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公開 | 小西 由稀

大地を創る人。北の海でブランドワカメを育て、採る漁師・田村均さん(北斗市)  

シャキシャキとした食感と磯の香りが魅力の春ワカメ。函館の隣町、北斗市の茂辺地(もへじ)地区で塩蔵される春ワカメは、「海峡わかめ」のブランド名でも知られ、その多くを食品会社が買い取るほど、質の高い産地です。今回は、ベテラン漁師の田村均さんにお話を伺いました。

 
ワカメ漁師の田村均さん▲上磯郡漁業協同組合はまなす支所、「幸丸」の船主・船頭の田村均さんは72歳。中学卒業後に漁師に。ワカメのほか、フノリやホヤ漁なども行う
 
 

養分豊富な山・川・海が、上質な養殖ワカメを育む

 3月の早朝は、まだ身を切るような寒さ。茂辺地の漁港から船で10分ほど行った函館湾がワカメの養殖場です。

 
船外機船を操縦する田村さん▲船外機船を出す田村さん。茂辺地の前浜では昆布やアサリ、ウニ、鮭、カレイなど多種目が漁獲される

 
養殖場に着き、「幹綱(みきつな)」と呼ばれる太いロープを引き揚げると、そこには黒々とした立派なワカメがびっしり!ワカメ漁は例年1月~4月中旬に行われますが、塩蔵ワカメにするのは3月初旬~4月中旬に水揚げしたものだけ。
 
茂辺地地区は山の養分を含む川水が多く注ぐため、ワカメの成長が早いといわれています。肉厚、でも柔らかい上質な春ワカメに育つのも、その辺に環境的な利点がありそうです。

 
函館湾のワカメの養殖場▲ワカメの全長は1m~1m30cmほど。茎(浜では芯と呼ぶ)がかなり太い
 

田村さんの解説付きで、ほかの漁師さんの沖仕事を見せてもらいました。
ワカメの漁獲は、幹綱から1本ずつ手作業で刈り取り、さらに枯れた(色が変わった)葉先など、余分な部分を丁寧にカット。

 
ワカメの刈り取りの様子
 
「春先のワカメは十分に育って状態もいいけれど、海水温が上がると枯れる部分が増えてくる。取り除いたところは、ウニのエサになるから海に戻すんだわ」。昔からこの浜の漁師が自主的にやってきたことなのだそう。


ワカメの刈り取りの様子

それにしても、ワカメ漁は重労働。乾燥ワカメの軽さからは想像できないほど、生のワカメは重量感があり、船に積んでいる青いコンテナ1つ刈り取ると30kgほどの重さに。風の冷たい海上での作業は、余計に体力を奪われます。

 
田村さんの妻の明子さんは陸仕事を担当▲田村さんの妻・明子さんは、陸仕事を担当
 
 

一瞬で鮮やかな緑色に!
美しい色と食感、風味は春ワカメならでは

 刈り取ったワカメは、港に戻るとすぐに「上磯郡漁協はまなす支所」の加工場に運ばれ、塩蔵に処理されます。
 

刈り取り黒々としたワカメ

お湯に入れると一瞬で鮮やかな緑色に
 
海水を沸かしたお湯に入れると、黒々したワカメが一瞬にして鮮やかな緑色に!この美しい色合いは、葉が成熟した証拠。春ワカメなればこそ、です。

 
塩蔵処理をするワカメ
 
この後、冷水で余熱を取り、塩をまぶし馴染ませ、保存のために一旦冷凍。少量ずつ芯抜きや選別を行ってからパッケージ詰めにしていきます。

 
北斗市の茂辺地地区で採れたワカメは「海峡わかめ」のブランド名で知られる▲水洗いをしながら少し塩抜きすれば、そのままで食べられる手軽さも人気

 

自分の工夫が結果に繋がる面白さ

 茂辺地地区では、ワカメの養殖は50年ほど前から始まりました。最盛期には150戸が漁を行っていましたが、後継者不足で現在ではわずか20戸に。それでも年間約200tを漁獲し、そのほとんどが食品会社の契約生産です。


海で作業をする田村さん

田村さんは父親から引き継ぎ、ワカメ漁を始めたといいます。養殖ワカメは、次のワカメを育てる採苗も漁師の仕事になります。
 
茂辺地地区では7月中旬~8月中旬、水槽に汲んだ海水の中で、めかぶが放出した胞子を縄=種糸(たねいと)に付着させます。その胞子が発芽した後、今度は海に張った幹綱に種糸を巻きつけて、本養成します。

 
市場出荷用のわかめのめかぶ▲市場出荷用に刈り取った春のめかぶ。採苗用のめかぶは刈り取らず、夏まで海中の幹綱に残しておいたものを使う
 

「あとは海が育ててくれる。オレはなんもしねぇ」と笑う田村さんですが、ワカメの胞子は肉眼では見えないミクロの世界。いちいち顕微鏡を使って付着させる訳ではないので、経験と技術、工夫によって、ワカメの成長が違ってくるといいます。
 
「こればかりは、口では説明できないんだわ。種付けはその年の気候や水温でも違うし、幹綱をどれくらいの深さで張るかとか、それぞれの漁師の考え方次第。
今度はこうやったら良くなるんでないかと、ちょっとちょっと、自分で工夫できるのが面白い。うまくいけば励みにもなる。それがいんでないかい」。


語る田村さん
 
70歳をすぎても「まだ若手だ」と田村さんが話す通り、茂辺地の浜では80代の漁師が現役でバリバリと仕事をしていました。
 
力仕事が多い漁業では、高齢な漁師には厳しい作業もあるため、漁協職員はもちろん、自分の仕事が終わった漁師が作業を手伝う場面が多く見られました。高齢化や人口減少が進む中、支え合いながら共働で浜を盛りたてる。これからの時代に大切なひとつの形を見せてもらった取材でもありました。

 
荷揚げの作業▲高齢の漁師を手伝いながら、ワカメの荷揚げ作業は続く
 
 

「大地を創る人」とは

 さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。

 

関連リンク

上磯郡漁業協同組合
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Writer

小西 由稀

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