2017年08月14日 | 宮永 明子

国の特別天然記念物マリモ発見120周年!マリモってそもそもどんなもの?

湖底に生育する球状マリモ(写真提供:若菜勇)▲阿寒湖の湖底に群生する球状マリモ


国の特別天然記念物に指定されている阿寒湖のマリモ。そのマリモが阿寒湖で発見・命名されて、今年で120年の節目の年を迎えています。いまだ謎も多く、長年にわたって研究や保護の取り組みが続けられているマリモって、そもそもどんな生きものなのでしょうか?マリモの基礎情報をご紹介します!


 お土産として販売されているマリモ(写真提供:若菜勇)▲お土産として販売されているマリモ
 

その昔、阿寒湖のお土産で小さなマリモが入った小瓶をもらったことがあります。
あの丸い緑色のかわいい球体をみて心が癒されたりしたものです。
 
今回は、マリモ研究で世界のトップランナーとして知られるマリモ博士こと、釧路市教育委員会マリモ研究室室長の若菜勇さんにご協力いただき、マリモについて詳しく紹介します。


​阿寒湖畔エコミュージアムセンター、釧路市教育委員会マリモ研究室室長の若菜勇さん(写真提供:若菜勇)▲釧路市教育委員会マリモ研究室室長の若菜勇さん

 

未だ謎の多い神秘的な植物

マリモは水中で生活する淡水緑藻(りょくそう)類の一種。近年まで、形の類似性を根拠に、湖や河川に生育するカモジシオグサに近い種類であると考えられてきましたが、DNAを用いた研究によって、カモジシオグサが属するシオグサ科の仲間ではなく、球化する性質を備えた何種類かの緑藻類からなる未知のグループに含まれることが明らかになり、最近、アオミソウ科と命名されました。
 

球化するアオミソウ科の近縁種「ウイットロキエラ」(写真提供:若菜勇)▲球化するアオミソウ科の近縁種「ウイットロキエラ」



マリモはもともと丸くない?

マリモと言うと緑色の球状の塊を想像するかもしれませんが、実はあの球状のものが一つのマリモというわけではないんです。岩に付いて生きるもの、綿くずのような状態で湖底を漂って生きるものなど、様々。もともとは長さ3~4cmの枝分かれした細い糸の様な形をしています。その糸状の藻が絡み合いながら内側から外側へと延びて放射構造をとり、球状になっていくのです。


着生型のマリモ(左)と浮遊型のマリモ(右) (写真提供:若菜勇)▲着生型のマリモ(左)と浮遊型のマリモ(右) 
 


マリモ発見から120年

今から1世紀以上も前の1897(明治30)年、札幌農学校(現在の北海道大学)の植物学者、川上瀧彌さんが阿寒湖のシュリコマベツ湾で球状の緑藻類を発見し、翌年、植物学の専門誌でその採集記録と和名を発表しました。表面が毛羽立ったイガのような形状をしていることから、「マリモ(毬藻)」と名づけられました。ちなみに、世界で最初の発見は、カール・フォン・リンネがスウェーデンのダンネモーラ湖などでマリモを採取し、コンフェルバ・エガグロピラという学名をつけた1753年にさかのぼります。


ビロード状と表される球状マリモの表面観(写真提供:若菜勇)▲表面が毛羽立ち、「ビロード状」と表される球状マリモの表面

 

世界各地に分布するマリモ

マリモが生育する湖沼は、大きな球状にならないものも含めると、国内では北海道のシラルトロ湖、達古武(たっこぶ)湖、チミケップ湖など、本州では青森県の左京湖や小川原湖、山梨県の富士五湖、滋賀県の琵琶湖など全国で20ヶ所。海外では、ロシアのサハリンやカムチャツカ半島、ボルガ川水系を中心としたロシア平原、アイスランド、バルト海などの北欧、ヨーロッパアルプス、北アメリカの五大湖周辺など広い範囲に分布しています。
 

世界でのマリモ分布図(資料提供:若菜勇)▲世界のマリモ分布図

 

大きな球状マリモの群生地は、世界でも阿寒湖だけ

球状になるマリモは、これまでにアイスランドのミーヴァトン湖やエストニアのオイツ湖などで知られていますが、中でも、直径が30cmに達する大きなマリモが群生しているのは阿寒湖だけといわれています。


阿寒湖全景(写真提供:若菜勇)▲阿寒湖は阿寒摩周国立公園内にある北海道で5番目に大きい淡水湖
 
 
阿寒湖では、北部の浅瀬に球状マリモが群生していて、沖合から吹き込む風によって発生する波がマリモを同じ位置で回転させることによって、全体がまんべんなく成長し、球状に発達すると考えられています。
 

