大地を創る人。牛の健康を最優先!赤身のおいしい牛肉づくりに情熱を注ぐ生産者・小澤孔仁さん

今回訪ねたのは明治26年創業、駒ヶ岳を望む七飯町の「小澤牧場」。牛の健康を一番に考えた、赤身のおいしいブランド牛「はこだて大沼牛」をつくる生産者、小澤孔仁さんに話を伺いました。




 

食卓の味方“はこだて大沼牛”

 牛舎を覗いて、一瞬、とまどいました。白黒のぶち柄でおなじみのホルスタイン、でも、かなり体が大きな牛たちが草を食んでいたからです。まるで酪農の現場を訪ねたような…。「うちはホルスタイン種のオスを肥育し、牛肉づくりをしています」と、小澤さん。

 

 

乳牛であるホルスタイン種にも当然、オスは生まれます。乳を出さないオスは去勢後、肉牛として飼育されるのです。スーパーなど店頭で見かける国産牛の多くは乳用種(ホルスタイン種など)。私たちにとって、実はとても身近な牛肉なのです。




 

自家産飼料と乳酸菌で体の中から健康に 


 

小澤牧場は、大沼国定公園の周辺に24棟もの肥育牛舎が点在し、約9,500頭もの牛を肥育するメガファーム。スケールメリットを生かし、機械化やデータ化できる部分は効率化を図り、でも人の目や手が必要なところはきっちりと手間をかけ、牛の健康を第一に考えた牛肉づくりをしています。
 






 
健康な体をつくるには、食が基本。それは人も牛も同じ。小澤牧場では410haの広大な牧草地とデントコーン(飼料用トウモロコシ)畑を持ち、自家産乾牧草と青刈りのデントコーンを粗飼料として与えています。「約8割が自家産、足りない分は極力道産でまかなっています。買う方が安いし手間がかからないのですが、安全安心を考えると、自家産が一番ですから」。
 



 
複数のエサをブレンドする配合飼料は、栄養のバランスを考え、独自に調合。抗菌作用などがあるハーブや飼料米を加え、さらに生きたまま腸に届く乳酸菌を与えているのも大きな特徴。
「腸内環境が良くなると、栄養の吸収も良くなり、牛も健康的に増体し、良い糞が出ます。良い糞は微生物分解によって匂いが低減され、良質の完熟堆肥になり、おがくずなどに混ぜて牛床の敷料としてリサイクルできます」と小澤さん。健康的な牛肉をつくることで、循環型農業を実践しているのです。
 



 

格付けに表われない、健康的な味わいを重視 

小澤さんは大学卒業後、一般企業に10数年勤め、さまざまな経験を積みました。4代目社長の父、嘉徳さんの元で畜産の仕事に就いたのは11年ほど前。父の背中を見ながら、生産や経営に携わってきました。
 


 
「当初は継ぐ気はなかったんです。自分にも子どもが生まれ、また離農者が増え続けている現実を見ると、国内の食文化を次代につなぐため、安全安心な食を守るために、誰かがやらないといけないこと。それならば…という思いで、帰農しました。ちょっと格好いいこと、言いすぎちゃいましたね」。
 
小澤さんが今、大切にしているのは消費者との交流。そして、格付けには表れない味のこと。A5、A4など、よく耳にする牛肉の等級は、歩留等級A~Cと肉質等級5~1で決まります。この等級は見た目で判断し、脂肪が交雑している、いわゆる霜降りの具合が多いほど高い等級に。肉用種に有利な格付けともいえます。
 



 
「元々乳用種のホルスタインは、赤身が主体の牛肉です。過度に脂肪を増やすのではなく、健康に元気に育てることが、おいしい牛肉になり、安心して食べていただける牛肉になると考えています。格付けでは味の項目はなく、あくまで見た目が重視。はこだて大沼牛は数字には表れない部分を大切にしています」。

 

 
後日、はこだて大沼牛を食べる機会がありました。確かに、赤身が主体。艶のある美しい肉質です。味わいは、旨味があるのにさっぱりした印象。自家産牧草をたっぷり食べて育った、健康な牛ならでのきれいな味わい。柔らかくてヘルシーで、これは量を食べられます。
 
「こだわりを持っていいものを生産していれば、そのことは伝わるし、ファンにもなってくれる。消費者との交流を通して、伝えていきたいと思っています」。

 

食卓の喜びにも、地域の活性化にも、貢献していきたい 

小澤牧場は今秋の完成を目指し、新しい牛舎を長沼町で1棟、大沼地区で3棟新築中。また、今は大沼地区でのみ肥育を行っていますが、将来的には子牛を育てる道内の分場でも、肥育を手がける計画があるといいます。※肥育とは、肉を生産するために牛を大きく育てること。


 

「はこだて大沼牛の取り組みを、ほかの土地でも実践し、より良い牛肉づくりに挑戦したいと思っています。離農者が増え、牛の頭数は減る一方なので、消費者のみなさんにも安心して楽しんでいただける牛肉をお届けし、またそれぞれの地域にも貢献できれば嬉しいなぁと、考えています」。
 
食べる喜びから地域活性化まで、健康でおいしい牛肉づくりを通して、小澤さんの夢は大きく広がります。