2017年07月08日 | うずらはしちあき

情熱の仕事人。人をつなぐ北海道の食物語を発信。北海道食べる通信・編集長「林 真由」

北海道食べる通信の編集長、林真由さん

北海道の生産者の物語と、その生産者が育てた食べものをセットで講読者に届ける「北海道食べる通信」。編集長を務めるのが、林真由さんです。北海道の魅力を発掘・発信しながら、食をつくる人と食べる人の豊かなつながりづくりに取り組んでいます。

 

地元・十勝を見つめてみて

「食べる通信」は、東日本大震災をきっかけに2013年に東北で誕生。生産者に焦点をあてた、定期講読型の食べもの付き情報誌です。

その取り組みは、地方の食のつくり手と都市の食べる人をつなぎ、一次産業とその現場である地域を元気にしようとするもの。現在はビジョンを共有しながら、発行元も編集長も多様に全国で38の食べる通信が発行されています。
 
「北海道食べる通信」の創刊は2015年6月。林さんが立ち上げました。


取材に応じる北海道食べる通信編集長の林真由さん▲林 真由さん 株式会社グリーンストーリープラス 代表取締役:1979年生まれ、帯広市出身。ヤフーを経て、2005年十勝毎日新聞社に入社。06年より、新規事業として東京・銀座コリドー街に立ち上げた「お取り寄せダイニング 十勝屋」の運営にあたる。15年6月「北海道食べる通信」を創刊、編集長に就く。北海道フードマイスター、ジュニア野菜ソムリエ


食の宝庫・北海道を象徴する十勝地方。青く広い空の下に、季節で色を変える広大な畑と防風林が織りなす風景が広がります。その十勝・帯広が林さんの故郷です。
 
大学進学を機に東京へ。卒業後は大手IT企業で働きながら、都会の生活を謳歌しました。「田舎から早く出たい」と十勝を離れた林さんにとって、闘病中だった父親を見舞う度々の帰省が、地元を見つめる時間にもなりました。新鮮だったのは、十勝では普段口にするものがおいしいということ。改めて地元の良さに気づかされたといいます。


パソコンに向かう北海道食べる通信編集長の林真由さん▲現在は東京と北海道を行き来しながら活動


帰郷し転職した先の新聞社で、十勝の生産物をPRするためのレストランを東京に出店する新規事業を任されました。2006年、銀座に「お取り寄せダイニング 十勝屋」を開店。飲食店の立ち上げが、食材の生産現場とかかわる一歩目となりました。
 
プロジェクトを動かしていたころ、十勝を訪れた道外の友人から、こんな言葉をもらいました。「あなたは神様に選ばれて、こんなに素晴らしいところに生まれたんだね」。言葉は林さんのなかに入って、響きました。

 

十勝から北海道へとフィールドを広げ、
“会いに行きたくなる食物語”を届ける

「農業を営み、十勝のあの景観をつくっている生産者の思いをもっと多くの人に伝えたい」。拠点を再び東京に戻し、レストランの運営を手がけるなかで、林さんは思いを強くしていました。
 
そんな折に「東北食べる通信」に出会ったのです。食べる通信が取り組んでいることと、自身の思いが重なり、また、そこから派生させて様々なコンテンツをつくることができるとも考え、北海道の食べる通信を立ち上げるに至りました。


北海道食べる通信の冊子▲北海道食べる通信は隔月発行(偶数月)。「冊子+食材」を1号につき道外3,980円・道内3,500円(送料・税込)でお届け。北海道食べる通信のWebサイトから申し込み(会員登録)できる


「最初は発行エリアを『十勝食べる通信』で準備していたのですが、北海道に期待される食材を考えて、北海道全体に範囲を広げることを想像してみた。私自身がまだまだ知らない食材があることに気がつき、それらの生産者との出会いを考えるととてもワクワクしたんですよね」と林さん。
 
現在、北海道食べる通信は650名の購読者をもち、このうち6割が首都圏をはじめとする道外の都市在住者で、3割が北海道在住者といいます。


読者ツアーの案内をする北海道食べる通信編集長の林真由さん▲取材にイベントに生産者探しにと、道内各地を動き回っている林さん 写真提供:株式会社グリーンストーリープラス


