北海道情報サイト「北海道ライカーズ」北海道情報サイト「北海道ライカーズ」

what likers

Icon search探す

公開 | チバタカコ

小樽の地酒「宝川」~北海道の酒蔵シリーズ(2)

小樽田中酒造

 
最盛期には50軒もの造り酒屋があったという小樽で、いま、唯一残っているのが小樽の地酒「宝川」を造っている曲イ(カネイ)田中酒造株式会社です。
原材料は道産のみ、そしてオール純米酒に徹底してこだわっている田中酒造をたずねました。

 

目次

・創業明治32年、小樽の地酒「宝川」
・田中酒造の酒造りの3つの特徴
・田中酒造4代目は、北海道酒造組合会長
・杜氏がこだわる「飲みやすい酒」
・小樽市内にある2つの店舗
・専門知識が豊富なスタッフたち
・小樽の地酒「宝川」が飲める、おすすめ3店

 
 

創業明治32年、小樽の地酒「宝川」

札幌からJR快速エアポートで乗車約32分の小樽は、道内屈指の人気スポット。
 
北のウォール街と呼ばれた頃の歴史的建造物やガス灯ともる小樽運河、北一硝子をはじめとするガラス工芸、新鮮な海の幸が味わえる寿司など、道内外、海外からもたくさんの観光客が訪れています。
 
その小樽で、1899(明治32)年創業から119年続く酒蔵が田中酒造です。
 

小樽田中酒造本店外観▲田中酒造本店
 

創業地(小樽市色内町)には、今も本店が店を構えています。現在の建物は、1927(昭和2)年に建てられた木造2階建てで、小樽市の「歴史的建造物」に指定されています。

 
小樽田中酒造本店に掲げられている、創業当時の店の看板▲本店に掲げられている、創業当時の店の看板

 
小樽田中酒造明治以来の「宝川」の大看板▲明治以来の「宝川」の大看板
 

田中酒造の代表銘柄が「宝川(たからがわ)」です。北海道の人なら旧漢字を使った「寶川」も馴染み深いかもしれません。
 

小樽田中酒造曲イ(カネイ)は、田中酒造の屋号▲曲イ(カネイ)は、田中酒造の屋号。今でも「カネイさん」と呼ぶ人がいるくらい、小樽に根付いた酒蔵です
 

「宝」の意味は、「宝物のような酒」「宝をたくさん造った」という強い意味が込められているそうです。そして当初は「宝水(たからみず)」としたかったそうですが、「それじゃ、なんだか水っぽいんでないかい?」ということから「宝川」となったとか。
  
 

田中酒造の酒造りの3つの特徴

田中酒造の酒造りの大きな特徴は3つ。
 
①原材料は全て北海道産

②造る酒は全て純米酒

③1年を通じて仕込む「四季醸造」

 
いま、道内の酒蔵では、道産の酒造好適米(※1)を積極的に採用するところが増えていますが、田中酒造では、道産酒造好適米が誕生した1998(平成10)年から「道産米しか使わない」と宣言。
 
以来、ニセコ、音更、古平、厚真などの産地で栽培している「彗星」という酒造好適米を主に採用しています。
 
仕込み水は、小樽の奥沢水源地から流れる勝納川(かつないがわ)の伏流水。酒造りをしている亀甲蔵の地下75mから汲み上げています。
 

小樽田中酒造亀甲蔵にある仕込水▲田中酒造亀甲蔵では、仕込み水をその場で飲んだり、汲んで持ち帰ることもできます
※冬期間は閉鎖
 

日本酒は大きく分けると、米・米麹で造る「純米酒」と、米・米麹・醸造アルコール等で造る純米以外の酒の2種類があります。
 
そして、「純米酒」の中には、製造方法などの違い(※2)によって「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「特別純米酒」などの種類があります。
 
