重要文化財「網走監獄」が伝える北海道の歴史

 

博物館網走監獄は、1890(明治23)年から実際に網走刑務所で使用されてきた建物を保存公開している歴史野外博物館です。罪を償いながら北海道開拓に果たした罪人たちの功績と生活を今に伝える施設で、今年2月には正式に重要文化財に指定されました。
重要文化財として評価されているポイントと施設が語る北海道の歴史について、現館長で重要文化財指定に関わる調査を担当された北海道大学名誉教授の角幸博先生にお話しを聴いてみました。

 

重要文化財になった網走監獄とは…?

映画『網走番外地』シリーズで有名になった網走監獄は北海道で120年の歴史をもつ集治監(受刑者の収容施設)。1890(明治23)年、当時人口600人あまりの小さな漁村だった道東の網走に収監された受刑者は、北方の防衛と北海道開拓の役割も担い、未開の地同然だった北の大地に道路や鉄道、港や農地を建設するなど、その尊い労働力は北海道の発展に大きく貢献しました。




 
1983(昭和58)年、網走刑務所の全面改築工事に伴い、教誨堂、獄舎などを移築保存した博物館網走監獄が開館。網走の観光名所として注目されていましたが、明治期の木造監獄建築の数少ない遺例としての価値が認められて国の重要文化財として指定され、観光資源としてだけでなく学術的な研究対象としても期待が高まっています。

まだまだ未知の歴史的価値が眠る道東地域で、釧路管内厚岸町の国泰寺に次いで2例目の重要文化財。この快挙は道内のメディアにたくさん取り上げられたほか、最近では「マンガ大賞2016」で大賞作品となった『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)の舞台としても話題になりました。




 


 

博物館網走監獄館長・角先生と網走監獄との長くて深い関わり

博物館網走監獄専任館長に就任された角先生は、北大名誉教授で道内建築史研究の第一人者。実は網走監獄と角先生には長い歴史と深い縁がありました。角先生がはじめて網走監獄を訪れたのは1977(昭和52)年、建築の写真集に掲載する網走監獄の建物の写真を撮りに行ったのがきっかけだったとのことですが、当時の様子はどうだったのでしょうか。
 
「行刑施設として使われていた当時は、当たり前だけど施設内に囚人や看守がいます。監獄の塀の中は緊張感があり、ドキドキしたことを思い出します。1981(昭和56)年には、博物館に移築される建物(教誨堂)の解体記録を撮影しに再び現地へ。今は無くなってしまった建物もたくさんありました。その時はまさか自分が博物館網走監獄の館長になるなんて思っていなかったね」

かれこれ40年前から始まった網走監獄とのなれそめをお話ししてくれた角先生。
当時撮りためた写真の記録は、その後、重要文化財指定に関わる大変貴重な資料になりました。







 

もっと観て、ふれて、親しんで、北海道のあゆみを語る歴史的建造物 


 

監獄という特異な建物群と、東京ドーム約3.5個分の広い敷地を持つ博物館網走監獄。今までも施設の個性を活かした展示や体験プログラムを行っていましたが、重要文化財に指定され、長く網走監獄の価値を探求してきた角先生が館長就任後、これからどのような取り組みがなされるのでしょうか。
「重要文化財として、さらに学術的な研究調査を進めたいですね。特に、若い世代の学生や職人さんにたくさん関わってほしい。先人が遺したものを体で学ぶことができる歴史的建造物は、触れることができる教材。瓦ひとつにも歴史があり、使われたいきさつからひも解く物語や言い伝えを知るのも面白いですね」




 
「もちろん、学術的なものにこだわらず、楽しいこともたくさん取り入れていきたいと思っています。施設のあたらしい使い方や、昔の雰囲気を味わえる体験も。道東の厳しい寒さだって、当時の建物の機能や暮らしぶりを知るには他にない貴重な環境です。博物館には多言語のガイドマップも用意しているので、外国の方の来館も大歓迎!」

 




 
文化財と聞くと、ついかしこまったイメージを持ってしまいますが、網走監獄ではさまざまな視点から施設を楽しめる展示や季節ごとのイベントを用意しています。ぜひ一度、本物の建物を観に行きましょう。写真では観ることのできない、そこで生きていた人々と時間がつくり出した歴史の物語が伝わるはずです。

敷地内の桜並木も見ごろを迎える今の季節、博物館網走監獄を訪ねに道東へ足を運んでみませんか?




 

関連リンク

博物館網走監獄HP
NPO法人歴史的地域資産研究機構(れきけん)HP