三笠市の「三笠ジオパーク」~北海道のジオパークへ行こう!(5)



ジオパーク、それはジオ(Geo)=地球、大地のパーク(Park)=公園。北海道にはいま、ユネスコ世界ジオパークが2ヵ所、日本ジオパークが3ヵ所あります。北海道の大地と自然を五感で体感できるジオパークへ行ってみませんか?アンモナイトが泳いでいた一億年前から炭鉱のまちとして栄えた現代まで、一億年の時間を体感できる「三笠ジオパーク」へGO!

 

三笠市の「三笠ジオパーク」とは

「三笠ジオパーク」がある三笠市は、空知の南部、札幌~旭川間の真ん中よりちょっと札幌寄りのところにあります。1868年、燃える石「石炭」が発見されたことから三笠の歴史が始まります。石炭発見に伴い、石炭の調査を行っている時に、約一億年前の白亜紀のアンモナイトが発見され、その後アンモナイトなどの化石やエゾミカサリュウ(国の天然記念物に指定)などの化石が見つかり、アンモナイト化石のまちとしても有名です。
 


 

三笠ジオパークのテーマは「さあ、行こう!一億年時間旅行へ~石炭が紡ぐ大地と人々の物語」。三笠市には、北海道初の近代炭鉱となる「幌内炭鉱」が設置され、そこで採掘された石炭を輸送するため、北海道初の鉄道となる「幌内鉄道」が敷設されました。石炭を採掘するために集治監(現在でいう刑務所)が設置され、囚人たちの労働力が用いられていました。
一方、一億年前のアンモナイト化石が発見されたことで、5000万年前の石炭層と約一億年前のアンモナイトを含む地層が分布しているという、大変珍しく貴重な地層が三笠周辺に広がっていることがわかりました。
三笠ジオパークは、アンモナイトが海を泳いでいた一億年前から、炭鉱のまちとして栄えた現代まで、「一億年の時間旅行ができる場所」なのです。

 

三笠市立博物館からスタートしよう

三笠ジオパークに行って、「さて、最初はどこから?」という時に、最初に立ち寄ってほしいのが「三笠市立博物館」です。以前、北海道Likersでも紹介したことがある、国内最大のアンモナイトコレクションがある博物館です。

 

 


 


 

北海道には、約一億年前の白亜紀に堆積した蝦夷層群(えぞそうぐん)とよばれる地層が北海道中央部を南北に縦断して分布しており、そこからアンモナイト、イノセラムス(二枚貝)、クビナガリュウやモササウルスなどの海生爬虫類の化石が多く発見されているそうです。博物館では、道内で産出したアンモナイト化石を中心に、国の天然記念物に指定されているエゾミカサリュウの化石も展示しています。
 



大きく成長した木々が森をつくり、緑豊かな自然に囲まれているこの町が、太古の昔とはいえ、海だったなんて想像もできません。しかし、一億年前、海にいたアンモナイト化石が発掘されたのは事実。三笠市立博物館は、一億年の時間旅行のまだまだ入り口…ということで、さっそく太古の三笠の大地を体感しに行くことにしました。

 

野外博物館は、ジオパーク初心者向き!

北海道Likers編集部が向かったのは、三笠市立博物館の裏、幾春別川に沿った全長1.2㎞の「野外博物館」と言われるエリア。ここは、以前はサイクリングロードだったところで、もっと歴史をさかのぼれば森林鉄道の跡地。
 



道はきれいに整備されており、ベビーカーも押せるし、サンダルやヒールのある靴でも歩きやすいので、「ジオパークに行くぞ!」と気張らなくても、気軽に散策することができます。1.2㎞なら、ゆっくり歩いても往復60分もあれば十分。
 


 

散策路の左手は幾春別川のせせらぎ、右手は木漏れ日がキラキラまぶしい緑豊かな山。一億年の時間旅行が、こんなリラックス効果抜群の森林浴環境たっぷりなところで体感できるのか?と歩いていたら、「森林鉄道跡」の案内看板が。現在の桂沢湖のあたりから切り出した木を運び出すために、1956年まで幾春別の森林鉄道は運行していたそうです。
 


 

散策路は一本道なので迷うことはまずありません。三笠市立博物館で野外博物館の地図がもらえます。地図にはこの散策路で見ることができる15ヵ所の見どころポイントが記されており、それに沿って歩くと、大変わかりやすいです。

 

 

さらに進むと、左手の幾春別川の向うに、切り立った岸壁「幾春別層」が見えます。これは約5000万年前に形成された地層で、砂岩層、泥岩層、石炭層からなっています。木の枝やこんもり茂った葉がじゃまで、ちょっと見づらいのですが、時々開けるところがあるので、その隙間を狙って見てみてください。ここで地層を見て「あれ?」と気づいたら、かなりの地層通です。答えは、その先に。
 
散策路から唯一、横道に外れてちょっとだけ階段を登り降りしなければならないのが「旧幾春別炭鉱錦立坑櫓」と「旧錦坑坑口」です。
 


 

この立坑櫓の反対側、幾春別川方向に降りていくとあるのが「旧錦坑坑口」。
 


 

旧錦坑坑口は、上にある錦立坑とつながっていて、石炭はここから三笠市立博物館の近くにあった選炭場へトロッコで運び出されたそうです。旧錦坑坑口に行くと、ぷ~んと硫黄の匂いがしました。これは、石炭などから溶けた硫黄分が含まれた冷泉の匂い。昔はこの冷泉を汲み上げて湧かして温泉として使用しており、今でも近所に住む人たちの中には、冷泉を汲み、自宅のお風呂に入れて湧かして入る方もいるそうです。

さらに進むと、地表に露出した石炭層や垂直に立っている地層を見ることができます。一般的に地層は、横に重なったミルフィーユみたいに見えるはずです。しかし、先ほどの幾春別層も、この垂直の地層も、横ではなく層が縦になっています。これこそが、太古の昔この一帯に力強い大地の力が加わった証拠。
 
…と、案内看板とガイドマップ片手に見ていたら、声をかけられました。たまたまプライベートで、ガイドツアー用の写真撮影に来ていた、三笠ジオパーク認定のジオガイドさんでした。
 


 

これはきっと、三笠のアンモナイトの神様(いるのか?)が、北海道Likers編集部のために使わしてくれたのでしょう。ガイドさんにお願いをしたら、快くこの先の案内をしてくださるというではないですか!
 