直径34cmの阿寒湖の巨大マリモ(写真提供:若菜勇)▲阿寒湖で見つかった顔よりも大きい直径34cmの巨大マリモ
 

アイスランド・ミーヴァトン湖のマリモは、大きさが10cmほどで阿寒湖には及ばないものの、数と群生地の面積で阿寒湖をはるかにしのぐ規模を有していましたが、水質汚染などによって壊滅的な被害を受け、2014年に絶滅宣言が出されました。
 
 
ミーヴァトン湖(左)とそのマリモ群落(右) (写真提供:若菜勇)▲ミーヴァトン湖(左)とそのマリモ群落(右) 
 

このため、現在では、阿寒湖が世界で最後にただ一つ残された球状マリモの群生地となっています。
 
北海道の阿寒湖は世界的に見てもとても価値の高い、マリモの生育地といえるわけです。
 
 

一般の人も参加できるマリモの保護活動

阿寒湖では1950年代後半から観光客が増え始め、湖水の富栄養化が進み、マリモの集団が急速に縮小しましたが、公共下水道の整備により、1990年代以降に水質は改善され、透明度も回復しています。さらに2016年8月に上陸した台風7号により、マリモの生育を妨げていた水草が大量に打ち上げられ、環境が一気に改善しました。これまで、保護活動は研究者や行政機関が行ってきましたが、最近では市民や観光客も参加できるようになっています。また、壊れたマリモを再生し、それを展示に利用しています。
 

打ち上げられたマリモを湖内へ返還する保護活動(写真提供:若菜勇)▲打ち上げられたマリモを湖内へ返還する保護活動
 
 

マリモを見ることができる阿寒湖の施設は?

マリモで有名な阿寒湖には多くの観光客が訪れますが、生育環境保護のため、マリモの生育地に船を乗り入れて直接観察することはできません。マリモを観察できる施設を紹介します。
 
一つめは「マリモ展示観察センター」です。


マリモ展示観察センターにある水槽「マリモの生態」(写真提供:若菜勇)▲マリモ展示観察センターにある大型水槽
 

マリモの生育地に近いチュウルイ島にある施設で、世界一美しい球状マリモの生態を紹介するさまざまな展示があり、湖底を再現した大型水槽では天然のマリモたちが静かに眠っている様子を見ることができます。施設へは、遊覧船で移動。冬季間は閉館しています。
 
そして、二つめは、若菜先生がマリモの研究・教育普及活動を行っている「阿寒湖畔エコミュージアムセンター」です。
 

阿寒湖畔エコミュージアムセンター外観(写真提供:若菜勇)▲阿寒湖畔エコミュージアムセンター周辺には探勝路があり、阿寒摩周国立公園の自然を楽しめます
 

2002年にオープンした阿寒摩周国立公園阿寒地域の自然環境を紹介する環境省の施設です。阿寒湖のマリモや淡水魚(イトウ・ヒメマスなど)の水槽展示のほか、動植物の標本などが、床一面に敷き詰められた阿寒湖周辺の航空写真と共にわかりやすく展示されています。
 
 
阿寒湖畔エコミュージアムセンター水槽(写真提供:若菜勇)▲阿寒湖畔エコミュージアムセンターのマリモ水槽
 

また、阿寒湖では、「阿寒湖まりも夏希灯」が今年も8月31日まで開催中です。第21回ふるさとイベント大賞「優秀賞」を受賞したイベントで、神秘的なマリモに見立てた緑に光るカプセルが暗い湖面に幻想的な光景を創り出しています。
 

阿寒湖まりも夏希灯(写真提供:阿寒観光協会)▲マリモに見立てた光の球に願いと希望を込めて遊覧船から湖に流します(写真提供:阿寒観光協会)
 

そして、この8月には東京・上野の国立科学博物館でマリモ企画展が、また10月には阿寒のマリモを発見した川上瀧彌さんの業績を再評価するための国際シンポジウムが阿寒湖温泉で開かれます。さらに12月には川上瀧彌さんが初代館長を務めた国立台湾博物館でマリモの特別展が予定されていて、これを機に、マリモと阿寒湖の世界的な価値も、さらに高まると期待されています。
 

氷上マリモ観察会の様子(写真提供:若菜勇)▲冬に行われる「氷上マリモ観察会」
 

阿寒湖で発見されて120周年、マリモ・アニバーサリー・イヤーのこの機会にその魅力に触れてみませんか?

 

関連リンク

・マリモ関連情報
HP/http://www.marimo-web.org/index.html
・阿寒湖畔エコミュージアムセンター
HP/http://business4.plala.or.jp/akan-eco/
・マリモ展示観察センター
HP/http://www.city.kushiro.lg.jp/kyouiku/shougaigakushuu/bunkazai/0014.html
 http://www.akankisen.com/exMarimo.html
・阿寒湖まりも夏希灯
HP/http://www.lake-akan.com/news/?p=76

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Writer

宮永 明子

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