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公開 | 佐々木葉子

大地を創る人。「牛も、みんな違って、みんないい」。小国美仁さん(北斗市)

日本全国、津々浦々にブランド牛あり。
 
北海道の南、北海道新幹線の駅がある北斗市は、
道内外の腕利きシェフらが一目置く黒毛和牛「おぐに和牛」の郷です。
 
自らが経営する牧場で「髄まで染みる肉」を目指し、日々格闘する、
おぐにビーフ株式会社代表取締役 小国美仁さんに、その胸の内を聞きました。


alt、「おぐに牧場」は、黒毛和牛などの飼育から販売まで一貫して行っている専門農場▲「おぐに牧場」は、黒毛和牛などの飼育から販売まで一貫して行っている専門農場
 
 

プレッシャーがハングリー精神に火を点けた

小国さんは、岩手県二戸市出身。高校時代は野球に明け暮れ、汗と涙と感動の青春時代を過ごしました。
 
野球に熱が入り過ぎたせいか、獣医の道を目指しての大学受験はサクラチル。浪人も考えたそうですが、それを断念し、親戚が働く道南・大沼(七飯町)の畜産関係会社に入社しました。
 
仕事を通じて、肉牛への興味がゆっくりと深まっていった小国さんは、20歳のとき、畜産と農業経営を学ぶために渡米。アイダホ州の牧場で2年間研修を受けました。
 
「アメリカの“農”の考え方に感銘を受けました。家族と郷土を愛し、牛と生きて行く。そうしたライフスタイルが定着していたのです」。帰国後、大沼の牧場で実務研修を受け、28歳のときに北斗市で新規就農。「おぐに牧場」は、畑を借り、牛舎を建てるところからのスタートでした。
 
 
alt、北海道はもともと、牛肉より豚肉の土地柄。小国さんは、「おいしい牛肉で道民の胃袋をつかむ」という意気込みで牧場経営を始めたそうです▲北海道はもともと、牛肉より豚肉の土地柄。小国さんは、「おいしい牛肉で道民の胃袋をつかむ」という意気込みで牧場経営を始めたそうです

しかし、とんとん拍子で話が進んだわけではありません。
 
道南一帯は稲作、畑作が主流です。小国さんがここで畜産をやりたいと打ち明けると、道東へ行けと乱暴なことを言う人もいたそうです。アウェー感を抱きながらも、ここまで来たら前へ進むしかありません。
 
「高校が進学校だったので、当時すでに同級生の中には銀行で役付きになっていたり、公務員で活躍していたりする人もいました。僕は僕で、ここで踏ん張って人並みにならなければダメだと。自らにプレッシャーをかけ、ハングリー精神に火を点けました」

 

A5だけがいいわけではない

「牛肉はA5が一番」とよく耳にします。このランク付け、実は味そのものを示すものではありません。
 
ABCは「食べられる部分がどれだけ多いか」、1~5は「脂の入り方・肉の色・質感」の指標。A5は、「食べられる肉がたっぷりとれて、脂が細かく均等に入ったしっとりとした肉」を指します。


alt、▲「おぐに牧場」の牛舎は、広々としてとても清潔。毛艶のいい牛がのんびりと暮らしています ▲「おぐに牧場」の牛舎は、広々としてとても清潔。毛艶のいい牛がのんびりと暮らしています 


「A5の肉を狙えば、生産者は儲かります。そのために、牛たちを狭い空間に隔離して、太らせるための専用飼料を使ったものをどんどん食べさせる。それは、いい肉を作ることではなく、儲かる肉を作ること。僕は、そうしたやり方にまったく賛同できません。うちにはA3、A4の肉があります。それらはダメなのか。そうではない、それは個性です」。小国さんはさらにこうも続けます。

「前に仕入れた肉と違う、そんなクレームが来ることがあります。でも考えてみてください、それは当たり前のことです。牛だって人間と同じで、みんな違います。みんな違って、みんないいんです」

 
 alt、赤身と脂身のこのバランス!見るからにおいしそうな「おぐに和牛」▲赤身と脂身のこのバランス!見るからにおいしそうな「おぐに和牛」


「おぐに和牛」のファンには、星付きレストランや独立系のシェフが目立ちます。一頭一頭の違いを楽しみにして、肉の個性に応じた調理法を選び、素材の味が引き立つ一皿に仕上げる。そのことがシェフには喜びなのです。
 
