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公開 | 小西 由稀

大地を創る人。大正時代から続く漁法でヤナギダコを獲る漁師・山田明さん(白糠町)

締まった身質と噛むほどに広がる旨味。「ヤナギダコ」は12月上旬~5月上旬、主に太平洋側で漁獲されます。釧路市に隣接する白糠(しらぬか)町は、ヤナギダコで有名な産地。「白糠漁業協同組合タコ縄部会」を束ねる部会長の山田明さんにお話をうかがいました。
 

白糠町のヤナギダコ漁師の山田さん▲「第五十八拓洋丸」の船主、船頭の山田明さん。笑顔が素敵です!

 

過酷な季節に水揚げされるヤナギダコは、
毛ガニやツブ貝を食べて育つグルメ!

 白糠漁港に向かったのは、1月下旬。前日には出漁は難しいと聞いていましたが、風も治まり、奇跡的に快晴。その分、放射冷却現象で冷え込む朝になりました。
 

晴れ渡った白糠漁港。気温はマイナス9度▲気温マイナス10度の白糠漁港。ずっと外にいると、取材のボールペンのインクが出なくなる寒さ
 

帰港した船からはヤナギダコが次々と水揚げされます。北海道では真ダコと呼ばれる「ミズダコ」も獲れますが、こちらは体が大きく水っぽい肉質なのに対し、ヤナギダコは見るからに筋肉質で力強い足が印象的。また、前浜の毛ガニやツブ貝、カジカなどをエサにしているため、白糠産は旨味が違うと築地市場でも評判を集めています。

 
筋肉質なヤナギダコの足▲力強いヤナギダコの足にご注目を!ヤナギダコのほとんどは北海道周辺で漁獲され、特に太平洋沿岸での漁獲高は全体の80%以上を占めている


漁獲したヤナギダコを水揚げ▲水揚げの作業。この中に元気なヤナギダコが入っている。よく見ると漁具の一部が凍っている!真冬の過酷な漁の一端がうかがえる

 

大正時代から続く伝統漁法は、漁具の手入れが大変! 

水揚げ中の船▲白糠漁協タコ縄部会は全13隻。午前3時に一斉に出漁し、午前中には帰港する
 

タコといえば、タコつぼ(箱)を仕掛ける漁法が知られていますが、ここでは「空釣り縄」という大正時代からの伝統漁法が守られています。エサをつけない針を結んだ縄を何本も海底に仕掛け、そこを通るタコが針に引っかかるという漁法です。
 
「白糠の海底は泥なので、つぼは埋まってしまうので不向き。空釣り縄はこの地に合った漁法なんです。それに網と違って、針にかかったまま生きて水揚げできるのも魅力です」。

 
大正時代から続く「空釣り縄」の漁具▲空釣り縄は、海底に張る縄にこのざるのセットをくくりつける複雑な仕掛けに

 
冬~春は荒天が続き、月に10日ほどしか出漁できないことも。「休みが多くて、ラクそうに見えるでしょ?でもね、この漁は陸での針仕事が大変。これが永遠に続くんだわ(笑)」。
 
針仕事とは、空釣り縄の手入れのこと。海底に張る縄の長さは約1,800m。そこに、糸で結んだ針を納めたざるを50枚ずつくくり付けます。ざる1枚につき、針は100~120本。これを1本ずつ手作業で補修するのです。多い時で1日150枚のざる、1万8,000本もの針を使う計算になるので、漁に出られない日も針仕事に追われます。

 
漁具をチェック、補修する山田さん▲左:針先をペンチで整える作業。角度ひとつでタコが掛かりやすくなるという、各漁師の腕の見せどころ。右上:針をつけた赤い糸がよれていないかをチェック。右下:赤い糸が痛んでいる場合は付け替える。山田さんはざる1枚につき30分で補修するが、素人がやると1時間はかかる
 

針仕事は時間と人手を要する作業のため、部会として別な漁法を検討したこともあったそうです。ですが、2軒の漁業者が1隻の船で漁を行う「協業化」などを進めることで、人手不足を解決。「今は縄の数を減らしつつ、安定した水揚げと価格を維持できる体制を考えています。地域にあった、そして環境にも無理がかからない、この漁法を守っていければと思っています」。

 

資源を守りながら、付加価値へとつなげていく漁業を

タコ縄部会の部会長を10年ほど務める山田さん。父親の後を継いで漁師になったのは23歳の時。「漁師が嫌でね。それまではサラリーマンをやっていました。でも、やると決めたら必死に仕事を覚え、28歳の時には船長になっていましたよ」と、当時を振り返ります。
 

夏はマイカを獲る山田さん▲ヤナギダコのほか、夏~秋はマイカ漁を行う
 

タコ縄部会では、1.5kg以下は獲らないという自主規制を設けるほか、タコが卵を産み付けやすい産卵礁を設置するなど、資源保護にも積極的。また、操業が終わる春には総出で海底のごみ拾いをするなど、ヤナギダコをはじめ、毛ガニやシシャモなどが獲れる、豊かな白糠の海の環境を守っています。
 
「1つ1つの活動が、ヤナギダコの品質向上や付加価値になればと思ってやっています。最近はいい感じにつながってきたように思うんですよ」と、山田さん。

獲るばかりではなく、育てて守り、次代へとつなぐ。確かに手間暇はかかりますが、長年受け継がれてきたこの漁法は白糠の海の男たちの技術の証であり、プライドでもある。山田さんの言葉から、そんな思いを感じる取材でした。

  

「大地を創る人」とは

 さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。

 

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白糠漁業協同組合
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小西 由稀

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