2017年03月17日 | 宮永 明子

北のウォール街の栄華を映す建造物に同時代の美が集う「小樽芸術村」

ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫「ステンドグラス美術館」

小樽の栄華を映す歴史的建造物の複合的芸術空間「小樽芸術村」が、いよいよ今年夏にグランドオープンします!その前に、現在オープンしている旧高橋倉庫「ステンドグラス美術館」と旧荒田商会「アール・ヌーヴォーグラス館」をご紹介!かつて北のウォール街と呼ばれた時代の光り輝く美が集う空間にタイムトリップしましょう。

 

小樽運河のすぐ前に複合的芸術空間が誕生

1872年、色内村に石造ふ頭が造られて以来、小樽は北海道の海の玄関口として栄え、昭和初期にかけて金融機関や船会社、商社が建ち並び、経済の中心地として北海道が発展する基礎をつくりました。
 

ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫「ステンドグラス美術館」(左奥)と旧荒田商会「アール・ヌーヴォーグラス館」(右手前)▲旧高橋倉庫「ステンドグラス美術館」(左奥)と旧荒田商会「アール・ヌーヴォーグラス館」(右手前)。道を挟んで向かい側が小樽運河です。撮影時は「小樽雪あかりの路」開催直前のため雪のオブジェが!
 

小樽芸術村は、その19世紀から20世紀初めに建てられた「旧荒田商会」「旧高橋倉庫」「旧三井銀行小樽支店」の3棟を芸術空間とし、同じ時代の美術品を展示して豊かな気持ちを育んでもらおうと株式会社ニトリホールディングス代表取締役会長の似鳥昭雄さんが開設しました。
 

ニトリ小樽芸術村 完成予想全体図▲「小樽芸術村」完成予想全体図(写真提供:小樽芸術村)
 

まずは、1994年に小樽市指定歴史的建造物に指定されている旧高橋倉庫「ステンドグラス美術館」へ。出迎えてくださったのは案内をしてくれる学芸員の渡邉洋子さんです。


ニトリ小樽芸術村の学芸員、渡邉洋子さん▲学芸員の渡邉洋子さん。エントランス奥には、早速、ステンドグラスが見えています!!

 

歴史的建造物と同じ時代を生きたステンドグラスたちが作り出す心洗われる芸術空間

旧高橋倉庫は、実業家、政治家の高橋直治が、大豆の倉庫として1923年に建てた木骨石造2階建て。高橋直治はヨーロッパへ小豆を輸出し、内外の相場を左右したことから「小豆将軍」の異名をとり長者番付の10本の指に入る豪商だったそうです。
 
かつて大豆の倉庫だった木造の建造物は、同時代(19世紀末から20世紀初め)にイギリス教会の窓を飾った約140点のステンドグラスにより、荘厳な芸術空間へとよみがえりました。


ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館▲壁一面に所狭しと填められたステンドグラスたち

 
イギリス製の芸術作品が不思議と似合うのは、梁を二重に架け2本の束を左右対称に立てるクイーンポストトラス(対束小屋組)だからなのかもしれません。


ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館のクイーンポストトラス構造の様子▲ステンドグラス美術館の天井を見上げるとクイーンポストトラスの構造がよくわかります

 

こんなに間近でステンドグラス芸術作品を観たことがありますか?

ステンドグラスの絵の数々は、ヴィクトリア女王統治下の華やかな時代からエドワード朝時代、そして第一次世界大戦へ進んでいくイギリスの歴史の縮図となっています。作品は壁の至る所にはめ込まれていて、作品から30、40cmのところまで近づくことができるので、表面の凹凸や細かな線まで観ることができます。
 

ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館にある「種まく人」の鳥▲「種まく人」に描かれている鳥。羽の模様など細かい線を近くで観られます

 
芸術作品のステンドグラスをこれほどまで近くで観られるところは、他にはないでしょう。渡邉さんが覗き込んでいるように間近で堪能できます。


ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館にある「十字架のキリスト」▲イギリスを代表するステンドグラス工房「チャールズ・イーマー・ケンプ工房」で作られた「十字架のキリスト」。最盛期は数百人の職人がいる工場の様な大きな工房でした

 

ステンドグラス以外の貴重な作品とは?

そしてとても貴重なのが、下絵の展示です。ステンドグラスは基本、教会の窓にはめ込まれるもののため、下から人が見上げた時にちょうどバランスよく見えるように描かれています。つまり、描かれている人物の頭を大きめに、肩は“なで肩”となっています。この美術館は2階からも眺められるので、実際のステンドグラスに描かれた人物を同じ目線で確認できます。チェックしたいポイントの一つですね。


ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館にある下絵▲第二次世界大戦中、多くの原画や資料が焼失した中で、難を逃れ残っているこの原画は貴重なもの。これをもとに作られたステンドグラスが今もどこかの教会の窓に残っているかもしれません

 
そして、版画も展示されています。当時はカラー写真の技術が確立していなかったので、保存資料として着色した版画を残していました。主に壊れたステンドグラスを修復するために使われていたとのことです。


ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館▲彩色前の線描きの状態の原画と、色をつけた細かい指示を記録した後の版画が展示されています

 

時代の世相や人々の想いが込められているステンドグラス

他のステンドグラスとは少し趣の違う2枚のパネルがありました。20世紀初めに作られた「聖オズワルドに守護される兵士」と「リチャード1世に守護される兵士」は、戦争に行く兵士の家族が無事を祈って教会に寄進したものといわれています。ステンドグラスには、その時代の世相や人々の想いが込められているのです。


 ニトリ小樽芸術村 旧高橋倉庫 ステンドグラス美術館にある「聖オズワルドに守護される兵士」と「リチャード1世に守護される兵士」▲右のパネルの背後の方にラクダが描かれているので中東の戦線へ行く兵士と推測されます
 

美しく荘厳な光の空間に身を置くと時の流れもゆっくりと感じ、心洗われることでしょう。

 

建物と作品の両方からその時代の香りを感じる

続いて、美しいガラス工芸を鑑賞できる旧荒田商会「アール・ヌーヴォーグラス館」へ。旧荒田商会は本店事務所として1935年に建築された木造2階建。1994年に小樽市指定歴史的建造物となりました。内壁の漆喰や窓枠は創建時の形態を伝えているので、展示されている作品とともに時代を感じ取ることができます。


ニトリ小樽芸術村 旧荒田商会 アール・ヌーヴォーグラス館▲出迎えてくれた階段フロアの照明はルネ・ラリックの作品
 

小樽が貿易港として栄えていた19世紀末、フランスではエッフェル塔が造られ、新たな芸術運動、アール・ヌーヴォーがヨーロッパでブームを巻き起こしていました。その時代の作家、エミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリック、ガブリエル・アージー・ルソー、ヴィクトール・アマルリック・ワルターなど、約100点もの花器や照明器具が展示されています。

2階の展示室へ上がると、居心地の良い空間。
 

ニトリ小樽芸術村 旧荒田商会 アール・ヌーヴォーグラス館▲ボール型の照明もガレ工房のもの
 

手前のスペースは椅子や棚などの家具類、奥のスペースにはランプや花器などが展示されていますが、展示作品を照らす照明まで、すべて、アール・ヌーヴォーを代表する芸術作品なんですから贅沢に作品を活用展示しています。
 
19世紀後半、ヨーロッパでは、海を渡ってきた日本美術が賞賛され、絵画、工芸、建築など、さまざまな分野でジャポニスムという社会現象を巻き起こしていました。そういった作品もたくさん展示されています。
 

ニトリ小樽芸術村 旧荒田商会 アール・ヌーヴォーグラス館 エミール・ガレの棚▲作者不明のこのチェストも松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」を絵に描いたような日本的な描写となっています
 

そして、中ほどには光り輝く美が集う、ランプの世界が展開されています。


 ニトリ小樽芸術村 旧荒田商会 アール・ヌーヴォーグラス館の「電気の宮殿」▲うっとりするような美しさの「光の祭典」
 

1879年、世界的に工業化が進む中、エジソンが白熱電灯の実用化に成功しました。その21年後の1900年、パリ万博が開催され、観客が最も注目したパビリオンはフランス主催の「電気の宮殿」でした。各家庭に電気が通り、照明器具は大流行となったとか。ここにはそのアール・ヌーヴォーの作家によって作られたテーブル・ランプが展示されています。その頃、日本は明治33年、当時に思いを馳せながら眺めるのも面白いかもしれません。
 
奥には花器やトレイなどを展示。花、草、昆虫、動物などをモチーフにしたアール・ヌーヴォーの特徴的な作品が数多く並んでいます。そして、アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたる類い稀な巨匠、ルネ・ラリックの作品もありました。


ニトリ小樽芸術村 旧荒田商会 アール・ヌーヴォーグラス館にあるルネ・ラリックの彫刻的な花瓶「つむじ風」(中央)と「ピエールフォン」(右と左)▲ルネ・ラリックの彫刻的な花瓶「つむじ風」(中央)と「ピエールフォン」(右と左)

 

美術館の感動をお持ち帰り!

光り輝く美の作品たちを堪能した後は、ぜひ、ミュージアムショップへ!
ステンドグラス美術館の公式ガイドブックや展示作品のポストカードやクリアファイルなどもあり、鑑賞の感動を持ち帰ることができます。
 

ニトリ小樽芸術村 旧荒田商会 アール・ヌーヴォーグラス館 ミュージアムショップ▲ミュージアムショップには小樽在住の芸術家の作品も販売されています
 
 
今年夏にはグランドオープンする「小樽芸術村」。3つ目の建物「旧三井銀行小樽支店」も着々と準備が進められ、オープンを待ちわびています。
 
その「旧三井銀行小樽支店」も観せてもらうことができたので、後日、潜入リポートとして紹介します。お楽しみに!

 

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Writer

宮永 明子

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