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公開 | 小西 由稀

大地を創る人。「暮らしと共にあった羊文化を守りたい」。「松尾めん羊牧場」牧場長・佐藤修章さん

「松尾めん羊牧場」牧場長・佐藤修章さん


青空に残雪の山々、赤い屋根の羊舎、そしてタンポポが咲く丘で草を食む親羊たち。とても気持ちの良い風景が広がっています。
 
ここは2016年、滝川市に設立した農業生産法人「株式会社松尾めん羊牧場」。そして、笑顔のこの方は牧場長の佐藤修章さんです。
 
滝川の地名、松尾の名前にピンと来た方は北海道通!そうです、ここは松尾ジンギスカンでおなじみ、株式会社マツオのグループ会社です。
 
あの “マツジン”がどんな目的で羊の牧場をつくったのか、そして佐藤牧場長の思いとは…。今回は羊をめぐる物語をお届けします。
 
 

味付きジンギスカンの故郷・滝川市

松尾めん羊牧場 


松尾めん羊牧場は滝川市江部乙地区にあります。
繁殖用と食肉用、あわせて約180頭のサフォーク種を飼育しています。
 
やはり、松尾ジンギスカン用の羊肉を育てるのが目的なのでしょうか。
 
「よく聞かれますが、そうではありません。滝川市の羊文化を途絶えさせてはいけないという思いから、スタートした牧場なんです」と、佐藤牧場長は説明します。
 
 

本題の前に少し羊の歴史の話を

「松尾めん羊牧場」牧場長・佐藤修章さん 


かつて北海道では、軍服など軍需品に使う羊毛を取るため、羊の増産が国策で進められていた時代がありました。
 
大正時代には、増産と活用を目的に滝川に種羊場を設置。戦後は食料と衣料の不足から、農家にも羊飼育の副業を奨励しました。
 
とはいえ、羊肉がまだ一般的ではなかった時代、種羊場が試行錯誤の末に考え出した羊肉の料理が、現在の味付けジンギスカンでした。
 
地元産のリンゴやタマネギの搾り汁、醤油など家庭にある調味料に浸けこみ焼くだけ。

ジンギスカン人気は農家、販売店へと広がり、1956年(昭和31年)に開店した「松尾ジンギスカン」により、一気に大衆化が進みました。

 
松尾ジンギスカン▲画像提供/松尾ジンギスカン
 
 

滝川市の羊文化を後世へ

その後、ジンギスカンは北海道のソウルフードとまで呼ばれるようになった一方、羊の飼育頭数は激減。今では99%を輸入に頼っている状況です。
 
羊がいる風景がわずかながら残っていた滝川市ですが、2015年、地元で唯一羊を飼育していた「新山ファーム」の離農が決定。
 
その話を聞き、複雑な思いでいたのが、当時、株式会社マツオの営業を担当していた佐藤牧場長でした。


佐藤牧場長


滝川市で生まれ育った佐藤さんにとって、羊は縁浅からぬ存在。しかも、初めて就職した会社では、羊の生産から加工、販売までを担当していました。

マツオ入社後は、同じ滝川つながりの新山ファーム産の羊肉を、北海道物産展で販売した経験も。その中で「滝川産ラム肉」の反響に手応えを感じていたといいます。


「約110年続いている“滝川の羊文化を途絶えさせたくない”という思いから、当初は牧場の担い手探しをさせてもらおうと、会社に直談判するつもりだったんです。すると、社長から“うちでやりましょう”との返事が。うれしかったですね」。

 
サフォーク羊
 
 
その時、マツオはちょうど創業60周年の節目の年。

「羊肉を扱うリーディングカンパニーとして、より“羊への理解を深めたい”と思っていたこと。何よりも、“滝川に育ててもらった企業”として意義を感じたことが、大きかったと思います」。
 
さまざまな思いがひとつになり、滝川市の羊文化は松尾めん羊牧場に受け継がれることになりました。
 
 

滝川産のエサにこだわり舎飼いで生産

 松尾めん羊牧場

 
松尾めん羊牧場として羊を生産するにあたり、決めていることがあります。

それは、ジンギスカンの原料の代替品には使わないこと。
 
「それは、広くラム肉のおいしさを伝えることに主眼を置いているからです。
品種は、滝川市で長年飼育が奨励されてきたサフォーク種。安全安心は当たり前で、エサも滝川産に挑戦しています。
“滝川産サフォーク”の魅力をさまざまな形で発信したいと思っています」。
 
羊は青草を食べることで、反芻(はんすう)動物特有のにおい(癖)が貯蔵されていきます。

佐藤牧場長は過去の販売経験から、より日本人が好むラム肉の生産を目指し、繁殖用の親羊以外、牧舎の中で飼育する“舎飼い”にこだわりました。
 

羊舎の中
 
 
エサも滝川産の乾草、飼料米、小麦などの穀物、さらに松尾ジンギスカンのタレに使った地元産のリンゴの搾りかすなどを与えています。
 

松尾めん羊牧場のエサ
 
 
「これから検証が必要ですが、リンゴでより肉質が良くなれば…という思いと、循環型の農業を実践したい思いもあります」。
 
ちなみに、たっぷりと敷いた敷きわらは、堆肥化して地域の農家に還元されています。
 

お手製のミルク台▲お手製のミルク台は、子羊が哺乳瓶でミルクを飲みやすいように、角度を変えられるようになっている


子羊用の柵▲子羊も十分にエサを食べられるようにと、子羊専用のエサ場の柵は、子羊だけが通れるサイズになっている
 
 

滝川産サフォークに夢をたくして

松尾めん羊牧場では毎年秋、生後1年未満の羊を約40頭、出荷。

主に首都圏の北海道物産展で、さまざまな部位のラム肉を販売するほか、松尾ジンギスカン本店で自社牧場産100%のラムバーグを数量限定で提供しています。

 
サフォーク
 
 
「目標は、10年後に1000頭に増やすこと!第2、第3牧場の建設も視野に入れています。
滝川市内で飼育に協力してくれる農家さんを募ることも考えています。個人では難しい流通面も、販路を確立している私たちだからできることがあります。
一緒に滝川市の羊文化を盛り立ててもらえると、うれしいですね」。
 

また、近い将来にはラム肉だけではなく、生後1~2年未満のホゲット、2年以上のマトン、さらに内臓なども生かした羊肉料理専門店の出店計画もあるといいます。

 
サフォークの子羊▲松尾ジンギスカンのスタッフも牧場に来て羊にふれ、「命の大切さ、そして加工に対する責任が一層増した」との感想を持つ人が多いのだそう
 
 
「そのほかにも、食育や観光牧場など、滝川に来てもらい、羊とのふれあいを通して、命の大切さを伝えられる空間にもしていきたい。それに皮や毛の利用も考えていきたい。
ジンギスカンだけでは見えなかった羊の魅力を発信することで、地元・滝川に貢献したい」。


佐藤牧場長
 
 
目を輝かせながら語る佐藤牧場長。お話を伺っているコチラもわくわくしてきます。

消えそうになっていた滝川市の羊文化を後世へ、そして新たな価値の創造へ。今後の松尾めん羊牧場の展開から目が離せません。

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Writer

小西 由稀

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