大河ドラマの主人公が、「女が鉄砲なんてとんでもねぇ!」と言われながらも、銃を持ち立ち上がってから幾星霜。北海道では、女性ハンターたちがひとつにまとまり、立ち上がりました。

北海道に、女性ハンターたちのネットワークが誕生しました。
その名は、「The Women in Nature-shoot&eat-」、通称「TWIN(ツイン)」。

「狩猟」「ハンター」と聞くと、道産子が真っ先に思い浮かぶのは、「熊が出たぞ!」というニュースとオレンジのベストを着た猟友会の姿。
実は今、日本の銃猟狩猟者(第一種銃猟免許保持者)の男性が年々減少しているそうです。
一方、女性の所有者は一定数を保っており、北海道では逆に女性所有者数は増えているとか。農家の女性たちが自衛のため(鹿駆除)に銃を持つようになったという背景もあるかもしれません。
このような中、北海道の女性ハンターたちがひとつにまとまりました。
会の趣旨や活動内容など「TWIN」の設立発起人であり代表の松浦友紀子さんに、話をうかがいました。

▲(独)森林総合研究所北海道支所研究員 松浦友紀子さん。普段は、増えすぎた鹿をどうやって減らすかなどの研究を行っています
「TWIN」設立のきっかけは?
「去年の2月、兵庫県の女性ハンター仲間と意見交換をしていていたら、女性ハンターには女性ならではの悩みがあり、そういう単純なことを話し合える場、横のつながりがあればいいね、という話になりました。
日本全国鹿が増えていて、実は兵庫と北海道がダントツ捕獲数が多い。それぞれハンターの重要性が強調されている土地なので、それならば、そういう団体をつくってみようということになり5月から具体的に動き出して、9月に設立。5人でスタートして、今はメンバーが35人、うちハンターが20名になりました」。
「数字を聞いてもピンとこないと思いますが、道内の鹿の数は64万頭と言われています。これは異常な状況で、とにかく駆除が先決。
鹿が増えて、どんどん獲らなければならないなら、それを利用しよう、-shoot&eat-、つまり獲ったら食べようという考えです」(松浦さん談)。

▲獲ったら食べる。食べたいから獲る
狩猟シーズンは、だいたい10月から3月いっぱい。夏は一般的な狩猟はなく、有害鳥獣駆除になるそうです。
「女性ハンターの集まりですが、女性ばかりで活動しようというものではありません。女性ハンターのネットワークと捉えてください」と松浦さん。
松浦さんが狩猟を始めたのは、「十勝で研究活動をしていた頃、周りのハンターたちと触れ合う機会があり、ハンターのおじさんたちが猟に行く前日はウキウキ準備をし、遠足に行く子供みたいで、とても楽しそうだったから」というのが、きっかけでした。
狩猟経験のない一般人が持つであろう疑問をぶつけてみました。
撃つ時、「かわいそう」と思うことはありませんか?

「かわいそうとは思いません。鹿肉が食べたい、研究用のサンプルを獲る、駆除が必要など、理由があるから撃つわけで、それは、誰かが殺さなければならない。その誰かが私であるというだけです。
大学生の実習で、撃つところから解体まで見せますが、たま~にドン引きしている女子がいます。が、その夜はパクパク鹿肉を食べる。
とっかかりがなかっただけで、実際にやってみたら、たいしたことではありません」。
確かに。獲ることは食べること。食べることは生きること。
元来人間が営んできた自然との付き合いは、そういうものでした。

熊は撃たないのですか?
「熊は撃ちたいと思わない。ただ、将来のことを考えると熊が撃てるハンターが数年でいなくなります。
鹿は初心者でへたくそでもできるけど、熊を確実に仕留めるためには、ものすごい知識と技術が必要。はずしても鹿は逃げていくだけだけど、熊は、手負いになると危険です。
熊撃ちの技術を持っている人は限られていて、猟友会の中でも少ないんですよ」。

▲松浦さんの研究室にあった諏訪大社の「鹿食免」(かじきめん)。鹿を食べても良いという免罪符のようなものだとか。
「TWIN」のこれからの目標、ビジョンは?
「長期的なビジョンですが、女性ハンターをちょっとずつ増やして、ハンターの減少を食い止めたい。そのためにも、女性ハンターが狩猟を楽しめるような環境づくりをしていきたいです。
狩猟は、今までは男性社会で、女性の視野に入っていなかったのだと思います。それが、エゾ鹿問題がクローズアップされ、狩猟が注目されてきて、趣味のひとつとして女性の世界に入ってきました。
女性は好奇心旺盛だから、食いつきますよね」。

▲「近々の目標なら、みんなでいろんなイベントをしたいですね。そうすると今いる男性ハンターたちも元気になるし、女性たちでハンターのイメージアップをしたい。夏には射撃大会をしたいと思っています」と松浦さん

銃の重さはスコープなどをつけると約4~5㎏にもなり、山へ入るのもかりの体力が必要。
狩猟の世界は、決して女性には優しい環境ではありません。が、「TWIN」が設立できたのも、自然豊かな北海道だからこそ!だと思いました。
■The Women in Nature-shoot&eat-
■問い合わせ先
酪農学園大学狩猟管理学研究室内 TWIN事務局
FAX:011-388-4861
写真提供:The Women in Nature-shoot&eat-
北海道Likersライター チバタカコ
http://www.facebook.com/chiba.takako.9
写真撮影:北海道Likers フォトライターいつき
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