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公開 | 佐々木葉子

大地を創る人。まちの看板商品・タラコ作りを担う三代目、佐々木奈輝さん(岩内町)

小樽から日本海側沿いを車で約1時間30分。絶景で知られる積丹半島の付け根にある岩内町は、一年を通じて良質な魚介類が水揚げされる港町。この時期を代表する魚はスケトウダラ(以下、スケソ)で、スケソの卵巣(以下、子)で作る「岩内のタラコ」は古くから全国に知られる希少品です。今回は、まちの看板商品を作り続けるカク一佐々木商店の三代目・佐々木奈輝(だいき)さんに、粒よりのおいしさの秘密をお聞きしました。


alt、岩内生まれ、岩内育ちの佐々木奈輝さん▲岩内生まれ、岩内育ちの佐々木奈輝さん

 

「釣りタラコ」と呼ばれるタラコとは

岩内のタラコを「釣りタラコ」と呼ぶ人がいますが、普通のタラコと何が違うのでしょう。まず、そこから佐々木さんに尋ねてみました。

「スケソは、海中に垣根のように網を張る刺し網漁が一般的ですが、岩内では昔ながらの延縄(はえなわ)漁が行われています。延縄漁とは、縄に釣り針をのれん状に下ろし、針先に餌を付けて魚を釣る方式。この漁法で獲ったスケソの子を原料にしたタラコを、釣りタラコと呼んでいます」。

刺し網漁は延縄漁より一度に大量の魚を獲ることができますが、スケソが網の中でもがいて魚体を傷つけたり、血栓や胆汁が子に付着したりするケースが多いそう。スケソは、タラコ加工を最大の目的として漁獲され、その価値(値段)は子の質で決まります。そのため、岩内のスケソ漁師は効率より品質重視で延縄漁を貫いています。


alt、タラコの加工では、前浜の漁獲高の減少により、近海産を使うこともあるそう。岩内の釣りタラコは以前にも増して希少になっています ▲タラコの加工では、前浜の漁獲高の減少により、近海産を使うこともあるそう。岩内の釣りタラコは以前にも増して希少になっています


「うちが扱うスケソは、スケソ漁歴70年の地元の大ベテラン、山崎さんが釣ったものが多いです。子の状態がほんとうにいいんです」と佐々木さん。メスが海中のどのあたりにいるのかをピタリと探り当て、スケソが疲れないうちに縄を引き上げる技量は、一朝一夕ではとても身に付くものではないそうです。
 

alt、なめらかながら、粒がしっかりしている、カク一佐々木商店のタラコ。切り口がつぶれず、角がきちんと立っています▲なめらかながら、粒がしっかりしている、カク一佐々木商店のタラコ。切り口がつぶれず、角がきちんと立っています


山崎さんと、カク一佐々木商店の創業者で今も加工場で指揮を執る佐々木さんの祖父(会長)とは、同世代の昔なじみ。「山崎さんからは、漁に出るかどうかの連絡は一切来ません。港に山崎さんの船があれば漁がない、船がなければ漁に出た、そんな風に僕らは確かめています(笑)」。こうしたエピソードからも、長い間漁師さんと加工場が二人三脚で「岩内のタラコ」を作り続けてきたことがうかがえます。

 
alt、タラコづくりの師は祖父。「身内だからこそ、聞きづらいこともある」と佐々木さん▲タラコづくりの師は祖父。「身内だからこそ、聞きづらいこともある」と佐々木さん

 

出漁の翌々日には、スケソの子がタラコに

早朝出漁した船が港に戻ってくるのは日が暮れた頃。佐々木さんは港で船の帰りを待ち構え、木箱に詰められたスケソを加工場に運び込みます。


alt、岩内港に停泊する、スケソ漁の大ベテラン・山崎さんの船 ▲岩内港に停泊する、スケソ漁の大ベテラン・山崎さんの船


作業場にスケソが到着すると、マイ包丁を持参したベテランスタッフ20数名がオスとメスを選別しながら、腹から子を出していきます。15kg入り200箱のスケソを2時間弱でさばくというのですから、驚きです。「子の鮮度がいいうちに手早く処理するのが、なにより重要です」と佐々木さん。
 