…ということで、ここから先はガイドさんと一緒に、散策路を進みました。
 
「幾春別層も地層が縦、ここも垂直な地層ですよね。これは、約1300万年前、大地の変動で日高山脈がせりあがった時の大きな力で、水平だった地層が押し上げられてできたものと考えられています。日高山脈がせりあがった時にできたのが、かんらん岩のアポイ岳です。北海道の大地の変動は、このようにつながっているんですよ」とガイドさん。
 
アポイ岳ジオパークで学んだ、プレートの変動がここでつながるなんて!まさに、ジオ=大地を実感した瞬間です。
 


 


 


 

しばらく進むとガイドさんに「ちょっとそこでストップしてください。そして、せーの!で、このラインを飛び越えてください」と言われ、立ち止まったのがこれ。
 



 
せーの!で飛び越えると、「はい、これで5000万年前から一億年前に一気に時間旅行をしましたよ」とガイドさん。
ここは、ラインのあるところの(博物館から来ると)手前が約5000万年前の地層(幾春別層)で、ラインを越えると約一億年前の地層(三笠層)があり、ラインを越えることで一気に5000万年もの時間を飛び越えることができることから「ひとまたぎ5000万年」と呼ばれるポイント。

 

 

一般的に地層は、古いものから新しいものへと重なりながらつくられます。なので、一億年前の地層と5000万年前の地層が隣り合わせになることはありません。ここは、本来あるはずの5000万年分の地層が、一億年前から5000万年前の間に侵食などで削られてなくなってしまったのではないかと考えられているそうです。
5000万年という想像すらできない時間を一気に越えた、世界的にも珍しく貴重な地層を間近で見ることができ、まさに三笠ジオパークのテーマ「さあ、行こう!一億年時間旅行へ」を体感できる場所です。
 
ひとまたぎ覆道の中では、さらに興味深い地層を見ることができます。
 


 

三笠層は、約一億年前にできた地層。浅い海の底でできた地層で、れき岩層と砂岩層が何度も繰り返し積もってできた地層になっています。そして、このあたりの特徴である「縦の地層」です。
野外博物館もそろそろ終着、折り返し地点に近づいてきました。かつての森林鉄道の線路上に作られた素掘りのトンネル(隧道)に入ると一億年前にできた地層がさらによくわかります。
 


 


 

神泉隧道を抜けると、温泉旅館「神泉閣」跡、桂沢神居古潭と呼ばれる景勝地があります。そこで野外博物館は終了し、今来た道を戻ります。
 


 

道内どこのジオパークでもそうでしたが、三笠ジオパークもやはり、ガイドさんがいるとより一層興味がわき、もっと知りたい!と好奇心もふくらみます。三笠ジオパークでは、日程が決まったジオパークツアーを開催していますので、HPで確認してみてください。一人100円の「ミニジオツアー」は、気軽に参加できますよ。

 

炭鉱遺構や鉄道博物館なども

今回は、野外博物館で一億年の時間旅行を体感してきましたが、三笠ジオパークのテーマ「さあ、行こう!一億年時間旅行へ~石炭が紡ぐ大地と人々の物語」は、他のジオサイトでも体感することができます。

 

 


 

旧奔別炭鉱や旧幌内炭鉱立坑櫓などは私有地なので立ち入りは禁止です。が、遠目からなら眺めることはできます。また、旧奔別炭鉱は個人では入れませんが、ガイドツアーに参加すると近くまで行くことができるそうです。



※提供写真



※提供写真


三笠鉄道村(旧幌内駅)では、石炭を輸送した産業鉄道とその歴史に触れることもできます。札幌から一番近いジオパークなので、ジオパークに興味がわいてきたなぁ…という人には、まずはとっかかりになるかもしれません。ドライブがてら、いかがですか?

 

北海道のジオパークとは

北海道にはいま、5ヵ所のジオパークがあります。ユネスコ世界ジオパークに認定されている、洞爺湖有珠山ジオパーク(伊達市・豊浦町・壮瞥町・洞爺湖町)、アポイ岳ジオパーク(様似町)、日本ジオパークに認定されている、白滝ジオパーク(遠軽町)、三笠ジオパーク(三笠市)、とかち鹿追ジオパーク(鹿追町)です。

 

北海道博物館特別展「ジオパークへ行こう!」

7月9日(土)~9月25日(日)、北海道博物館で北海道のジオパークを展示、紹介する特別展「ジオパークへ行こう!~恐竜、アンモナイト、火山、地球の不思議を探す旅~」が開催されます。この特別展を見てから、道内各地のジオパークへ行くか、それとも各地のジオパークへ行ってから特別展に行くか。行ってから見るか、見てから行くか、悩ましいところですが、道内の人も道外の人も、この機会にぜひ北海道のジオパークを体験してみてください。
 
 

関連リンク

三笠ジオパーク
三笠市立博物館
北海道博物館
洞爺湖有珠山ジオパーク
白滝ジオパーク
とかち鹿追ジオパーク
アポイ岳ジオパーク
日本ジオパークネットワーク