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公開 | 佐々木葉子

ブルーチーズを通して、旭川・江丹別を世界一の村に。「伊勢ファーム」

チーズ職人と呼ばれることを拒み、「ブルーチーズドリーマー」と名乗る伊勢昇平さん。
ブルーチーズを通して、生まれ育った江丹別を世界一の村にするという夢があります。

この土地に根差したものづくりと、ものに託したこの土地だけの物語を聞きました。
 

alt、▲父と兄が営む牧場を背に。ブルーチーズ柄のウィンドブレーカーは、伊勢さんのトレードマーク▲父と兄が営む牧場を背に。ブルーチーズ柄のウィンドブレーカーは、伊勢さんのトレードマーク
 

alt、▲伊勢さんが造るブルーチーズはこの3種類。右から「江丹別の青いチーズ」、「江丹別の青いチーズ」をアレンジ熟成した「旭川」(中)、「江丹別の青いチーズ ふらのワイン熟成」(左)▲伊勢さんが造るブルーチーズはこの3種類。右から「江丹別の青いチーズ」、「江丹別の青いチーズ」をアレンジ熟成した「旭川」(中)、「江丹別の青いチーズ ふらのワイン熟成」(左)

 

「江丹別の青いチーズ」の栄光・挫折・復活

旭川の江丹別に、おいしいブルーチーズがある。こんな噂が一気に広まったのは、2012年のことでした。

その名は「江丹別の青いチーズ」。造り手は、伊勢ファームの伊勢昇平さんです。

父と兄が経営する牧場の牛から搾った生乳のみを用いて、フランスで得た技術で製造。臭みがなく、濃厚で芳醇なコクと甘みのブルーチーズは、一躍脚光を浴びました。
 

alt、▲ブルーチーズを造り始めてすぐブレイクした頃を、「あれはビギナーズラックでした」と振り返る伊勢さん▲ブルーチーズを造り始めてすぐブレイクした頃を、「あれはビギナーズラックでした」と振り返る伊勢さん


「それが1年ほどたつと、菌が中に入らなくなり、途方にくれました」。何度試してもうまくいかず、二度目の渡仏。帰国後、見学した通りに造ってもうまくいきませんでした。

それでもブルーチーズをあきらめきれなかった伊勢さん。2015年にまたもやフランスに渡り、約9ヵ月間の修業を経て、対策方法を修得。帰国後、製造を再開し、復活を遂げることができました。
 

alt、▲「あいつのチーズはもうだめだと、信頼を完全に失った時期もありました」と苦笑する伊勢さん▲「あいつのチーズはもうだめだと、信頼を完全に失った時期もありました」と苦笑する伊勢さん


逆境を支えたのは、大学卒業後に修業した「共働学舎新得農場」での「その土地でしかできないものがある」という教えでした。

独立するにあたり、江丹別でしか造れない1種類のチーズを極めようと決めた伊勢さん。江丹別と気候が近い場所を調べ、フランスのオーベルニュ地方を突き止めます。すると偶然にも、その一帯にはブルーチーズの産地が集中していました。

「現地に行ってみると、牛の飼い方から風土まで、想像以上に江丹別に似ていました。これなら間違いないと、ブルーチーズ一本でいくことを決めたんです」。

チーズは、その土地がどんな土地かを想像できる農作物。伊勢さんが語るこの信念は今も変わらず、チーズ造りの基礎となっています。
 

alt、▲「江丹別の青いチーズ」は100g840円。伊勢ファームの直売ショップ、旭川空港、新千歳空港、一部のチーズ専門店で販売▲「江丹別の青いチーズ」は100g840円。伊勢ファームの直売ショップ、旭川空港、新千歳空港、一部のチーズ専門店で販売

 

「江丹別の青いチーズ」から生まれた、2つのチーズ

渡仏3度目の2015年。フランスでは、チーズの熟成に工夫を凝らすアレンジ熟成が流行し始めていて、その花形はブルーチーズでした。

「江丹別でしかできない、ブルーチーズのアレンジ熟成をやってみよう」と思い立った伊勢さん。まっさきに頭に浮かんだ素材は、大雪山の雪清水でこだわりの酒を育む創業百余年の酒蔵、高砂酒造の酒粕でした。
 

alt、▲大小130もの川が流れる旭川。水資源が豊富なこともあり、酒造りが盛んだ▲大小130もの川が流れる旭川。水資源が豊富なこともあり、酒造りが盛んだ


伊勢さんは、「江丹別の青いチーズ」を道産酒の酒粕で覆い、低温で3~4週間熟成させたチーズを試作。運命的といえるほど、初回で上出来に仕上がったこのチーズは「旭川」と名付けられました。

