大地を創る人。1日の歩数2~3万歩に込めた有機トマトへの思い。谷口農場の五木田良作さん

北海道の大地にもようやく強い陽射しが照りつけ、夏野菜のおいしい季節がやって来ました。旭川市で有機栽培トマトを生産する農業生産法人「谷口農場」を訪ね、トマトを管理する五木田良作さんにお話をうかがいました。

 

 

地下足袋スタイルのトマト生産者
歩いて、見て、触れて、感じ取る大切さ

美しい大雪山連峰を背景に、とびきりの笑顔で迎えてくれた五木田良作さん。旭川で116年もの歴史を紡ぐ「谷口農場」の農産部長を務め、約60棟もあるトマトのハウスを管理している責任者です。



 
谷口農場ではトマトを有機栽培、一部は特別栽培しているため、「農薬や化学肥料を使わないので、とにかくトマトの健康状態を小まめに確認して、病気を予防するのが重要。日々、ハウス内を歩いて見て回るのが日課です」。

 

 
 
そう話す五木田さんの足元は地下足袋!腰には剪定バサミを下げ、首には農場オリジナルのトマト柄の手ぬぐいを巻くのがいつものスタイル。
「地下足袋が一番歩きやすく、土も中に入りにくいんです。約60棟のハウスを回るので、1日の歩数は2~3万歩はいきます。地下足袋はシーズン中、4足はダメにします」。
ものをいわない作物だからこそ、見て触って感じ取り、的確に対応する。その大切さを裏付ける数字です。

 

 

本州出身。新卒で農業の世界へ
会社員として農業に携わるという選択肢

五木田さんは千葉県出身。大学で環境問題や食糧問題を勉強していたこともあり、「就職を意識した時、選択肢に農業がありました」。とはいえ、いきなり新規就農するのには、技術的にも資金面でも難しい。何か方法はないかと考えていた時、農業法人が集まる合同会社説明会に参加。そこで出会ったのが、谷口農場でした。

 


「給料をもらって農業ができるというのが、とても魅力的でした。また谷口農場は有機のものづくりをしていた点と、働く人に同年代が多かったことも決め手になりました」。
 
卒業後、谷口農場に就職。前任の担当者のもと、トマト栽培を担当することに。「1年目はいわれたことをやるだけで必死でした。大げさにいえば、ここは地獄かと思いました(笑)。やってもやっても仕事は終わらない。農業とは何かを知らなかったからこそ、飛び込めた世界かもしれません」。

 
 

それでも、自分が志した道。仕事を覚えながら、トマトづくりに邁進する日々はあっという間に過ぎ、前任者の退職によって4年目からは五木田さんが責任者を任されることに。
「今までやってきたことなのに、この年は収量が採れなかったんです。自然相手の仕事なので、自分が費やしてきた時間や努力、考えが、そのまま実るとはいえないのが、農業のせつなさ。責任者になって、それを痛感しました」。

 
 

毎年、自分に課題を与え、それをクリアしながら経験を重ねてきた五木田さん。目指すのは、土も健康、作物も健康、それを食べる人も健康な“三健農業”。
「トマトの樹が健康なら、虫も病気も寄って来ないんです。健康な人が病気にならないのと同じ。地力を整えた畑で、根がしっかり張って栄養を吸収できるよう、手助けしてあげるのが、自分たちの仕事です」。



 

今年より来年、来年より再来年…
自分が納得できるものへ近づけたい

谷口農場では、年間約230tものトマトを収穫。直売所での販売や小売店への出荷、もぎとり園での収穫体験、ジュースなどの自社の加工原料にしています。

 

 

 

 
 
「生で食べても、ジュースにして飲んでもおいしいと思える、甘さと酸味のバランスの取れた味わいを目指しています。技術的に甘いトマトはつくれても、甘さを追求すると収量が落ちてしまう。うちの場合は加工品を待っているお客さんもいるので、それではダメ。
今年より来年、来年より再来年と、質も量も両方、自分の納得できるものに近づけたい」。そう語った五木田さんの笑顔は、夏の太陽のごとく輝いていました。