北海道情報サイト「北海道ライカーズ」北海道情報サイト「北海道ライカーズ」

what likers

Icon search探す

公開 | 佐々木葉子

旭川のマチナカで日本人に食べやすいチーズを造る。「ジャパチーズ」

日本人に食べやすいチーズ、日本の食卓としっくり合うチーズを造りたい。
だから、ブランド名はジャパン+チーズで「ジャパチーズ」。

旭川の買物公園で、工房兼ショップを営むチーズ職人、長尾英次さんに会ってきました。

 
alt、▲お店の前で、ハイ、チーズ!の長尾英次さんと奥様の絵里子さん▲お店の前で、ハイ、チーズ!の長尾英次さんと奥様の絵里子さん

 

目指す姿は、「マチのお豆腐屋さん」

「ジャパチーズ」の店先に並ぶのは、店の奥の工房でこしらえた造りたてのチーズ。

ご近所のおばあちゃんや会社帰りのママやパパが慣れた感じで入ってきて、
「これはどう食べるの」「今日はどれにしようかな」とおしゃべりしながら買い物していきます。

「目指す姿は、昔よくあったマチのお豆腐屋さん」との言葉通り、ここには買物公園が人情商店街のように見えてくる、のどかな時間が流れています。


 alt、 ▲店内の冷蔵ケースには、できたてのナチュラルチーズがいっぱい▲店内の冷蔵ケースには、できたてのナチュラルチーズがいっぱい


 alt、 ▲店頭のカウンターには、初めてのお客様でも気兼ねなく試食できるようにと、こんな気配りも▲店頭のカウンターには、初めてのお客様でも気兼ねなく試食できるようにと、こんな気配りも


長尾さんは、宮城県蔵王町で酪農業を営む三世代目の二男。兄と同じく、酪農学園の高校、大学で酪農を学び、卒業後は米国ウィスコンシン州で酪農実習を経験しました。

その後、蔵王酪農センターに勤務すること18年。製造部門に軸足を置きながら、商品開発や技術指導なども担当。ものづくりの腕前は、オール・ジャパン・ナチュラルチーズコンテストで最高位の賞を受賞するなど、誰もが認めるところです。

さっそく、工房でモッツァレラチーズ造りに格闘中の長尾さんにお話を聞いてみました。

 

自問自答を繰り返し、悲喜こもごものチーズ造り

「モッツァレラは一日で仕上がるので、苦労なく造れると思われているんですが、全然そうじゃない。発酵のタイミング一つとっても毎回違って、ああ、日々研究、一生研究だなと(笑)」。

おもしろおかしく話す長尾さんですが、手元を見る目は真剣です。


alt、▲モッツァレラチーズの素・カード(殺菌した牛乳を発酵させ、固めたもの)。「チーズをはじめ、発酵食品は作り始めたらやり直しがきかないんですよね」と長尾さん。失敗しても後から調整すればいいという、安易な考えは通用しないのです▲モッツァレラチーズの素・カード(殺菌した牛乳を発酵させ、固めたもの)。「チーズをはじめ、発酵食品は作り始めたらやり直しがきかないんですよね」と長尾さん。失敗しても後から調整すればいいという、安易な考えは通用しないのです


 alt、▲手でカードを練って、粒をつぶして、なめらかにする行程。長尾さんは、手の感触で塩梅をつかんでいるようです▲手でカードを練って、粒をつぶして、なめらかにする行程。長尾さんは、手の感触で塩梅をつかんでいるようです


alt、▲お餅のように粘るチーズをちぎって丸めて、冷水に。「流通にのせるか、できたてを店で販売するかで、造り方も微妙に違ってくるんですよ」と長尾さん▲お餅のように粘るチーズをちぎって丸めて、冷水に。「流通にのせるか、できたてを店で販売するかで、造り方も微妙に違ってくるんですよ」と長尾さん


せっかくですからと、チェダーチーズを用いた「さけるチーズ」造りも見せてくれました。

実は、工房の様子は買い物に来たお客様からも見えるガラス張り。

「旭山動物園の行動展示にヒントをもらって、こうしたんです。見られているという緊張感があってもいいかなって」。

長尾さん、なかなか愉快です!


 alt、▲カードを伸ばしながら、「ちょっと水分が多いかな、どうかな」と、自問自答が続いています▲カードを伸ばしながら、「ちょっと水分が多いかな、どうかな」と、自問自答が続いています


alt、▲「このピーンと張った感じ、これが大事。あと、光沢があって、しかも表面にボコボコがなければ問題なし。うん、これでいい」。長尾さん、納得がいったようです。▲「このピーンと張った感じ、これが大事。あと、光沢があって、しかも表面にボコボコがなければ問題なし。うん、これでいい」。長尾さん、納得がいったようです。


