2016年06月02日 | 小西 由稀

大地を創る人。アスパラ栽培に人生を捧げる覚悟を決めた生産者。美唄市のアスパラ専業農家・内山裕史さん

まだ地物野菜が少ないこの季節、道産子が心待ちにしている芽吹きの味が、露地栽培のグリーンアスパラ(以下、アスパラ)です。美唄市で40年以上にわたり、アスパラを専業でつくり続ける「うちやま農園」を訪ね、3代目の内山裕史さんにお話をうかがいました。


うちやま農園の内山裕史さん
 

アスパラひと筋の専業農家
土と太陽が育む旨味がぎゅっ!

「うちやま農園」はアスパラひと筋41年。全国に多くのファンを持つ専業農家です。3代目の内山裕史さんが手がけるアスパラは、太いものでも根元まで柔らかな食感が特徴。みずみずしさの中に、甘さだけではない複雑な旨味も感じられ、土と太陽の味がぎゅっと詰まっています。

 
アスパラを手にする内山さん

例年4月からハウス栽培の収穫が始まり、5月中旬からは主力の露地アスパラに切り替わり、7月~9月までは夏アスパラの収穫が続きます。畑の面積は約8ha、年間20tものアスパラを生産する、北海道内でも有数な生産者です。


立茎栽培のハウスで作業する内山さん▲夏アスパラ=立茎(りっけい)栽培の準備をしているハウスの中。アスパラを伸ばし、親茎になるものを選定する。その脇から芽吹くのが夏アスパラ。「良い夏アスパラをおがらせる(成長させる)のはもちろん、来年の春アスパラの収穫量にも影響する大切な作業です」

 

土を知り、生かし、手伝う
そして、注意深く観察する 

取材にお邪魔したのは、ゴールデンウィーク直後。あと少しで露地アスパラが始まるというタイミング。畑に目をやると、ありました!まだポツポツとですが、アスパラが力強く芽吹いていました。

 露地シーズン直前の芽吹いたアスパラ

毎年種を蒔く作物とは異なり、アスパラは一度植えた株を管理しながら、10年以上にわたり、次々と伸びる芽を収穫します。「うちは泥炭土壌ですが、その特徴を理解して生かすこと、そして土の手伝いをすることが大切」と、内山さん。

一般的に有機質が豊富な反面、水分が多くアスパラ栽培に不向きといわれる泥炭土壌。「水はけを改善したり、不足している養分を補ったり、土が必要とする手伝いさえできれば、最高の土壌ですよ。いい土地に入植してくれたと先祖に感謝しています」と、にっこり。


被覆資材で覆った露地アスパラの畑 ▲露地の畑を白い被覆資材で覆うことで、内部の温度が上がってアスパラが伸びやすくなる。春先、あまり地温が上がらない時に行う方法。うちやま農園の畑は230mもあるため、被覆する作業も大変!


「あとは年中畑を歩いてまわり、アスパラの様子をチェックすることかな。アスパラは前の年、その前の年のダメージが響きやすい作物なので、日々目を配って、的確に対応するのが重要なんです」。

 
アスパラ収穫▲アスパラの収穫はすべて手作業。うちやま農園ではソリのひもを腰に結わえ、収穫したアスパラをのせ、長い畑を往復する

 

覚悟と信頼関係
半世紀以上続く専業農家に 

父・彰さんの代で米からアスパラへと転換したうちやま農園。その大変さを間近で見ていた内山さんは、多くの農家の息子がそうであるように、農業を継ぐ気はまったくなかったといいます。大学卒業後は、業種が異なる大手企業3社に勤め、営業マンとして活躍していました。その気持ちに変化が表れたのは、30歳を目前にした頃。
 
「継ぐ気がないなら、農地の一部を売るという話が出て。ここは尊敬するじいちゃんが馬車で土を運び、苦労してつくってきた土壌。それが人手に渡るのは嫌だな、と」。そこで、一念発起。会社を辞め、農業研修を経て、31歳で就農しました。
 

内山さん
 
試練は4年目にやって来ました。例年にない低温と長雨が続き、春の収穫量は激減。「赤字は目に見えていて、あー、このままうちは潰れるんだなと思うほどでした」。

そんな時、内山さんに喝を入れ、また支えになったのは、全国にいる「農家のこせがれネットワーク」の仲間たちだったといいます。同ネットワークは、都会で働く農家生まれの“こせがれ(女性も含む)”の帰農を支援する団体のこと。帰農後もさまざまな面で情報交換や勉強会などを行い、互いに研鑽し合う間柄だといいます。
 
「“おまえはアスパラ農家として食ってく覚悟があるのか?”って、言われたんです。このままアスパラがダメなら、ほかの作物でも…と、甘い考えが頭をよぎっていたので、ガツンとやられましたね。アスパラだけで食っていける農業とは何かを本気で考え、覚悟を決めたのは、そこからです」。


収穫したアスパラ
 
そう腹を括れば、できることはまだまだある。内山さんは小売店やレストラン、大手百貨店の青果売り場など、直接取り引きできる販路の開拓に動きます。アスパラは生産者名ではなく、産地名で表示されることが多いため、“専業農家うちやま農園直送”という打ち出し方が、また品質の高さが付加価値を生み、収穫量が落ちても金額面を支えてくれたといいます。

 
アスパラの切り口▲切り口から水分がしたたるほどみずみずしいアスパラが、青果店、レストラン、個人宅に直送される
 

「僕の強みは、生産しながら営業ができること。現場の状況をわかりやすくバイヤーやシェフに伝える言葉を持っている。その代わり、状態があまり良くない時も隠さずに話します。すべてをさらすのは勇気がいるけれど、これは信頼を得る大切な作業でもあるんです。人間関係がちゃんと築けていれば、 簡単に“じゃあもういらない”とはならない。信頼関係が基本にある農業っていうのは、仕事を充実させてくれます」。
 
会社員としてさまざまな経験を積んだ8年。アスパラに人生を捧げる覚悟を決めた8年。そして今年、彰さんから経営移譲を行い、内山さんは経営者として歩み始めました。
「アスパラが好きなんですよね。つくるのも、食べるのも(笑)。後継者へと親父が繋いでくれたので、半世紀、そしてその先へと、質の高いものをつくり続けていきたい。そして、これまでいろんな人に助けてもらっているので、何かの形で返したい思いもあります。人の笑顔に貢献できるアスパラ農家でいたい。そんな風に思っています」。
 

笑顔の内山さん▲内山さんの思いや考えを綴ったブログのタイトルは、まさに覚悟を記した「日本一のアスパラガス農家になる」
 

変化を言い訳にしない。逆に変化を前向きに楽しむ。とことん考える。逃げない。”覚悟”という言葉はどこか重々しい響きがあるけれど、それを語る内山さんの、屈託のない晴れ晴れとした笑顔が印象的でした。
 

関連サイト

うちやま農園
※うちやま農園のアスパラは、上記Webから地方発送可能。また収穫体験なども受け付けている。

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Writer

小西 由稀

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