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公開 | 佐々木葉子

情熱の仕事人。「お客様」ではなく「仲間」を増やす。株式会社秀岳荘代表取締役社長「小野浩二」

alt、小野浩二さん

全国のアルピニスト、アウトドアファンの聖地・秀岳荘の代表取締役社長、小野浩二さん。札幌で創業して63年、用事がなくても足が向く地域一番店のDNAとスピリットをお聞きしました。

 

登山はクオリティの高い散歩

小野さんの故郷は、オホーツクエリアの中心都市・北見市に近い訓子府(くんねっぷ)町。タマネギやメロンの産地として知られるこの町で、農家の息子として育ちました。

「野生の動物がごく普通に姿を見せるようなところで、冬は雪が積もった畑の斜面でスキーをしたり、かまくらを作ったり。双子の弟と一緒に自由気ままに、自分たちで工夫して遊んでいました」。


alt、▲小野浩二さん:1968年生まれ、訓子府町出身。札幌大学経営学部卒業後、コンピュータ会社勤務を経て、1997年秀岳荘に入社。モンベルクラブ(F.C)新店舗、札幌本店(現:北大店)の店長を務めた後、取締役に就任。2005年、楽天市場に出店し、同店長兼務。2008年、専務取締役。2012年から現職。 ▲小野浩二さん:1968年生まれ、北海道訓子府町出身。札幌大学経営学部卒業後、コンピュータ会社勤務を経て、1997年に秀岳荘に入社。モンベルクラブ(F.C)新店舗、札幌本店(現:北大店)の店長を務めた後、取締役に就任。2005年、楽天市場に出店し、同店長兼務。2008年、専務取締役。2012年から現職


高校卒業後は札幌の大学に進学し、映画研究会に所属。そこで知り合った後輩が秀岳荘二代目社長・金井哲夫氏を父に持つ、いまの奥様でした。小野さんは、その頃から海釣りやキャンプに親しんでいましたが、結婚し秀岳荘に入社してから、山そしてアウトドアの世界に本格的に分け入っていきます。

 
alt、▲1955年、初代金井五郎氏が「金井テント製作所」として創業。テントやザックなど、北大山岳部の山の装備を中心に製作・販売したのが始まり。1957年、北大山岳部出身の山岳画家・坂本直行氏が「秀岳荘」と命名。現在、実店舗は、マニアック志向の登山専門店「北大店」、初心者向けオールラウンドアウトドアショップ「白石店」、道北・道東の拠点「旭川店」▲1955年、初代金井五郎氏が「金井テント製作所」として創業。テントやザックなど、北大山岳部の山の装備を中心に製作・販売したのが始まり。1957年、北大山岳部出身の山岳画家・坂本直行氏が「秀岳荘」と命名。現在、実店舗は、マニアック志向の登山専門店「北大店」、初心者向けオールラウンドアウトドアショップ「白石店」、道北・道東の拠点「旭川店」


「最初の頃は山に登らなければという義務感もあったんですが、登頂した時の達成感、山頂で見るご来光の素晴らしさに魅了され、あっという間に山のとりこになりました。これまでに道内の山の8割以上は登頂しています」。

“なぜ、山の登るのか。そこに山があるから”という言葉がありますが、小野さんはなぜ山に登るのでしょう。

「登っている間に頭の中が整理され、いいアイデアが浮かぶんです。また、険しい山の頂を目指している時は、こんな風に頑張っている自分が好きという感覚を持てたり(笑)。登山なんてできないと尻込みしている人には、登山はクオリティの高い散歩と考えてと言って、誘い出しています(笑)」。

 

山の教えから生まれた「北大山岳部方式」

登山をしていると、生きていることに感謝する気持ちが湧いてくると小野さん。過去に危険な体験もしています。2014年4月、小野さんが大好きな日高山脈を縦走中、突然、巨大なクレバスに落下したのです。


 
alt、提供写真:クレバスの大きさは幅3m~4m、長さ10m、深さ3m~5m。一緒に行ったメンバーも巻き込んでしまったそうです。▲提供写真:クレバスの大きさは幅3m~4m、長さ10m、深さ3m~5m。「仲間がいたから何とかなりましたが、一人だったらと考えるとぞっとします」と小野さん


山は統制が大切なだけに、万一リーダーがいなくなると隊が乱れます。無事に下山するためには、個人がそれぞれ判断できる力を付けることも肝心です。そうした山の教えから生まれたのが、秀岳荘独自のシステム「北大山岳部方式」です。

「秀岳荘では、各担当者が直接、仕入れ、価格決定、販売まで行います。自分の価値基準にそって自主的に動き、リーダーになるのです。自分が選んだ品を買ってくださったお客様は、スタッフにとって価値観を共有できる良き理解者。スタッフは、自然と笑顔でお客様に接するようになります」。

 
alt、▲白石店1階には、アウトドアのグッズがぎっしり。一角には、冬は山スキー、夏はカヌーの専門コーナーも▲白石店1階には、アウトドアのグッズがぎっしり。一角には、冬は山スキー、夏はカヌーの専門コーナーも