念には念を入れて造る「ジャパチーズ」の「さけるチーズ」。冷蔵ケースに並んでいるものを、味見させていただきました。さけるチーズは、途中で切れてしまい、残念な気持ちになることもありますね。でも、「ジャパチーズ」の「さけるチーズ」は、糸のような繊維が束になってスムーズにさけていきます。


alt、▲口に含むと、クセのない自然な味が広がる、ジャパチーズの「さけるチーズ」。ちょっとおなかが空いた時のおやつ、お酒のおつまみに、ぴったりのサイズです▲口に含むと、クセのない自然な味が広がる、「ジャパチーズ」の「さけるチーズ」。ちょっとおなかが空いた時のおやつ、お酒のおつまみに、ぴったりのサイズです


長尾さんの自問自答や悲喜こもごもとともに生まれる「ジャパチーズ」のチーズ。どれも風味がフレッシュで食べやすいと評判です。


alt、▲右から「トマトモッツァレラチーズ」100g756円、「さけるチーズ」50g378円、「チェダーチーズ」100g540円▲右から「トマトモッツァレラチーズ」100g756円、「さけるチーズ」50g378円、「チェダーチーズ」100g540円

 

旭川が大嫌いから、大好きに

長尾さんが「ジャパチーズ」をオープンしたのは2015年。2011年の東日本大震災がターニングポイントになりました。

「妻が故郷の旭川で次男を出産したのが、2011年2月27日。僕も旭川で家族と過ごし、宮城に帰宅した週末に発災し、福島第一原子力発電所の事故も起こりました。自宅のある地域も低線量の放射線が検出され、公共施設などが除染対象地域に。このため、妻と子どもたちは旭川に留まり、僕は自宅で単身赴任生活を送ることになりました」
 

alt、▲どんな質問にも丁寧に、相手に伝わっているかどうかを確かめながら語る長尾さん。お店の前の買物公園のテラスで▲どんな質問にも丁寧に、相手に伝わっているかどうかを確かめながら語る長尾さん。お店の前の買物公園のテラスで


かわいい子どもたちに会えない寂しさを紛らわそうと、ひたすら仕事に没頭した長尾さん。それでも生活と精神は乱れ、心配した奥様から「旭川で暮らそう」と言われても、移住することはチーズ造りをあきらめることになる、宮城の復興を目指して懸命に働く同僚を裏切ることになるとの思いから、3年間悩み続けたそうです。


「家族と一緒に暮らそうと決心し、旭川に移住してから起業、開業までは、商工会議所、旭川信金、デザイン会社、旭川産業創造プラザなど、本当に多くの方にお世話になりました。また、町内の方々からも情報をいただいたり、ある時は子どもの面倒を見てもらったり。今もとても良くしてもらっています」

長尾さんのチーズには、季節などによる品質のばらつきがほとんどなくバランスが良い、旭川・加藤牧場の生乳を使っています。生乳の流通は特殊で、特定の牧場の生乳を仕入れることは難しいのですが、加藤さん、行政やJAなどの応援があって叶えることができました。


alt、▲店内の壁やラックには、旭川の知り合いのショップのカードや地元の情報誌などがいっぱい。ちなみに「ジャパチーズ」の書はお子さんの作▲店内の壁やラックには、旭川の知り合いのショップのカードや地元の情報誌などがいっぱい。ちなみに「ジャパチーズ」の書はお子さんの作


「妻が旭川から帰って来なかった3年間、僕は旭川が大嫌いになっていました。そんなに旭川がいいのかと。でも、自分が住んでみたら、その良さがわかりました。いまは大が付くほど好きです。ほんとうに人がいいんです(笑)」

事業より先に、旭川市民として生きることを前提に、ここに根を下ろして4年。道行く人と「こんにちは」「元気ですか」と挨拶を交わす長尾さんの姿からも、「マチの豆腐屋さん」に近づいていることが感じられました。


alt、▲奥様手作りのファサード。素朴で優しい雰囲気も「ジャパチーズ」の魅力です▲奥様手作りのファサード。素朴で優しい雰囲気も「ジャパチーズ」の魅力です

 

 関連リンク

ジャパチーズ
ジャパチーズFacebook
この記事をSNSでシェアしよう!
  • 旭川のマチナカで日本人に食べやすいチーズを造る。「ジャパチーズ」
  • Google+
Title
Close