北海道の土から生まれた器たち。「隆香窯」/小樽市

小樽市春香(はるか)町。国道から少し奥へ入った場所に、目指す隆香窯はありました。自然に囲まれた工房で一人土に向かうのは陶芸家、上田隆之さんです。





「北海道で作るんだから、土も灰も北海道のものを使う。それが一番、ムリがなくていいよね」。
そう話す上田さんが小樽に窯を開いたのは1996年。道内を歩いて採取した土と、周辺の草木や稲わらをストーブで燃やして得た灰から釉薬をつくり、作品を制作しています。







生み出すのは、茶碗や皿など生活用の器たち。自然な色合いの器は、素朴な中にも力強さとやさしさがにじみ出ているように感じます。
「デコラティブなものは自分の中でもういいかな、と(笑)。日常で使ってもらう器だからこそ、余分なものがなくて健康的で、それが美しいかな、と思うんですよね」。








美術学校を卒業後、グラフィックデザイン、音楽、写真、そして役者と、様々な表現方法を試みた20代を経て、上田さんが陶芸の世界に飛び込んだのは30歳の時。文献や地質の本を紐解きながら、土使いを覚えたという独学からのスタートでした。
道産の土は、焼き物には向かない要素があるといいます。採取してきた土を乾燥させた後、粘土にしてテストをする。形にするまでには、実験と研究、試行錯誤の連続だったそう。また、釉薬の原料となる灰づくりも繰り返してきました。





「植物から灰を作って使うのは、焼き物のオーソドックスであたりまえの技法。やってみると素材によって発色が違って、買った釉薬にはない趣が出てきて」。

道内にはまだ触っていない土がたくさんあり、新しい土と出会うとわくわくするそうです。
「土が変わると、すべてが変わる。土と灰が出会って、様々な表情を見せてくれる。ぜんぶ自然に生かされているんだよね」。





人と器は、いろいろなつながりを潜めているという上田さん。「それを見つけたり感じたり、楽しんでもらえたらうれしいですね」。

※上田さんの作品には、小樽の「ホクレンふうど館」、札幌の「陶遊」、「YUIQ(ユイク)」、「ギャラリー遊」で触れることができます。また、2・3月は下記のイベントに出展されます。ぜひ足を運んでみてください。