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公開 | 佐々木葉子

この秋、公開!函館でなければ撮れなかった青春映画『きみの鳥はうたえる』

alt、▲提供写真:(C)HAKODATE CINEMA IRIS ▲提供写真(C)HAKODATE CINEMA IRIS


この秋、函館出身の作家・佐藤泰志の小説をオール函館ロケで映画化した『きみの鳥はうたえる』が公開されます。

「今を生きる 私たちの青春映画」とうたう本作のバックグラウンドを、プロデューサーの菅原和博さん(映画館「函館シネマアイリス」代表)に聞きました。

 

佐藤泰志『海炭市叙景』の衝撃

10年ほど前、映画館の女性スタッフが菅原さんに、佐藤泰志の小説『海炭市叙景』を紹介したことが、すべての始まりでした。

「佐藤泰志の名前は知っていましたが、作品は読んだことがなかった」菅原さん。すぐにはページをめくりませんでしたが、ある日、気が向いて読み始めると、あっという間に佐藤ワールドに引き込まれていきました。

 
alt、▲いつもにこやかで、語り口もソフトな菅原和博さん▲いつもにこやかで、語り口もソフトな菅原和博さん


「この作品の舞台は、函館とは記されていません。しかし、函館の匂いが随所から立ち上がってくる。最もショックを受けたのは、山から見た夜明けの街が瓦礫のようだという表現でした」。

 
alt、▲提供写真:「函館山からの夜景」函館市観光部▲提供写真:「函館山からの夜景」函館市観光部


映像が次々浮かぶ文体。ハードボイルドに通じる硬質な世界観。いまの時代を予測していたかのような、疲弊した地方都市を赤裸々に描いたストーリー。これらが融合した『海炭市叙景』を読み終えた時、菅原さんの頭には映画化という文字が浮かんでいました。
 

alt、▲提供写真:高校まで函館で暮らした佐藤泰志(1949-1990)。5度の芥川賞候補、三島賞候補になるも落選。死後、小説はすべて絶版となりましたが、2010年映画『海炭市叙景』公開を機に、すべての小説が復刊▲提供写真:高校まで函館で暮らした佐藤泰志(1949-1990)。5度の芥川賞候補、三島賞候補になるも落選。死後、小説はすべて絶版となりましたが、2010年映画『海炭市叙景』公開を機に、すべての小説が復刊

 

「函館シネマアイリス」20周年記念

2010年、菅原さんは佐藤文学を愛する人々や、多くの市民ボランティアとともに映画『海炭市叙景』を製作。これが、佐藤泰志原作の映画化シリーズのスタートとなりました。

 
alt、▲提供写真:監督/熊切和嘉 出演/小林薫、南果歩、加瀬亮、谷村美月、竹原ピストル (C)2010/佐藤泰志「海炭市叙景」製作委員会▲提供写真:監督/熊切和嘉 出演/小林薫、南果歩、加瀬亮、谷村美月、竹原ピストル (C)2010/佐藤泰志「海炭市叙景」製作委員会


『海炭市叙景』のヒットを受け、2014年には『そこのみにて光輝く』、2016年には『オーバー・フェンス』を映画化。いずれの作品も若手実力派俳優の起用もあり、ヒットをおさめます。

 
alt、▲提供写真:監督/呉美保 出演/綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也 (C)2014/佐藤泰志「そこのみにて光輝く」製作委員会▲提供写真:監督/呉美保 出演/綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也 (C)2014/佐藤泰志「そこのみにて光輝く」製作委員会
 

alt、▲提供写真:監督/山下敦弘 出演/オダギリ ジョー、蒼井優、松田翔太、満島真之介 (C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会▲提供写真:監督/山下敦弘 出演/オダギリ ジョー、蒼井優、松田翔太、満島真之介 (C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会


2016年、函館シネマアイリスは20周年を迎えました。この映画館は、函館市内から映画館が消えていくなか、函館市民の支援によって作られました。

菅原さんは、その記念事業として4作目の映画製作に臨もうと決意し、選んだ作品が『きみの鳥はうたえる』でした。

『きみの鳥はうたえる』は、1982年に発表され芥川賞候補にもなった、佐藤泰志の初期の代表作。郊外の書店で働く「僕」と一緒に住む静雄、そして二人の男に愛された佐知子が紡ぐ青春小説の名作です。

 
alt、▲「佐藤文学の魅力は、漂っているような浮遊しているような時代を描く、青春小説にある」と菅原さん。『きみの鳥はうたえる』が、中でも一番好きだそうです▲「佐藤文学の魅力は、漂っているような浮遊しているような時代を描く、青春小説にある」と菅原さん。『きみの鳥はうたえる』が、中でも一番好きだそうです

 