「理解あるシェフとのコミュニケーションは、僕のパワー」。小国さんはうれしそうに語ります。

 

「おぐに和牛」は、おたくの肉

「おぐに牧場」には、約100頭の黒毛和牛が暮らしています。小国さんが最も重視していることは、牛の生命力を引き出すこと。そのためには、人間の都合ではなく、あくまでも牛ファースト。牛が牛らしく暮らせる環境をつくることに心血を注いでいるのです。
 
 
牛舎は、牛がのんびり過ごせる広さを確保。飼料は地元産をはじめ安全なものを吟味し、牛の体調を見ながら与えます。
 
 alt、足元はふかふか、頭の上からは明るい陽射しが。マイペースで暮らす牛たち▲足元はふかふか、頭の上からは明るい陽射しが。マイペースで暮らす牛たち
 
 
「肉の味は、エサの配合を1%変えただけで変わる」と小国さん。それを知ったからには、手抜きできないのが小国さんの性分。牛のことを知るほど、やるべきことのハードルは上がり、自分との闘いもハードになっていきます。
 
「微妙な違いは数字にもキャッチフレーズにもできないんです。でも、僕はシェフや取引先の方に熱意をこめて、牛と日々どう向き合っているかを話します。すると、わかる人はわかってくれる。言ってみれば、うちの肉はおたくの肉(笑)」。
 
 

僕らの生き方が調味料

肉がテーブルに上がる、その時まで責任を持ちたい。これは、小国さんの信念です。だから、新規の取引話が来た時は、相手先とじっくり話をします。
 
 
alt、「ワインは、畑や製造年によって味が違うところがおもしろいと言われます。肉も同じような考え方になってほしいと思います、売る方も買う方も」。▲「ワインは、畑や製造年によって味が違うところがおもしろいと言われます。肉も同じような考え方になってほしいと思います、売る方も買う方も」
 
 
「手塩にかけた牛の肉が、どのような人にどのように食べられるのかがわからないまま提供したくないんです」と小国さん。親心にも似た気持ちがあるのでしょう。
 
こうした関係を構築する過程で、小国さんにはたくさんの情報が入ってきます。すると、牛肉は霜降りが一番で、すき焼きで食べるのがうまいと長年いわれてきたものの、近頃は、霜降りは脂がもたれると敬遠する人が少なくないなど、食べる側の嗜好の変化がわかってきます。
 
こうした声に応えるように、2017年11月には、親交の深い大原牧場(北斗市)と連携して、あっさりとしながらもしっかりと味のある「北斗プライムビーフ」を発表。現在は「STEAK&HAMBURG HIGE」だけで提供されていますが、この春からは本格的にデビューする予定だそうです。
 
 
alt、提供写真:「おぐに和牛」と「北斗プライムビーフ」の食べ比べセットの販売も検討中です▲提供写真:「おぐに和牛」と「北斗プライムビーフ」の食べ比べセットの販売も検討中です
 
 
牧場に隣接する直売所では、「おぐに和牛」の各部位を注文に応じてカットし販売しているほか、特製「牛すじ煮込み」も取り揃え。対面販売も顔が見える関係づくりの一環です。
 
 
alt、緑のテントが目印の直売所。国道227号沿いにあるので、すぐにわかります▲緑のテントが目印の直売所。国道227号沿いにあるので、すぐにわかります
 
 
alt、メニューを見ながら、「今日はどれにしようか」と悩むのも楽しみ。地方発送もできます▲メニューを見ながら、「今日はどれにしようか」と悩むのも楽しみ。地方発送もできます
 
 
「この仕事は自然相手ですから、一筋縄ではいきませんし、今までもいろいろなドラマがありました。うちの肉には、そんな生き方をしてきた僕らがつくるからこそのおいしさがある、それが肉の調味料。そんな自負があってもいいですよね。」。
 
小国さんの目標は、「おぐに牧場」が「なくなったら困る」と言われる存在になること。「求められるものを作り、喜んでもらうことに人生を賭けたいんです」。
 
サクラチルで津軽海峡を渡ってきた小国さんですが、人生においてはたくさんのサクラを咲かせそうです。

 

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