「北海道の産業史、日本のビール史を伝えたい」。サッポロビール博物館・住吉徳文館長



日本人の手で初めて本格的にビール醸造が行われた地、北海道・札幌。サッポロビールの前身「開拓使麦酒醸造所」の開業から140年。その軌跡を知ることができる「サッポロビール博物館」を、特別に住吉徳文館長の解説を聞きながら巡ってきました。

 

プレミアムシアター映像で知る、日本のビールづくりの物語

サッポロビール博物館は、日本で唯一のビールに関する博物館です。サッポロビールが今年で創業140周年を迎えるにあたり、展示内容を一新して4月にリニューアルオープンしました。
見学は自由見学に加え、新たに有料のプレミアムツアー(所要50分)が登場。プレミアムツアーでは、ブランドコミュニケーターと呼ばれるスタッフが展示をガイドしてくれます。
 
今回は住吉館長とプレミアムツアーのコースを辿りました。
はじめに踏み入れたのは、3階のウェイティングルーム。開拓前の原野をイメージしてつくられたというプレミアムツアー専用のラウンジです。





蝦夷地が「北海道」と改称され、政府によって札幌に開拓使が置かれたのは明治2年のこと。明治9年には、国内初の官営ビール工場として「開拓使麦酒醸造所」が開業。これが、サッポロビールの歴史の幕開けです。
 
「なぜ官営のビール工場が札幌につくられたのか。誰がどのようにして関わっていたのか。それを知る映像を観てみましょう」。住吉館長と一緒に「プレミアムシアター」へ。





スクリーンに映し出されるのは、開拓使麦酒醸造所建設のキーマンとなった2人の人物の物語。2作品のうち、どちらかが上映されます。
当初、醸造所は東京に建設が計画されていました。一人はその決定をくつがえし、札幌につくらせた村橋久成。もう一人はドイツでビール醸造を学んだ、日本人初の醸造技師・中川清兵衛です。





舶来ビールが主流だった明治初期、海外に負けないおいしい国産ビールをつくろうと、情熱をたぎらせた先人たちがいたこと。北海道開拓のシンボルマーク「北極星」が、サッポロビールの星マークにつながっているその背景。上映作品を通じて知る歴史ドラマは、胸に迫るものがありました。
約10分の上映後には、これまた感動の仕掛けが隠されていました。それは…、ツアーに参加してお楽しみください。
 
シアターを後に、吹き抜けの空間で目にするのが巨大な煮沸釜。ビールを仕込む工程で麦汁を煮沸するためのこの釜は、札幌で稼働していた工場で昭和40年から平成15年まで使用されていたもの。容量は85キロリットルあるのだとか。





館内を歩いていると、壁の風景にも趣を感じます。博物館の赤れんがの建物は、明治23年に製糖会社の工場として建設され、その後、明治38年からビール醸造の製麦工場として使われてきたそうです。




 

北海道開拓とサッポロビールの歩み

2階フロアにおりると、開拓使時代のビールづくりから現在のサッポロビールへとつながる歴史を紹介するサッポロギャラリーが。展示は12のブースに分けられ、とてもわかりやすい構成になっています。
 
「北海道はビールの原料となる大麦の栽培に適していて、野生のホップも発見されました。気候をふくめてビールをつくるための条件がそろっていたんですね。開拓使は北海道の産業育成のために、全道各地で様々な事業を興しました。その中で唯一残っている事業がビール醸造です」と、住吉館長。




開拓使による醸造所は、明治19年に民間企業として新たなスタートを切り、幾たびかの変遷を経て、サッポロビール株式会社となりました。展示では、民間化される際の条件が書かれた古い文書も紹介されています。その条件とは、「北海道の大麦を可能な限り使うこと」でした。




「ビール醸造には、大麦やホップを栽培して北海道の農業を振興させようという目的があったんですね。当社の北海道へのこだわりや、生産者のみなさんとの『協働契約栽培』という原料づくりの取り組みは、創業当時からの想いを引き継いできていることによるものです」。




プレミアムシアターで国産ビールの誕生物語を知ったあとの見学で、住吉館長の解説と合わせていっそう興味深く展示に見入りました。そして北海道でビール醸造が始まった原点となる想いとともに、今日までビールづくりが継承されてきていることの重みを感じました。




サッポロビールを代表するブランド、「サッポロ生ビール黒ラベル」。この商品は、大ヒットした「サッポロびん生」をお客さまが「黒ラベル」と呼んでいたことがきっかけで正式な商品名になったという話や、歴代のポスターにまつわるエピソードなども教えてもらいながら、ギャラリーの見学を終えました。








プレミアムツアーの最後には、「復刻札幌製麦酒」と「黒ラベル」の試飲ができます。





「復刻札幌製麦酒」は、開拓使麦酒醸造所開業当時のレシピをもとにつくられたというビール。“濁り”があるのは、酵母をろ過する技術がなかった当時の製法を再現しているからだそうです。
自由見学でも、「黒ラベル」や北海道限定の「サッポロクラシック」など好みのビールを味わえます(1杯200円〜)。








一般公開はされていませんが、特別に貴賓室に立ち入らせてもらいました。北極星を表す赤い星がシンボライズされた開拓使の旗、また、視察に来られた明治天皇、昭和天皇・皇后両陛下が座られたという椅子が飾られていました。改めて歴史を感じる空間です。




 

サッポロビール140周年。これからも北海道とともに

サッポロビール博物館の見学は、アルコールが飲めないという人でも存分に楽しめます。住吉館長は、博物館についてこう話します。
 
「サッポロビールがこの地で生まれたということ、そしてサッポロビールの歴史とともに、北海道の産業史、日本のビール史をお伝えしていくための場所です。遠方から訪れてくださる方はもちろん、札幌市民、道民のみなさんにもっと北海道の産業の歩みを知ってほしいというのが願いです」。





北海道に対する想いへと話は続きます。

「札幌で国産のビールづくりに挑んだ、村橋久成、中川清兵衛という2人の志があって事業が始まりました。あの時代のエネルギーがサッポロビールの原点であり、原動力。140年にわたって事業が続いているのは、お客さまのおかげであり、北海道が育ててくれたからこそです。私たちはこれからも、北海道とともに歩んでいきたい」。住吉館長は力を込めて語ります。
 
北の大地も夏真っ盛り。サッポロビール博物館を訪れ、ぜひビール史にふれて、おいしいビールで乾杯を。



 

関連リンク

サッポロビール博物館
サッポロビール株式会社

 

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