三宅唱監督へのアプローチ

「小説の舞台は東京都国立市です。でも、現在の国立でロケをしてもあの世界は創れない。函館に舞台を移し、よくある地方都市での物語にしようと考えました」。

30年前の作品を現代に、舞台を函館に置き換えると決めた菅原さん。若い監督と組もうと考え、すぐに頭に浮かんだのが、札幌市出身の三宅唱監督でした。

 
alt、▲提供写真:三宅唱監督(右から2人目)は、1984年生まれ、札幌市出身。劇場公開第1作『Playback』などで国内外の新人監督賞を受賞しています▲提供写真:三宅唱監督(右から2人目)は、1984年生まれ、札幌市出身。劇場公開第1作『Playback』などで国内外の新人監督賞を受賞しています


「『Playback』を見て気になっていた三宅監督にメールを送るとすぐに返事がきて、東京で会いました。その時、監督が札幌で撮影した『やくたたず』を見せてもらい、傑作だと思いました。モノクロームの雪景色の中で、学生服姿の高校生が子犬のようにじゃれあう姿は、佐藤泰志の描いた若者像に重なって見えました」。

初めての出会いから映画完成まで約3年。その間、監督は何度も脚本を書き直し、物語の構造、主人公との関係性などは原作と異なるものとなりました。

ある映画雑誌のインタビューによると、以前から原作をもとにした映画作りにチャレンジしてみたいと思っていたそうで、今回は純粋に楽しい時間を過ごせたとも。脚本段階ではラストは、まったく違うものが3タイプはあったそうです。

 
alt、▲提供写真:函館でロケ中の三宅監督(左)と。「三宅監督の持ち味、良さを出すことが私の一番大事な仕事でした」と菅原さん▲提供写真:函館でロケ中の三宅監督(左)と。「三宅監督の持ち味、良さを出すことが私の一番大事な仕事でした」と菅原さん


「キャスティングでは、柄本佑と染谷将太は、三宅監督の強い希望があり、私も賛同しました。二人の男性に愛される女性は、性を感じさせない女優がいいと思っていました。石橋静河は適役でした」。

 
alt、▲提供写真:柄本佑。『美しい夏キリシマ』でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞などを受賞。2017年、初監督作『ムーンライト下落合』を発表。舞台、映画、ドラマで活躍▲提供写真:柄本佑。『美しい夏キリシマ』でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞などを受賞。2017年、初監督作『ムーンライト下落合』を発表。舞台、映画、ドラマで活躍

 
alt、▲提供写真:石橋静河。コンテンポラリーダンサーであるとともに、近年、舞台や映画へ役者としての活動の場を広げる。三宅唱監督の前作『密使と番人』では時代劇に初挑戦▲提供写真:石橋静河。コンテンポラリーダンサーであるとともに、近年、舞台や映画へ役者としての活動の場を広げる。三宅唱監督の前作『密使と番人』では時代劇に初挑戦

 
alt、▲提供写真:染谷将太。幼少期から子役として活躍。園子温監督『ヒミズ』で、ヴェネチア国際映画祭新人俳優賞を日本人として初受賞。短編『清澄』など映画監督作を発表▲提供写真:染谷将太。幼少期から子役として活躍。園子温監督『ヒミズ』で、ヴェネチア国際映画祭新人俳優賞を日本人として初受賞。短編『清澄』など映画監督作を発表

 
alt、▲提供写真:佐藤泰志原作の映画シリーズは、数多くの函館市民が影の主役。「市民が映画を作り、全国に発信する、市民発信映画。無償の力が支えてくれています」と菅原さん▲提供写真:佐藤泰志原作の映画シリーズは、数多くの函館市民が影の主役。「市民が映画を作り、全国に発信する、市民発信映画。無償の力が支えてくれています」と菅原さん

 

ありふれた道さえも魅力的に見えてくる

「映画『きみの鳥はうたえる』の3人は、ありふれたマチにいる、ありふれた若者たち。でも彼らの恋はここにしかない。リアルな今の物語を描いている」と菅原さん。映画の中に、函館の観光アイコンとなっている建物や風景が、それらしく登場しないのも必然でしょう。


さらに、菅原さんは、「映画を見て、その物語に入っていくことで、ありふれた道さえも魅力的に見えてくる」とも。『きみの鳥はうたえる』は、ささやかでも、かけがえのない人生への讃歌でもあるのでしょう。
 

alt、▲提供写真:函館で撮りながら、敢えて函館らしさは排除したという象徴的なシーン▲提供写真:函館で撮りながら、敢えて函館らしさは排除したという象徴的なシーン

 

『きみの鳥はうたえる』

8月25日(土)函館シネマアイリス先行公開
9月1日(土)新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
2018年 / 106分 / 2.35 / カラー / 5.1ch

 

関連リンク

『きみの鳥はうたえる』公式サイト
函館シネマアイリス

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