田中酒造が道産酒造好適米と勝納川の伏流水で仕込む酒は、全て純米酒です。
 

小樽田中酒造亀甲蔵の酒タンク▲亀甲蔵の仕込み酒タンク。年中酒造りができるので、大量のタンクは必要ありません

 
酒蔵では冬に仕込み作業を行う「寒造り」が一般的ですが、田中酒造では一年を通じて仕込む「四季醸造」を行っています。
これは、小さな造り酒屋では全国的にもかなり珍しい製造場だそうです。
 
杜氏の高野篤生さんが、通年仕込みのメリットを、次のように話してくれました。
 
「一年中造っているのでブランクがなく、常に酒について考えることができます。気になることがあれば、すぐに改善できる。そして、毎日手入れをするので衛生面でも大きなメリットがあります」。

 

田中酒造4代目は、北海道酒造組合会長でもある

2019年に創業120年を迎える田中酒造の4代目、田中一良さんに話をうかがいました。

 
小樽田中酒造4代目、田中一良さん▲田中酒造4代目、田中一良さん。1988年(昭和63年)、田中酒造株式会社代表取締役に就任。父親が体調を崩したことから勤めていた銀行を辞めて家業を継いだ
 

「私が家業を継いだ頃は、まだ良質な道産酒米がなくて、まずは道産酒米の品質を上げることが、道産酒の質を上げることだと考えました。そこで、道産酒造好適米をつくる活動をして、20年前に道産酒造好適米ができてから、米も水も造り手もオール北海道で酒造りをはじめました」。
 
「その時に、酒を大量に作るのではなく、少量生産で品質を上げることを選択しました」。

 
小樽田中酒造4代目、代表取締役社長田中一良さん▲「これぞ『This is the北海道の酒』に取り組んできたので、道産酒のレベルを上げてきたという自負がある」と田中社長
 

「ちょうど小樽は観光ブームを迎えた頃で、日本酒を飲む、買うお客様は誰だ?と考えた時、小樽は『観光客』だと思い、地域の特産物としての『北海道の酒』と『小樽の地酒』という観光土産市場を確立しようと思いました」。
 
「私が社長に就任した頃と小樽観光興隆期が重なったのはラッキーだった」と田中社長は言います。しかし、そのラッキーを上手に使いこなせたのは決して運だけではなく、「北海道の日本酒の質を上げたい」という確固たる想いがあったからこそ。

 
小樽田中酒造亀甲蔵ショップのディスプレイ

 
酒を全て道産原料、純米酒にしたのは、なぜ?
 
「酒は、米生産者、造り手など、地域の総合力がなければ良いものができません。オール北海道産で取り組むことで地域貢献にもつながります」。
 
「酒造好適米には『山田錦』という全国的に有名な優れた米があります。道産酒造好適米は、比べるとまだ少し届かないかもしれないし、品評会などでもハンデなのかもしれない。しかし、それでも道産原料だけを使ってチャレンジすることに、酒造りの楽しみや醍醐味があると思うんです」。
 
「投資家なら『やめろ』と反対するところなのでしょうが、私と杜氏の考え方、方向性が一緒なのでぶれることはありません。純米酒、純米吟醸、純米大吟醸を、日本のどの地域の酒にも負けないものにしたいという目標があります。これは、一生かかってもたどり着けないかもしれませんが(笑)」。

 
小樽田中酒造4代目、代表取締役社長田中一良さん▲田中社長が好きな酒の肴は「冷奴」。「納豆に大根おろしとか梅干しとか、シンプルなものが日本酒に合うと思います」

 
北海道酒造組合会長として、道産酒とは?
 
「道内の酒蔵は、時代は量ではなく質で勝負だということを理解していて、皆で同じ方向を向いて品質向上に努めています。
道産のものでどれだけいいものが造れるか、消費者に理解していただき買ってもらえるのかということに、切磋琢磨しながら取り組んでいます」。
 
「いま、業界全体が国際化を見据えています。そのためにも高い品質が成功のカギ。国際的評価の高い酒を造る地域が北海道であるということをアピールするためにも、正しい情報を伝え、ファンを増やしていかなければと思っています」。

 

