2017年10月06日 | 田中 勲

札幌出身の佐々木芽生監督の最新作・映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」

佐々木芽生監督メイン(c)「おクジラさま」プロジェクトチーム


札幌出身でニューヨークに在住する映画監督の佐々木芽生さん。何十年もささやかな給料の中から若い作家のアート作品を集めていたら、いつの間にやらそれがワールドクラスの凄いアートコレクションになっていた!というニューヨークの老夫婦を描いた初監督のドキュメンタリー映画「ハーブ & ドロシー」(2008年)は、世界中で上映されて、多くの映画祭で賞を獲得しました。その佐々木監督の最新作は、「おクジラさま ふたつの正義の物語」です。
 

捕鯨問題を公平な眼差しで深く描く

おクジラさまイメージ(c)「おクジラさま」プロジェクトチーム


和歌山県太地町は400年の捕鯨の歴史を持つ町。今でもイルカやゴンドウクジラなどを、入江に追い込んで捕獲する「追い込み漁」が行われています。この漁を隠し撮りして批判的に描いたアメリカのドキュメンタリー映画が「ザ・コーヴ」(2009年)です。この作品は米アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を獲得、その結果、この紀伊半島の南端にある人口約3000人の小さな町に世界中から、シーシェパードなど環境保護団体の人々や観光客が押しかけてくるようになりました。


おクジラさまシーン(c)「おクジラさま」プロジェクトチーム


「ザ・コーヴ」での日本の漁師の描かれ方に疑問を感じた佐々木監督は、2010年から太地町での撮影を開始。昔からの漁や食文化を守りたい太地町の漁師や住民、イルカ漁を監視してネットで世界に伝えるシーシェパードのメンバーたち、深くこの問題を取材するために太地町に居を移したアメリカ人ジャーナリストら登場人物たちの目を通して、中立的ですが鋭く、かつ世界的な視野で太地町で起こっていることにどんな意味があるのかを、監督はこの作品で伝えようとしています。
 

相手の主張を知ることが問題解決の第一歩

2017年10月14日(土)からの札幌公開を前に来札した佐々木監督に映画のことや、北海道&札幌についての想いを伺いました。


佐々木監督プロフィール▲佐々木 芽生(ささき めぐみ)さん 監督・プロデューサー。札幌市生まれ。1987年よりニューヨーク在住。フリーのジャーナリストを経て1992年NHKアメリカ総局勤務。その後独立して、NHKスペシャル、クローズアップ現代、TBS報道特集など、テレビの報道番組の取材、制作に携わる。2008年、初の監督作品「ハーブ & ドロシー 」は世界30を越える映画祭に正式招待され、米シルバードックス、ハンプトンズ国際映画祭などで、最優秀ドキュメンタリー賞、観客賞など多数受賞。2013年、続編にあたる「ハーブ&ドロシー2 ふたりからの贈りもの」を公開。2016年秋、第3作目にあたる長編ドキュメンタリー映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」完成。2015年TOKYO DOCSにて最優秀企画賞受賞、2016年釜山国際映画祭コンペティション部門に正式招待された他、世界各地で上映中。日本では、2017年9月から全国で劇場公開。

ー映画では、太地町に住むアメリカ人ジャーナリスト、ジェイ・アラバスターさんが太地町の漁師さんに、シーシェパードはこんなにもツイッターなどネットを使って世界的な広報活動を行っているのに、太地町は何も発信していないと語るシーンが印象的でした。

 「ザ・コーヴ」に代表される欧米での反捕鯨の主張に対して、太地町をはじめ日本からは何の反論もないことに違和感を持っていました。これは私がこの映画で伝えたかったことの一つなのですが、イルカ漁に対する意見が異なっても、コミュニケーションはしなければならない。しかしそのためにはまず相手の主張を知ることが第一歩でしょう。太地町の漁師さん達も、何か酷いことを言われているとはうすうす感じてはいても、その内容やボリューム、頻度は知りませんでした。それをジェイが、町長から漁師、住民まで、いろいろな人に伝えて歩いていたのです。


佐々木監督熱く語る


 相手の主張を知らないのは水産庁の役人もそうで、「ザ・コーヴ」すら拒否反応で観ていない人がいます。一般の日本人はさらに問題で、このイルカ漁を巡る争いにそもそも無関心。映画の登場人物の1人に、街宣車で太地町を走り回る政治団体「日本世直し会」の代表がいますが、彼は対話が大事だと言い続け、つたない英語でコミュニケーションをとってきたシーシェパードのことを、最初はなんだこいつらと思ったが、今は尊敬していると言います。私は彼のこの言葉に大きなヒントがあると感じています。
 

北海道というルーツが今の私を作った

ー今はニューヨークを拠点として活動されているわけですが、北海道出身であることを感じることはありますか?

 北海道のその空間の大きさは、北海道人の古い因習に囚われず、オープンマインドだという一面に影響していると思っています。私は屯田兵の子孫でもありますから(笑)、海外に出て様々な出自を持つ人々と一緒に仕事をするという挑戦ができたのは、それらの北海道ならではのルーツがあったからかなと。

 札幌での高校生活は今でも本当にいい思い出です。クラスメートは男女ともみんな自己主張が強くて変人ばかりなのですが(笑)、いじめなど全くなくて仲が良く、結束力がありましたね。そんな昔からの友人たちが、今でも私の映画作りを支えてくれています。


佐々木監督しめ


 また今回の「おクジラさま」は和歌山県太地町が舞台ですが、北海道にもこのように小さい漁業の町や農業の町がたくさんあります。私がもう一つこの作品で言いたかったのは、グローバリズムに押しつぶされそうになっているローカルのことです。映画の中のジェイの言葉「クジラやイルカが絶滅危惧種だと言うけれど、本当に絶滅の危機に瀕しているのは、太地のような小さな町だ」は全く同感。このような小さな町が生き残るためにどうすればいいのかは、太地町だけではなく、北海道も含めた世界中の問題です。そういった視点でこの作品を観ていただければうれしいですね。
 

作品情報

「おクジラさま ふたつの正義の物語」
2017年10月14日(土)より、ディノスシネマズ札幌劇場にて公開
配給:エレファントハウス
(c)「おクジラさま」プロジェクトチーム
監督・プロデューサー:佐々木芽生「ハーブ&ドロシー」
公式HP:http://okujirasama.com/

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Writer

田中 勲

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