2017年07月13日 | 小西 由稀

大地を創る人。50余年歴史を重ねた養鶏場を受け継ぐ・村上範英さん、能藤一夫さん(下川町)

北海道の北部に位置する、人口3300人の下川町。この町で53年続く「阿部養鶏場」から事業継承し、新規就農をした村上範英さんと能藤(のとう)一夫さん。歴史ある養鶏場を受け継ぐ覚悟と挑戦について、お話を伺いました。
 

阿部養鶏場の村上さんと能藤さん▲株式会社阿部養鶏場の取締役営業部長の村上範英さん(左)、生産部長の能藤一夫さん

 

きれいな卵黄の色が印象的な「下川町の酵素卵」

コツンと割った卵から現れたのは、レモンイエローのきれいな色をした卵黄。阿部養鶏場のブランド卵「下川町の酵素卵」は、ほんのりピンク色をした殻の色と、卵黄の自然な色合いがとても印象的です。
 
阿部養鶏場の「下川町の酵素卵」
 
「卵は、一般的には殻の色が親鶏の羽の色、卵黄の色が食べたエサの色だといわれています。阿部養鶏場では、ソニアという珍しい品種の鶏を飼育。エサはトウモロコシや米ぬかなどを自家配合して与えています」と、生産部長の能藤さん。
 
ちなみに、香辛料のパプリカなどをエサに加えると、黄身はオレンジがかった鮮やかな色合いになるそうです。
 
鶏舎を覗くと、確かに、ソニアの羽毛は卵の殻の色と同じ!淡い茶色がとてもきれいです。
 

ソニアという品種を飼育▲ケージ飼いのスタイルで、1万1000羽以上の鶏を飼育している鶏舎。臭いが少なく、衛生的に管理されている
 

「養鶏場は森や小麦畑に囲まれた静かな立地なので、外的ストレスが少なく、鶏にとっては快適な環境です。ただ夏は30度、冬はマイナス30度にもなる厳しい気候。先代の阿部さんがさまざまな品種を飼育し、この環境にぴったりな品種がソニアだったのです」と、営業部長の村上さん。
 

オートメーション化された鶏舎だが、鶏の健康状態は人間の目でチェック▲給餌や採卵は機械化しているが、鶏の健康状態は人間の目でチェックする
 

下川町の酵素卵というブランド名は、エサに由来します。数種類の酵素で米ぬかを発酵させた有機飼料に加え、旨味につながるカニ殻、腸内バランスを整える竹炭などを自家配合。親鶏の健康状態がダイレクトに卵にも伝わるため、エサの内容は重要。“健康な卵は、健康な母体から!”です。
 

エサ▲酵素で米ぬかを発酵させた有機飼料(写真上)。スタッフの佐藤飛鳥さんは埼玉県出身。「下川町が好きで、Iターンしました。移住して、時間的にも気持ち的にもゆとりができて嬉しい」(写真下)

 

外食産業から北海道を元気に!

元々、阿部養鶏場は家族経営の養鶏場でした。阿部さんの酵素卵は地元で愛されているのはもちろん、本州の顧客への発送も多く、根強い人気を誇っていました。
 

運ばれる卵▲親鶏は1日1個の卵を産む。その卵が集められ、選別包装施設へオートメーションで運ばれる
 

ところが、阿部さんには後継者がなく、養鶏事業の継承先を探していました。そこで出会ったのが、札幌に本社を置く「株式会社イーストン」。「ミア・ボッカ」や「いただきコッコちゃん」など、全国で40店舗以上を展開する外食企業です。
 

選別包装施設の様子▲鶏卵の選別包装施設「GPセンター」では、洗卵から卵の検査、パック詰めまで行われる
 

村上さんは、同社のバイヤーとして北海道各地を訪ね、良質な食材を掘り起こし、生産者と店舗を結ぶルートづくりの仕事をしていました。
 
「生産者のみなさんのご苦労を間近に見ていたので、会社として“第一次産業を応援したい”という思いは以前からありました。
長く愛され、良質な卵を生産する養鶏場が廃業してしまうのは惜しい。外食産業から北海道を元気にするためには、おいしい卵を食べて喜んでもらうのが一番。そして、地方創成の一助になれば…という気持ちもあり、事業継承を決めました」。
 

鶏舎の様子▲防疫性を重要視した鶏舎。換気をまめに行い、空気の流れをよくしている
 

2016年、約一年にわたって阿部さんと一緒に働きながら、仕事を覚えたという村上さんと能藤さん。老朽化が目立つ鶏舎などの施設を新築した以外、阿部さんから教わった生産方法はそのままに、歴史ある養鶏場の名前ごと受け継ぎました。

 

卵に無限の可能性をのせて

下川町の酵素卵は、生臭さはなく、あっさりしているのに旨味を感じます。卵黄の色合い同様、きれいな味がする卵という印象です。「飽きずに毎日食べたくなる。そんな味わいなんだと思います」と、村上さん。
 
卵
 
生きものと接する仕事。大変なことも多々ある中、励みになるのは、お客様からいただく感想だと言います。能藤さんが、こんなエピソードを教えてくれました。

能藤さん

ある時、阿部さん時代の顧客から「余命を告げられた母親のために」と、急ぎの注文電話があり、すぐに発送したそうです。
「お亡くなりになる前に、無事に卵を食べることができたそうです。ひとが最期に食べたくなる味なのだと思うと、この卵を引き継いで守っていかなければならないという思いが、より一層強くなりました」。
 
村上さん
 
また、村上さんもこんな話を聞かせてくれました。
「産みたての卵って、ほんのり温かいんですよ。あー、命をいただいているんだなぁって、あらためて実感します。
弊社の店舗でも玉子焼きなどのメニューでお出ししていますが、生産から販売まで一貫して行っているからこそのメッセージを、いろいろな形でお伝えできたら…と、思っています」。
 
手にのせた卵
 
下川町ではアスパラやトマトの生産が盛んです。「今後は下川産の農産物を鶏のエサなどに活用していく方法も探っていきたいと思っています」。
また、「将来的には卵を使った下川町産の商品で、六次化にも挑戦していきたい」と、村上さんと能藤さん。そう語る表情は、すっかり生産者の顔付きです。
 
卵に無限の可能性をのせて、今日も下川町の酵素卵を送り出します。

村上さんと能藤さん 

 

関連リンク

株式会社阿部養鶏場
※下川町の酵素卵はリンク先から取り寄せが可能です。

 

「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。

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Writer

小西 由稀

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