様似の海岸へ、奇岩を見に行く


 
ユネスコ世界ジオパークとして認定されている様似町のアポイ岳ジオパークには、ダイナミックな奇岩がたくさんあります。大昔の火山活動で誕生したこれら奇岩には、北海道に暮らすアイヌの人たちのたくさんの伝説が残されています。

 

アートな奇岩とアイヌの伝説

札幌から車で襟裳岬方面に向かって様似町に入ると、塩釜トンネルの手前あたりから右(海)側に、岩が見えてきます。ローソク岩です。この岩は、巨人が落とした焼串で、トンネルの後ろの丘は、その巨人が尻もちをついた跡であるというアイヌの口承が残っているそうです。
 
 


 
トンネルを抜けると右側に、こんもりとした岩が見えてきました。親子岩ふれあいビーチという海水浴場があるところです。車からは重なって気づかなかったのですが、よく見たら岩は3つあります。これが「親子岩」と呼ばれている岩です。

 


 
さらにその先、様似漁港に見るからにゴツゴツとした岩を発見しました。どこから見ても、ゴツゴツ感がわかります。まるで岩のウロコをはりつけたみたい。

 

 



 
このソビラ岩は、探検家・松浦武四郎の東蝦夷日誌に記されており、アイヌ語でソピラレプンケ(ソ=滝、ピラ=崖、レプンケ=沖にあるもの)と呼ばれていたようです。
実は、先ほどの親子岩とこのソビラ岩をあわせて「父と母子の岩」というアイヌの伝説があります。それによると、昔々、戦いで敵に追われた酋長が、妻と子を先に逃がしました。それが海に入った母と子=ソビラ岩で、親子岩が父親。父岩が3つになったのは、敵の酋長が放った矢が命中して3つに割れたためと伝えられているそうです。
アイヌの伝説では、広い範囲でこれら奇岩が家族の物語になっていますが、3つ並んだ親子岩を父母子と見ることもできます。

 

 

親子岩ふれあいビーチには駐車場もあり、整備された海水浴場なので、ゆっくりと親子岩を眺めることができます。皆さんなら、どんな物語が見えてきますか?

 

エンルム岬から眺めると、大きな岩が一直線に

ソビラ岩のある漁港からも見えるのがエンルム岬です。エンルム岬とはアイヌ語で「尖り頭」という意味。

 


 
エンルム岬へ行ったら、ちょっとがんばって展望台まで登ってみませんか?結構キツイ階段ですが、てっぺんに行くと、すばらしいご褒美が待っていますから。
 
 



 

展望台に上ると、アポイ岳や様似の町を見渡す大パノラマが広がります。これはすばらしい!ここまでがんばった甲斐があるというものです。

 

 


 

そして、ここから今見てきたソビラ岩や親子岩、ローソク岩方向を見ると、あることに気づきます。それは、エンルム岬からほぼ一直線に大きな岩が並んで見えるということ。
 



 
今から約1700万年前、大地に強い力が加わり、いくつかの割れ目ができました。そこから地下のマグマが上がってきて、冷えて固まったのがこれらの岩。マグマが冷えて固まった「ひん岩」はとても固く、削られることなく今でも残っているそうです。
きっと、この直線上に割れ目ができて、そこからマグマがぐぐっと上がってきたのでしょう。点々と存在する岩たちですが、実は太古の地球の地殻変動によってこの景観ができたのかと思うと、様似の奇岩のスケールの大きさを感じずにはいられません。

 

様似の奇岩をジオパーク目線で見てみる 


 

実は今みてきたところは、ユネスコ世界ジオパークに認定されているアポイ岳ジオパークのジオサイト「様似海岸エリア」と呼ばれているエリア。約1,300万年前に地球の大地のプレートがぶつかり合い、それがめくり上がって誕生した日高山脈が誕生した時、地球深部のマントルが押し上げられて地表に露出したのがかんらん岩の山=アポイ岳です。
様似には、様似海岸エリアの他にも、新富エリア、日高耶馬渓エリア、アポイ岳エリア、幌満狭エリアの計5つのジオサイトがあります。中でも、様似海岸エリアと日高耶馬渓エリアには奇岩が多く、親子岩やソビラ岩のようにアイヌの伝説が残っているものも多くあります。ドライブがてら奇岩を見学し、アイヌの伝説にロマンを感じるのも楽しいですが、ジオパーク目線でそれらを見ると、一味違った楽しみ方もできます。
 
エンルム岬の展望台から降りてきたら、岬の裏側に行ける細い道があるので、ぜひその先へ向かってみてください。そこでは、マグマが冷えて固まった「板状節理(ばんじょうせつり)」を見ることができます。
 
 

 

板状節理とは、その名の通り岩が板状になった割れ目のこと。切り立った壁とは、まさにこういうことを言うのでしょう。岩でできた細長い板が、大地からブスブスと出てきたみたい。今から約1700万年前の地球の中にあったものですよ、これ。
 


 

爆発的な力強さと同時に、人の手ではつくれないダイナミックな自然美を感じました。ここは一見の価値あり!

 

日高耶馬渓も、やばいんでないかい

様似海岸エリアからアポイ岳方面に向かうと、左は断崖絶壁、右は海という景色に変わります。ここは、アポイ岳の山裾が太平洋に落ち込み、約7kmの断崖絶壁をつくっている「日高耶馬渓(ひだかやばけい)」と呼ばれるエリアです。
 


 

冬島漁港に行くと、穴あきドーナツを半分にしたような岩「冬島の穴岩」があります。この穴は、人工的に開けたのではなく波の侵食によって開けられた「海食洞」というもの。この岩のことは、松浦武四郎などが江戸時代にここを通った時に記しているそうです。インパクトがある岩なので、道中の目印にもなっていたのかもしれませんね。

 


 
冬島の穴岩からもう少し進むと、ルランベツ覆道があります。そこでは「ルランベツ覆道の褶曲(しゅうきょく)」が見られます。ここは海側にあるので、札幌から襟裳方面に行く道ではなく、帰り道の方が立ち寄りやすいと思います。

  


 

 

褶曲とは、地層が強い圧力で押し上げられて曲がってしまうこと。近くでよく見ると、緑がかった岩を赤っぽい褐色の岩が包み込んでいるのがわかります。このように、約1,300万年前、日高山脈ができ、アポイ岳を誕生させたプレートの衝突の力を、日高耶馬渓エリアでは目の当たりにすることができます。いやはや、地球のパワーって、なまらすごいわ。
 
さらにこの先には、ジオサイト「幌満狭エリア」がありますが、様似の海岸に沿った奇岩見学は、ひとまずここまで。札幌~様似方面は今の時期、ドライブコースとしては最高に気持ちの良いルートです。ただ運転中に奇岩に気を取られてしまうと危険なので、車が止められるところで駐車して、ゆっくりと眺めを楽しんでくださいね。
 
 

関連リンク

アポイ岳ジオパーク
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