お客様の希望で取り寄せた品が、イメージと違うなどの理由でキャンセルになってもかまわない。気になる商品を見てみたい、触ってみたい、着てみたいという理由だけでの来店もウエルカム。そんな懐の深い応対もファンを広げている理由のひとつです。

 

秀岳荘をどんどん使い、遊んでほしい

全員がバイヤー、一人ひとりが個人商店の主のような秀岳荘。スタッフには、商品知識は誰にも負けないという自負があります。「秀岳荘では、うちで買った商品でなくても修理します。ホームセンターさんで『秀岳荘に持っていけば直してくれますよ』と紹介され、調子の悪くなったギアを持ち込まれる方も多いです」。

白石店の3階にある縫製工場では、各商品の修理や裾上げ、オリジナルの小物袋などの製造を行っています。
 

alt、▲3階の売場に直結した縫製工場にはベテランスタッフが常駐。メーカーでも対応できない裾上げも、鮮やかな手さばきで仕上げています▲売場に直結した縫製工場にはベテランスタッフが常駐。メーカーが対応できない裾上げも、鮮やかな手さばきで仕上げます


 
alt、▲昔ながらの綿帆布生地で作ったオリジナルザック。写真のザックは復刻版で、昔からのお客様からの注文で作ったもの▲昔ながらの綿帆布生地で作ったオリジナルザック。写真のザックは復刻版で、昔からのお客様の注文で作ったもの


「秀岳荘なら品物があるだろう、秀岳荘は行くだけで楽しいと思っていただければいいんです。目先の儲けより、長く商いができることのほうがずっと大切なことですから」。そう語り、にこっと笑う小野さんは、実店舗に来られない地域の方々のために、2005年にはオンラインショップ第1号の楽天市場店を出店。さらに札幌と旭川の3店舗では免税店も始めています。

お客様にワクワク楽しんでいただくために、店舗の内外でイベントや講習会、ツアー、競技大会も主催。アウトドア分野はもちろん、自ビールイベント、ダッチオーブン講習会、インドア系文化教室など、かなり幅広いプログラムを用意しています。

「先日は木版画家の新田達也先生に起こしいただき、刷り込み・色塗りミニスクールを開催しました。私も40年ぶりに版画を刷ったんですけど、楽しかったですよ」。
 

alt、▲提供写真:主催イベントでは、開催前に必ず小野さん自身が体験するそう▲提供写真:主催イベントでは、開催前に必ず小野さん自身が体験するそう


秀岳荘をどんどん使ってもらい、秀岳荘でどんどん遊んでほしい。そう願う小野さんの気持ちは、「お客様ではなく、仲間を増やしたいんです」という言葉に端的に表れています。

 

スタッフに遊んでもらえる社長

全国に知られる老舗であり、アウトドアの世界ではトップブランドでありながら、型に縛られることなく、秀岳荘らしい取り組みにチャレンジし続けている小野さん。さぞやご多忙では?と聞くと、「いえいえ、そうでもないですよ。私がいなくても店は問題ないんです。だから、社長室の内線も全然鳴りません(笑)」。

 
alt、▲物事を本質から考え、柔軟に発想している小野さんからは、名言がいっぱい飛び出します▲物事を本質から考え、柔軟に発想している小野さんからは、名言が次々飛び出します


秀岳荘のスタッフは、個性的で魅力的な人が多く、明るく楽しそうに仕事をしていると評判です。その秘密は、「会社の一番のお客様はスタッフである」という会社の考え方にあるのかもしれません。ガイド資格や商品購入の助成、商品代の後払いやボーナス天引きシステムなど、スタッフがどんどん商品を使い、納得し、プロになるための制度がとても充実しています。

「たとえるなら、経営側は農家、スタッフは野菜、お客様は消費者。手のかけ方次第でよりおいしい野菜ができ、おいしい野菜があればお客様はわざわざ買いにきてくれます。だから、私がやることは魅力的な人を集め、育てること、その人たちがやる気になる環境を作ることなんです」。

やれと言われてやる仕事より、やりたい仕事をできれば楽しくやりたい。それは誰もが願うことであり、秀岳荘のスタッフも同じはず。さて、経営者である私はどうしたらいいのだろう…。小野さんがいつもそう考えていることは、スタッフにも通じているのでしょう。だからこそスタッフは、小野さんを慕い、その背中をじっとみつめているのです。

「先日、お店のスタッフに誘われて、山に行ってきました。スタッフに遊んでもらえる社長なんて、ものすごく幸せですよね(笑)」。
 

alt、▲提供写真:会社のスタッフ2名も参加した8人のパーティで羊蹄山へ!▲提供写真:会社のスタッフ2名も参加した8人のパーティで羊蹄山へ!


北大山岳部のパートナーとして出発し、今ではアルピニストのサポーター、アウトドアファンのアドバイザーとしても期待に応える秀岳荘。その歴史を受け継ぐ第3走者の小野さんは、穏やかな笑顔を絶やすことなく、ワクワクする出来事を作り、発信し続けていくことでしょう。
 

関連リンク

・秀岳荘
・秀岳荘の小野ブログ
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