alt、港沿いに立つ、カク一佐々木商店の加工場▲港沿いに立つ、カク一佐々木商店の加工場


取り出された子は洗浄され、タラコにするもの・しないものに選別。タラコにしないものは、生子(なまこ)として市場などに出荷されます。タラコにする子は、サイズ別に分類して塩をふり、調味液とともに樽に漬けます。「調味液は祖父が考案したもので、味はずっと変わっていません。調味液は加工場によって配合が異なり、それこそ門外不出の企業秘密。うちの調味液の配合も会長と私しか知りません」。
 

alt、贈答として使われることが多い「上物」のタラコ▲贈答として使われることが多い「上物」のタラコ


翌日、樽に漬けていた子のスジなどを取り除き、形を整えます。そして一晩寝かせ、箱詰めに。出漁の翌々日には、スケソの子がタラコに生まれ変わっています。

カク一佐々木商店では、タラコを数種類に分類して販売しています。子の品質が優れたものは「上物」、サイズ別に「大」、「中」、「こつぶ」、粒が軟らかいものは「水子」、色の入りが浅いものは「2番」、腹が途中で切れたものなどは「切子(きずこ)」、明太子は「しぼり子」、生子をボイルしたものは「ボイル子」です。
 

alt、タラコだけでもこんなに種類があるとは!▲タラコだけでもこんなに種類があるとは!


「うちは近海のものを使っていますから、漁の時期によって魚と子の大きさが変わります。また、子の状態によって塩や調味液の入り方も異なります。冷凍の子はあらかじめ規格が揃えられていますが、天然ものは画一的な仕上がりにはならないんです」。

 

手に取りやすい、ワンコインの商品も登場!

ここ数年、スケソの漁場は岩内の前浜から沖合へと、遠くなっているそうです。そのため、出漁機会は減り、漁獲高も年によって増減があるとのこと。だからこそ、岩内のタラコのおいしさをもっとたくさんの人に知ってほしいと、佐々木さんは2年前に新商品を開発しました。

「値ごろ感のある切子と2番を食べやすい量でパッケージしました。薄皮をはいでほぐした「ちょこんと」シリーズと、食卓でも屋外でも食べやすい「カップ」シリーズで、いずれも100g500円のワンコイン。若い人を意識して、パッケージは和テイストではない、明るい雰囲気のデザインを姉が考えてくれました」。
 

alt、カップ(左)のマークは屋号カク一の紋。「ちょこんと」シリーズ(右)は、写真のたらこ、明太子の他、山わさたらこ、たら親子漬け、にしん味醂干しもあり、今後も増やしていく予定▲カップ(左)のマークは屋号カク一の紋。「ちょこんと」シリーズ(右)は、写真のたらこ、明太子の他、山わさたらこ、たら親子漬け、にしん味醂干しもあり、今後も増やしていく予定


タラコを使った加工品もあり、中でも会長発案の「たら親子漬」はロングセラー。スケソの身を細かく切り、ばらしたタラコと混ぜて甘酢に漬けたもので、さっぱりした味わいはごはんのおかず、お酒のお供に合うと好評です。


 
alt、ロングセラーの「たら親子漬」は、彩りもきれい。食卓で映える一品▲ロングセラーの「たら親子漬」は、彩りもきれい。食卓で映える一品


佐々木さんが三代目を継いだのは8年前。先代の父が体調を崩したことから、札幌の大学を卒業後、企業の内定を辞退して実家に戻り、家業に携わるようになりました。その後、父は病気で他界。現在は会長の背中を見ながら現場の経験を積んでいます。また、他の地域のタラコを取り寄せて食べ比べるなど、研究にも余念がありません。

「父は朝早くから夜遅くまで働いていましたし、外でのお付き合いの幅も広かったので、一緒に過ごせる時間はそう多くはありませんでした。でも、父は私のことをよろしく頼むといろいろなところで話していたようで、父の知り合いの方々には今も気にかけてもらったり、励ましてもらったりと、とても良くしていただいています」。

カク一佐々木商店の直売コーナーには、祖父、父、佐々木さん、佐々木さんの息子さんの4代の似顔絵が描かれた一枚が飾られています。「息子はまだ5歳で何もわからないと思いますが、加工場にはよく来ています」。
 

alt、▲小樽の絵描きさんによる似顔絵。三代目の左が祖父、右が亡き父と息子さんで、みんな似ていると評判▲小樽の絵描きさんによる似顔絵。三代目の左が祖父、右が亡き父と息子さんで、みんな似ていると評判

岩内の恵みを岩内の誇りに育て上げてきた物語は、カク一佐々木商店の歴史と共に受け継がれていきます。

 

「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。
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