
「北海道肉ソン大統領」と「ホッカイドット」。3年前に北海道に乗り込み、生み出したアイデアを商品化して北海道の“おいしい”“楽しい”を発信。今回の情熱の仕事人は、合同会社肉ソン大統領補佐官の阿野洋介さんです。
ネットやメディアでも話題に。知名度上昇「肉ソン大統領」
合同会社肉ソン大統領は、「北海道肉ソン大統領」と「ホッカイドット」という2つのブランドを基軸に、様々な企業・団体などとコラボレートして北海道のお肉をテーマとした加工品や、グッズなどを企画開発している札幌の会社です。手がけているのは、阿野洋介さん。記事トップの写真に阿野さんと一緒に収まっているのが、肉ソン大統領です。
ブランドのキャッチフレーズに「北海道のお肉がそんなに小粒でどうするよ」をかかげ、最初に商品化したのがレトルトカレー「北海道肉ソン大統領の肉デカチキンカリー」でした。十勝・音更町産の鶏もも肉1枚をまるごと入れ、パッケージには大きく「肉」の字をデザイン。お土産店に並んだとき目を留めてもらえるように工夫しました。
発売は2014年2月9日(肉の日)。札幌を中心にじわじわと話題を集め、同年夏に東京で開催された全国お取り寄せカレーの祭典「C-1グランプリ」で優勝したことをきっかけにブレーク。1食1,600円という価格ながらネット注文が殺到し、発売から1年弱で製造した3,000食を完売しました(現在は販売終了)。
メディアからも関心を集め、肉ソン大統領の名は広く知られるように。現在は、自社のブランド・キャラクターの使用権を他社に提供するライセンスビジネスも展開しています。

肉シリーズとして、北海道産の玉ねぎ、パリパリのフライドオニオン、ガーリックが入った、醤油ベースのお肉にのせて食べるドレッシング「秘伝の肉ドレ」や、北海道産牛スジ100%の「秘伝の牛すじ缶詰」がお目見え。プレゼントやお土産にも喜ばれそうです。
ターゲットは?という問いに対し、「肉デカチキンカリーは、ギフト用に買ってくれる方がいるだろうなと想像していましたが、あまり深くは考えていないんです」と阿野さん。「面白いものをつくって、何これって思ってもらえたら、そこから広がっていくんじゃないかなって。10人いたらそのうちの1人が熱狂的なファンになってくれたらいいなという考え方ですね」。
自身の視点と“ドット愛”が生んだブランド「ホッカイドット」
北海道のシルエットと水玉模様を組み合わせた「ホッカイドット」。肉デカチキンカリーのパッケージをつくるときに行き詰まり、北海道のかたちを並べて遊んでいて思いついたといいます。「並べていくと北海道ってドットっぽいなと。北海道でドット…、北海道ドット…、北海ドットだ!って。単純なだじゃれですよね。誰かやっているかなと商標を調べてみたら、誰もやっていなかった。これはいけるなと思って、翌日に出願しました」。

商品はiPhoneケースなどを展開しています。見た目のキュートさはもちろん、持ち歩いていつも北海道を感じられるのも魅力。道内の人にも好評ですが、道外に暮らす北海道出身者からの反響がとても大きいそうです。「ホッカイドットを始めてみて感じたのですが、北海道の方の郷土愛は半端ないですね」。

阿野さんは、もともと大のドット好き。「たまたまドットのパーカーを買って着てみたら、『かわいいね』って褒められて」。それからもうかれこれ15年ほど、ドット柄の洋服を着続けているとか。
「自分が本当に好きなことを仕事にしたいですし、そうでなければ人より優れたアイデアは出てこないと思うんです。僕はお肉もドットも誰にも負けないくらい好きなので、自信をもって商品にできるんですよね」。
「阿野ちゃんていう面白い人がいる」。
そこから、広がり、つながる
長崎県五島列島で高校卒業までの18年間を過ごし、岡山県の大学に進学。学生時代、スノーボードをしに訪れて北海道が大好きになり、住みたい場所になりました。教員免許を取り、北海道で教員になることを目指すも叶わずじまい。阿野さんは岡山でカフェを開業します。7店舗を展開し、約100人のスタッフを抱えるまでに事業は成長。その一方で、「本当に自分のやりたいことができているんだろうか」という思いがありました。
「北海道で面白いことをやりたい」。すでにもっていた肉ソン大統領のアイデアを固め、商品化に向けて動き、2013年12月に札幌へ。伝手もない状況からのスタートでしたが、おのずと道は開けていきました。

「北海道はマーケットが大きくて、いろんな人がいろんな商売をしていますよね。そのなかで存在感を出すためには、『阿野ちゃんて面白いね』っていわれることが必要で。売れそうだからではなく、面白いと思うことを自分のアイデアでかたちにしたもので『いいね』っていわれたい。アイデアがほしいという方々と組めると、すごく面白いことができるんじゃないかなと思っています」。
自分がつくりたいものだから、面白いものができる。面白いものをつくれば興味をもってくれる人が現れ、一緒に何かしようという人との出会いが増えていく。広がった人脈から、仕事につながることもあるといいます。

これからの展望を聞くと、「コラボしながら特徴のある商品開発をして、もっと全国に北海道を知ってほしいという気持ちはあります」といい、また、こうも話します。
「いまの自分にできることを続けながら積み上げていくことで、また違う景色が見えてくるんじゃないかと。今日一歩進めたら、明日ひらめきがあるかもしれない。もちろんやるからには、超特大ホームランを打ちたいです」。
阿野さんが生み出すものは、見る人・食べる人・使う人を、楽しい気持ちにさせてくれます。プロジェクトはきっと、もっと面白いことになっていくに違いないと感じました。
合同会社肉ソン大統領
・Webサイト・ホッカイドットオンラインショップ
取材・文 / 北海道Likers ライター うずらはしちあき
撮影 / 北海道Likers フォトライター 髙田美奈子