎治杜氏は「昨年度は色々なパターンを試して、『うちの蔵の味はこうだよ』というものを探りながらの造りでした。今期はそれを整理して、蔵の顔となる味を決めたいですね」と意気込みます。
 
食事とともに「飲まさる酒」を基本に、より洗練された味が期待できそうです!
 
 
▲蒸したお米に麹菌を振り掛ける川端杜氏。日本酒の味を決めるのに大切な作業となります(昨年の試験醸造から)
 
 
川端杜氏は石川、福岡、群馬、山形、岩手県など全国の酒蔵を渡り歩き酒造りの修業を続け、平成22(2010)年に樺戸(かばと)郡新十津川町の金滴酒造の杜氏となりました。平成23(2011)年度の全国新酒鑑評会では北海道産の酒造好適米「吟風」を使った大吟醸で金賞受賞の快挙を成し遂げました。
 
その後、1年半の充電期を経て、上川大雪酒造での名杜氏復帰は北海道の日本酒ファンや、飲食店が待ちに待ったものだったのです。
 
 
▲昨年度の仕込み風景。すべて大吟醸並みの小仕込みで繊細な造りを行っています(上川大雪酒造株式会社提供)

 

「原料以上のものは造れない」米にこだわる川端杜氏

川端杜氏のモットーは「日本酒は原料以上ものは造れない」ということ。日本酒の原料となるのは米と水。同蔵の仕込み水は、大雪山系の湧水が源流となる地下水です。北海道でも有数の名水であることは間違いありません。
 
 
▲美しい大雪連峰の山並み。雪解け水が気の遠くなる時間をかけて大地に磨かれながら、清冽な地下水となるのです
 
 
上川町の水は水源から生活排水が一切混ざらないため、水道水でも非常に美味です。川端杜氏も「やわらかくかつ適度に締まりのある味わい」と評価しています。
 
そして、杜氏が特にこだわりを見せるのが米です。酒造好適米に関しては自ら北海道中を回り、厳選した生産者が育てたものを使用しています。
 
 
▲砂川市の「きたしずく」圃場(ほじょう)を視察する川端杜氏
 
 
現在は、砂川市、愛別町、南幌町の生産者を中心とした北海道産の酒米、「彗星(すいせい)」、「吟風(ぎんぷう)」、「きたしずく」を使用しています。そこまで米にこだわるのは、北海道の酒米は作る土地はもちろん“人”によって味や質がまったく変わることを実感しているからです。
 
 
▲写真右の方が砂川の生産者・高橋宏吉さん。金滴時代から川端杜氏が信頼を置く生産者の方です。
 
 
良い酒米の条件のひとつに、玄米における蛋白の含有率が少ないことが挙げられます。蛋白が多いと雑味の原因になり、北海道の酒米は特に醸造時に溶けなくなるとのこと。
 
 
▲高橋さんが栽培する「きたしずく」。粒も大きく穂丈も長く、穂の色が白みを帯びているのが特徴
 
 
平成24年から酒米作りに取り組んでいる砂川市の高橋さんですが、「今年は厳しいですね」と話します。今年の北海道は6 、7月は低温と日照不足になり、逆に暑さの戻った8月は約3週間、雨が一滴も降らない状況が続きました。
 
 
▲今季は天候や天災のため米の生育が遅いらしく、川端杜氏も心配そうに確かめています
 

その低温のため「分けつ」(根元から茎が伸び枝分かれすること)が遅れ、茎の本数が少ないとのこと。そうすると、1本の茎が肥料を吸う量が多くなるため、蛋白が増えやすくなるとか。今年の道産米は全道的に蛋白が高いようです。
 
「30数年米作りをしていますが、過去最低かもしれない」と高橋さん。稲刈りも遅れ、上川大雪酒造の今年度の仕込みも10月5日から13日に伸びてしまいました。
 
 
▲愛別町の「彗星」の圃場です。生育の遅れを物語るように、青い穂も目立っていました
 
 
上川町の隣町、愛別町の農業組合法人「伏古生産組合」も同酒造の酒米を栽培しています。酒米の栽培は北海道初の酒造好適米「初雫(はつしずく)」が誕生し、平成8(1996)年から初雫の試験的な栽培を始めたのがきっかけです。
 
現在では27haの圃場で3種の酒米を栽培しています。愛別町にはかつて「大雪山酒造」という酒蔵があり、日本酒は身近な存在でした。上川大雪酒造の前から、北海道では栗山町の小林酒造に多くの酒米を提供しています。
 
 
▲川端杜氏と話す伏古生産組合の柴田隆さん。「食用米も酒米も丹精込めて育てるのは一緒」と話します
 
 
「自分たちの育てた米が毎年、酒になるのは楽しみですよ。その年によって米の出来も違うので、お酒の味も微妙に変わるのがわかります」と同組合の柴田隆組合長。
 
「一生懸命に米を作っている人の気持ちに応えたい。それでお互いにレベルアップできれば」と川端杜氏も話します。良い米を作り、良い酒を醸す相乗効果。酒蔵と生産農家が関係を密にすることで、上川大雪酒造を媒介として、生産農家のネットワークを北海道中に広げていくこと。これも地方創生という同蔵のコンセプトの一環です。

 

地域とともに成長する地方創生蔵

2年目の造りに入り、蔵も着々と規模を広げています。当初は醸造蔵のみでしたが、貯蔵庫も出来上がり、熟成することもできるようになりました。
 
 
▲貯蔵庫で出荷を待つ各種の「上川大雪」。熟成させると日本酒は美味しくなります


▲仕込みタンクも2本増え8本に。消費者の期待に応えるべく生産量も増やします
 
 
さらに、現在は直売店も建築中。お酒だけではなく、地域の特産品も発信できるショップにする計画です。
 
 
▲建築中の直売店。オープンは来年1月の予定です
 
 
▲蔵の2階のバルコニーからは、室内の仕込み風景が眺められるようになっています。
 
 
ただの清酒蔵ではなく、道の駅のように上川のため観光客を呼び込める施設を目指し、あくまで上川町と北海道という“足元”を大事にする同蔵らしく、上川町と愛別町限定のブランド「神川」は地元スーパーなどで町民や観光客に大人気です。
 
 
▲地域貢献酒として大人気の地元限定ブランド「神川」
 
 
「上川大雪」は北海道の特約店で購入できますが、同蔵HPのオンラインショップでも購入できます。現在はリニューアル中で11月中旬オープン予定です。

年末にかけては夏を越してまろやかになった純米大吟醸酒や、しぼりたての新酒が出てきます。2年目のお酒も楽しみですし、日本酒を通じた地域創生ビジネスが北海道とともに発展することを応援したいですね!

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