酒があまり得意でないからこそわかる「飲みやすい酒」

田中酒造の酒の味を決定し、管理しているのが杜氏の高野篤生さんです。
 

小樽田中酒造杜氏の高野篤生さん▲杜氏の高野篤生さん

 
東京で発酵分野の技術者をしていた高野さんが、田中酒造に入社したのは今から20年前。

ちょうど田中酒造が道産酒造好適米に全てを切り替える頃と重なり、「北海道の酒なのに、本州産の米を使うのは何か変じゃないか?」と思っていた高野さんにとって、原材料が全て道産という酒造りは、とてもしっくりくるものだったそうです。
 

櫂入れ(タンクをかき混ぜる)をする高野さん▲櫂入れ(タンクをかき混ぜる)をする高野さん
 

高野さんが造る酒は「とにかく飲みやすい酒」。
 
自身があまり酒は得意ではないそうで、「初めての人でもサラリと飲めるクセのない酒、それが飲みやすい酒だと思う」と語ってくれました。
 
 
小樽田中酒造杜氏の高野さん▲「観光客が試飲をした時に、『飲みやすい』と思ってもらえる酒を目指している」と高野さん。
 

高野さんの目下の目標は、「道産米で造る純米大吟醸の品質を、どこまで上げられるのか」ということ。
いつでも酒のことを考えて、日々改良ができるという通年仕込みのメリットを活かして、飲みやすい「This is the北海道の酒 宝川」の追求は続きます。

 

亀甲蔵で酒造り見学、インスタ映えする歴史的建造物

田中酒造は小樽市内に2つの店舗があります。
 
・田中酒造 亀甲蔵(きっこうぐら)
亀甲蔵は、車で札幌から小樽へ向かうと、札樽自動車道を降りてから小樽運河に向かってちょっと走ると、すぐ左側にあります。
JR南小樽駅からは、徒歩約5分。
 
「宝川」をはじめ、田中酒造の酒は全てこの蔵で造られています。
 

小樽田中酒造亀甲蔵▲田中酒造亀甲蔵。セブンイレブンが隣接しており、駐車場も広いので立ち寄りやすい
 

建物は、明治38~39年につくられた1~3号棟からなる木骨石造1階一部2階建の旧岡崎倉庫群で、小樽市の「歴史的建造物」に指定されています。
 

小樽田中酒造亀甲蔵▲建築好きな人には特におすすめ!外観だけではなく、内観も味があります
 

小樽田中酒造亀甲蔵の酒造り見学▲亀甲蔵では、ガラス越しに酒造りを見学することができます
 
 
小樽田中酒造亀甲蔵のショップ▲ショップでは田中酒造の酒を購入したり、試飲コーナーも
 

小樽田中酒造亀甲蔵にある酒▲代表銘柄「宝川」の他、季節限定酒など、ラインナップが並びます

 
小樽田中酒造亀甲蔵限定販売の純米吟醸原酒▲亀甲蔵限定販売の純米吟醸原酒

 
ここでしか販売していない純米吟醸原酒「亀甲蔵」は、通販もなく、本店でも取り扱いはありません。

せっかく行ったのなら、後から「買っておけばよかった…」と後悔しないように。
 
 
小樽田中酒造亀甲蔵試飲コーナー▲北海道Likers編集長、試飲中(取材です、取材)。純米大吟醸「宝川」(ニセコ産彗星使用)は、口に含むと品の良い、花のような香りがすっと鼻に抜け、のど越しもすっきり。なんて上品な味!
 
 
・田中酒造本店
本店は、亀甲蔵から車で小樽運河に沿って余市方面に向かい、左カーブを曲がって、一つ目の信号を右折するとすぐです。
JR小樽駅からは、徒歩約10分。
 
本店は、商品の購入と試飲ができるのですが、ここの試飲室が渋い!
 

小樽田中酒造田中酒造本店▲田中酒造本店
 

昔の事務室が試飲室になっており、レトロでノスタルジックな佇まいは、タイムスリップしたような感じがします。

 
小樽田中酒造本店の試飲室▲本店の試飲室
 

小樽田中酒造本店店内▲さすが老舗!創業時からの古い看板がいくつも掲げられています
 
 
どちらの店舗も試飲ができますが、車や自転車を運転する人、20歳未満の人は、絶対飲んではいけません!
 