編集テーマは、「会いに行きたくなる食物語」。読んで食べて、その土地に足を運んでもらうのが狙いです。

たとえば、利尻島の海に生きる漁師、ジビエを十勝から全国に発信する食肉料理人集団というように、毎号1人(1組)の生産者を特集。その人の生きざまや考え方、自然とともにある食材の生産の道のりが濃密に綴られています。加えて食材の調理法や、地域のスポット情報などが紹介されています。
 
取り上げる生産者・食材は、北海道の食に精通したプロフェッショナルや、活動するなかで出会った人たちからの情報・意見をもとに選定し、林さん自ら取材して執筆。今後は制作の面でも広がったネットワークを生かしていこうと考えているそうです。

 

人と出会いながら、つくる人と食べる人のつながりを紡ぐ

北海道食べる通信の読者ツアー、黒毛和牛生産者を訪問時の様子▲北海道食べる通信の読者ツアー「おかわりツアー」で、創刊号で特集した黒毛和牛を飼育する松橋農場(十勝管内・更別村)の松橋泰尋さんを訪問 写真提供:株式会社グリーンストーリープラス


記事を読んで思いに触れ、食材を調理して食べる。それで終わるのではなく、読者専用のFacebookグループで生産者と交流する、読者ツアー「おかわりツアー」で生産者に会いに行く。つくる人と食べる人が互いに顔を見てつながる場を設けています。


北海道食べる通信の読者ツアーにて参加者の集合写真▲松橋農場にて 写真提供:株式会社グリーンストーリープラス


「今は東京生まれ・東京育ちで帰る故郷のない人が増え、都会で生活する人と食の生産現場との距離がすごく遠くなっています。たとえば家庭で鮭をさばいて、いくらを漬ける。都会ではそうした世界観が薄れ、食べものを単に“モノ”として捉えている人も多い。普段買う食材もつくる人を想像できれば、選ぶ基準が変わってくると思うんです」と林さん。


北海道食べる通信の読者ツアーで訪問しためん羊牧場の羊たち▲おかわりツアー、茶路めん羊牧場(釧路管内・白糠町)へ  写真提供:株式会社グリーンストーリープラス


「食べる通信は媒体をつくっているわけでも食材の通販をやっているわけでもなく、コミュニティーをつくっていると思っています」といい、そして続けます。
 
「“マイ農家・マイ漁師”と応援する生産者を見つけて、その人たちに寄り添う、CSA(Community Supported Agriculture=地域支援型農業)の考え方にシフトしていくような読者が増えたらと。新しい食・経済の流れを生産者も読者もみんなで一緒につくっていきたいと全国の食べる通信が活動しています。なぜかといったら、日本の伝統ある魅力ある食の世界を守りたいからなんです」と、目指す方向を語ります。
  
「“会いに行けるアイドル”ではないですが、北海道の“会いに行ける生産者”をどんどん発掘して、つくる人と食べる人の精神的なつながりを生む、より関係を深められる場を増やしていきたいですね」。


北海道食べる通信の読者ツアー、アスパラ生産者訪問時の様子▲おかわりツアーから。第7号で特集した、アスパラ専業農家・押谷ファーム(空知管内・長沼町)の押谷行彦さんを訪問 写真提供:株式会社グリーンストーリープラス


まだ知らない北海道がある。実感したのは、利尻島の漁師を取材するため初めて道北を訪れたときでした。稚内に向かう日本海沿いのオロロンラインを北上して広がった風景を目に、別世界に踏み入れたような感覚を味わったといいます。
 
そんな心動かされた体験をツーリズム企画へと発展させ、北海道の地域の魅力を道内外に、さらに世界へも発信していきたいと林さんは考えています。「誰もがうらやむようなこの北海道に生まれた人は、みんな神様に選ばれた人なんじゃないかなと。生産者さんをふくめ多くの人がそう思ってくれるとしたら、もっともっと発信できる魅力があると思っています」。


北海道食べる通信の冊子を持ち笑顔の林真由編集長

自身にとって食べるとは?インタビューの結びに、そんな質問を投げかけてみました。
「一生のうちに食事ができる回数は限られています。1日3食、それをいかに豊かなものにするか。食べるとは、豊かな体験を重ねていくこと。私はそう捉えています」。
 
北海道の魅力的な生産者を知ってほしいという思い、人との出会いが原動力。まっすぐな眼差しからも思いの強さが伝わってきました。

 

関連リンク

北海道食べる通信Webサイト
北海道食べる通信Facebookページ
お取り寄せダイニング 十勝屋

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