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公開 | 孫田 二規子

大地を創る人。雪室熟成でじゃがいもをさらにおいしく。十勝・芽室町の尾藤光一さん

長期間の熟成貯蔵で、しっとりと甘くなったじゃがいも、食べたことありますか? 雪室(ゆきむろ)で熟成貯蔵したじゃがいもが、東京のレストランなどで評判を得ている芽室(めむろ)町の「尾藤農産」。生産者の尾藤光一さんを訪ねました。


芽室町の尾藤農園の尾藤光一さん
 

雪室熟成のじゃがいもは甘くておいしい!

帯広(おびひろ)から車で30分。この地に根ざした農家の4代目である尾藤さんは、10年くらい前から、じゃがいもの「雪室(ゆきむろ)熟成」に挑戦しています。

熟成させたじゃがいもは、自社ホームページから販売するほか、首都圏を中心とした飲食店へ。その味で、多くの人を楽しませています。


芽室町の尾藤農産のじゃがいも▲尾藤農産のじゃがいも


「なんで雪室なの?冷蔵庫じゃダメ?なんて聞かれることもあるんですが、冷蔵庫だと温度が安定しないし、除湿されて、じゃがいもが乾いちゃうんだよね」と、尾藤さん。

蓄えた雪で農作物を冷やす〝天然の冷蔵庫〟である雪室の中は、自然に溶ける雪の水分の効果で、室温2度~4度、湿度90%以上をキープ。この低温多湿な状態が、農作物の保存において、非常に望ましいのです。

実際に中を見せてもらうと、雪がどっさり! ちょうど取材時(4月中旬)の数日前に投入したばかりで、このまま秋まで持たせるそう。

冬はまた新しい雪を入れるのかと訊ねると、「10月~2月は寒いので、わざわざ冷やす必要はないのさ」。確かに。むしろ作物を凍らせない工夫がいるといいます。


芽室町の尾藤農産の雪室▲雪の量は「300tは入っていると思う」。空気がひんやりしっとりしています


昨年は2年熟成に成功し、現在は〝2年半もの〟ものも出荷中。熟成させたじゃがいもを食べてみると、食感はホクホクというより、なめらか!そして甘い!寝かせている間に、でんぷん質が糖に変わるからです。

じゃがいもは新じゃがばかりがおいしいわけではなく、熟成させた別のおいしさもあるのだと、気付かせてもらえます。気分や料理で使い分けたいですね。


芽室町の尾藤農産の雪室の中で尾藤さん▲雪室の中の尾藤さん。手前の段ボールがじゃがいもです

 

健康な土づくりから「豊かないい農業」を

尾藤さんは、土壌研究グループSRUのメンバーであり、地元の農家の4代目仲間5人と共に、20代の頃から健康な土づくりを実践しています。

※土壌研究グループSRU についてはこちら

「土の中を科学的に分析し、健康な作物を持続的に作れる農業を実践していこう、という取り組みです」と、尾藤さん。


芽室町の尾藤農産の尾藤さん

具体的には、毎年、収獲が終わったあとの畑の土をアメリカ・オハイオ州の民間ラボに送って診断。ミネラルバランスのとれた元気な土に戻れるよう、その時の状態に合わせた適正な肥料や施肥の方法を処方をしてもらうのだといいます。

「野菜の栄養や旨味は、土から持ち出されていますから、持ち出されたあとの土は、当然、栄養が不足した状態です。ですから、適正な施肥を通して、土の中の微生物の活動を活発化させ、生態系の回復に務める。そうすると、無駄な肥料をやらずとも、人間が手をかけすぎずとも、いい作物ができるんです」。

 土の中は目に見えませんが、土壌診断による科学的根拠があれば、例え不調があっても原因がわかるため、余計な肥料を与えるなど無駄に経費を使う必要もなく、利益も出していけるといいます。

「健康な土づくりに取り組むことは、豊かでいい農業ができる、ということでもあるんです。20年やってきて、そう確信しています」。

 

ワイン用ぶどうの栽培もスタート

数年前からは、これまでの取り組みで得た経験や知恵を生かし、ワイン用のぶどうの栽培も始めました。本場フランスのワイナリーにあるような、濃いめ、重ための味を目指しています。


芽室町の尾藤農産のぶどう畑▲〝冬囲い〟されたぶどうの木


また、尾藤さんは、JR芽室駅近くにある、大正時代の赤レンガ倉庫郡を再利用した焼き肉店やバーの経営にも携わっています。

実はこれ、この土地を開拓してくれた先代を思ってのこと。

「倉庫には当時、赤い宝石と呼ばれる小豆、つまりはとても大事なものを保存してたんです。それを思うと、なくしてしまうのは申し訳ないというか」。

 それで仲間と相談し、再利用することに決めたのだといいます。


芽室町の尾藤農産などで経営する赤レンガ倉庫の店舗▲赤レンガ倉庫を利用した焼き肉店とバー

 

日本の食料基地を支えるのは一流の農業人

日本の食糧基地・十勝(とかち)の一員である芽室町。尾藤さんはそこで、いかなる気持ちで農業に携わっているのでしょうか。

「家族に豊かさを感じてもらえるか、多くの人々においしい作物を届けられるか、政治や環境がかわろうとも、それを続けられるか。そんなことを考え、何かに頼り切らないこと、何かのせいにしないこと、それを心がけていますね」。

最後に、そう語ってくれた尾藤さん。

責任と誇りを持って仕事に励む、一流の農業人の姿を見せてもらいました。


芽室町の尾藤農産の尾藤さん

「大地を創る人」とは
さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。
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