 

専門知識が豊富なスタッフたち

老舗の酒蔵というと、年配の職人肌のおじさんがいるのでは…とイメージしていましたが、亀甲蔵も本店も、行って気づいたのは女性スタッフが多いということ。
 

小樽田中酒造本店のスタッフ▲本店のスタッフ。皆さん、笑顔で出迎えてくれます

 
田中酒造には、杜氏、酒造技能士、きき酒師など専門知識を持った有資格者が多くいるので、尋ねるといろいろなことを教えてくれます。

 
小樽田中酒造道産もち米を使った本みりん「魔法の一滴」▲道産もち米を使った「魔法の一滴 本みりん」(アルコール13%)
 

日本酒以外にも、いまイチオシなのが「魔法の一滴 本みりん」。総務企画部の小野春菜さんによると、料理に使うのはもちろんですが、ソーダで割ったり、アイスクリームにかけるのもおすすめだそうです。

 

小樽の地酒「宝川」が飲める、おすすめ3店

小樽の地酒「宝川」は、ぜひ、地元小樽で飲みたいものです。そこで、小樽で「宝川」が飲める2店、そして札幌で飲める1店を紹介します。
 
おたる政寿司 本店
小樽と言えば寿司!昭和13年創業、小樽を代表する寿司屋が「政寿司」です。握りはもちろん、一品料理も種類が豊富。政寿司で握りをつまみながら、「宝川」を飲む…小樽満喫間違いなし!


小樽政寿司本店※提供写真(政寿司)


小樽市花園1丁目1-1(寿司屋通り)
TEL:0134-23-0011
営業時間:     
11:00~15:00(14:30 L/O) 
17:00~21:30(21:00 L/O)
定休日:毎週水曜日、元旦
※祝祭日、行事などにより変動する場合もあります。

 

味処かまわぬ
北海道の食材にこだわった料理が自慢の店なので、道産米の「宝川」と相性が悪いはずがない!店主の実家が陶器屋なので、器にも注目してください。

 
小樽味処かまわぬ※提供写真(味処かまわぬ)


小樽市花園1丁目6-4 嵐山ビル2F
TEL:0134-24-3232
営業時間:17:30~22:30(L/O)
定休日:日曜日

 

北海道海鮮和食と道産酒 海空のハル
札幌で「宝川」を飲むなら、北海道Likersでも紹介した「海空のハル」。アイヌ文化、北海道の料理、北海道の地酒が楽しめます。店内の個室は北海道の酒蔵がテーマで、それぞれ地酒の名前がついているので、ここで「宝川」を飲むなら「宝川」の個室を予約してみては?


北海道海鮮和食と道産酒 海空のハル
 
 
札幌市中央区南3条西4丁目 J-BOXビル5F
TEL:011-231-6868
営業時間:月~土、祝日、祝前日: 17:00~23:30 (料理L.O. 22:45 ドリンクL.O. 23:00)
定休日:日曜日
※月曜日祝日の際は日曜日は休まず営業し、月曜日は代休
 
 
田中酒造の酒が購入できるのは、基本的には小樽の亀甲蔵か本店です。「荷物になるから、帰りに新千歳空港で買おう」と思っても、取り扱いがないので、小樽へ行ったら、見逃さないでくださいね。
 
取り寄せる場合は、亀甲蔵や本店限定酒以外は、公式HPのオンラインショップで購入可能です。
 
サラリと飲みやすい小樽の地酒、これからの季節は鍋に合いますよ!
 
 
※1:「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」とは、「酒米」とも呼ばれる酒造りに適した米のこと。
※2:国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要
 
 

関連リンク

田中酒造株式会社
田中酒造オンラインショップ
北海道酒造組合
この記事をSNSでシェアしよう!
  • 小樽の地酒「宝川」~北海道の酒蔵シリーズ(2)
Title
Close