現在、「旭川」は、「このチーズを食べながら、旭川に思いを巡らせてほしい」という気持ちから、旭川市のふるさと納税の返礼品としてのみ、出荷しています。
 

alt、▲「旭川」は、吟醸酒のようなフルーティーな香りと深い甘みが特徴▲「旭川」は、吟醸酒のようなフルーティーな香りと深い甘みが特徴


伊勢さんにはもうひとつ、チャレンジしたいことがありました。本場フランスで、最も盛んに行われていた赤ワインを使ったアレンジ熟成です。

選んだ赤ワインは、旭川から車で1時間ほどの富良野市にある「ふらのワイン」が造る「羆の晩酌(ひぐまのばんしゃく)」。

「子どもの頃、家族で江丹別の山でヤマブドウをとっては、ジュースにしていました。「羆の晩酌」を飲んだ時、その味がフラッシュバックして、すぐにこれを使おうと決めました」。

「旭川」同様、このワインで「江丹別の青いチーズ」を覆い、さらに熟成させて造ったチーズが、「江丹別の青いチーズ ふらのワイン熟成」です。

「このチーズは、100g2,138円。おそらく、日本で一番値段が高いと思います」と伊勢さん。「大切に扱い、扱われたい」という想いがあっての設定だそうです。
 

alt、▲「江丹別の青いチーズ ふらのワイン熟成」は、オンラインショップのみで販売▲「江丹別の青いチーズ ふらのワイン熟成」は、オンラインショップのみで販売

 

5W1Hを語れるロマネコンティが模範

「江丹別を世界一の村にするには、僕のチーズが世界一と認められることが絶対条件。
じゃ、チーズの世界一ってどう定義するんだ?と。5W1Hをはっきりさせることじゃないかと、僕は思うんです」。伊勢さん、語り口に熱が帯びてきました。
 

alt、▲オリジナルTシャツでも、ブルーチーズドリーマーをアピール▲オリジナルTシャツでも、ブルーチーズドリーマーをアピール


「いつ(When)」、「どこで(Where)」、「だれが(Who)」、「なにを(What)」、「なぜ(Why)」、「どのように(How)」を明解に言い切れるチーズは、果たしてあるのか? その視点で日本そして世界のチーズを見直した時、伊勢さんは「Who」が弱いと気付きます。

「職人は黙々と造っていればいいという考え方、僕はどうかなと思います。人は頑張ってる人を見たら、応援したくなりますよね。コイツがここまで熱く語るなら、応援してやるか。1個2,000円は高いけど、買ってやるかと。そういうコミュニケーションって、どこの世界でも大事じゃないですか」。
 

alt、▲チーズのパッケージには、製造者として伊勢さんの名前が記載されています▲チーズのパッケージには、製造者として伊勢さんの名前が記載されています


5W1Hのすべてに付加価値をつける。そうしないと、ヨーロッパのチーズには勝てない。世界一のチーズにはなれない。これでは、伊勢さんの夢はかなわないのです。

伊勢さんが模範とするのは、希少性が非常に高く、世界一高値で取引されると囁かれるフランスブルゴーニュ産赤ワイン、ロマネコンティ。5W1Hがよく整理されているとして、こう続けます。

「ロマネコンティは、ピノノワールを使い、ヴォーヌロマネ村で造られています。生みの親は、この村出身の故アンリ・ジャイエ。彼はもともとはブドウの生産者でしたが、不況のあおりを受け、ワイン造りを始めます。数多くのライバルがいる中で勝ち残るには、本当に質の良いワインを造るしかないと考えた彼は、周囲が常識とする造り方を拒み、生涯を通して独自のワイン造りを極めました」。


alt、▲伊勢さんが暮らす江丹別は、旭川市の小さな集落。その昔、学校の同級生に出身地をからかわれた経験があるそうです。江丹別が世界一の村になれば、その時の悔しさもすっかり消えるでしょう▲伊勢さんが暮らす江丹別は、旭川市の小さな集落。その昔、学校の同級生に出身地をからかわれた経験があるそうです。江丹別が世界一の村になれば、その時の悔しさもすっかり消えるでしょう


「良いチーズを造るのは当たり前。伊勢昇平が造っていることが見えるチーズを造りたい。フランスでも職人の名前が前面に出ているチーズはありませんから、ここで一歩リードしたい」。伊勢さんの熱意がひしひしと伝わってきます。

がんばれ!ブルーチーズドリーマー。たくさんの声援が、江丹別に届きますように。
 

alt、▲牧場のそばに立つ直売ショップ。「江丹別の青いチーズ」と、父の代から提供しているソフトクリームを販売しています▲牧場のそばに立つ直売ショップ。「江丹別の青いチーズ」と、父の代から提供しているソフトクリームを販売しています

 

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