2016年04月08日 | チバタカコ

半導体のプロがつくった、北海道産ウクレレ「Ezo’s Ukulele」

札幌スタイル認証「Ezo’s Ukulele」


原料は道産アカエゾマツでmade in北海道。考えた人も道産子で、しかも異業種の半導体のプロ。そして、最初に売ったのは北海道でも国内でもなくハワイ。北海道発、道産ウクレレ「Ezo’s Ukulele(エゾズ ウクレレ)」を紹介します。
 
 

北海道が好きだから、北海道の材料で

道産材でウクレレをつくったのは、千歳市にある(株)クワイアンという会社。音楽関係の会社かと思いきや、事業内容のメインは「半導体」。楽器のウクレレとは全く関係のない業界です。半導体のプロが、なぜウクレレを?
代表の宮城英輔さんに話をうかがいました。
 

(株)クワイアン代表、宮城英輔さん▲(株)クワイアン代表、宮城英輔さん。「クワイアン」とは「Quiet Ambitious」の造語で、静かなる志し、秘めた志しという意味があるそうです
撮影:チバ
 

「音楽が好きで、特にギターが好きで自分で弾いたりもしていました。ウクレレはおもちゃみたいなもんだと思っていたのですが、ある時、ハワイのウクレレの美しい音色を耳にして、これはすばらしい!と心から感動しました。そこから俄然ウクレレに興味を持つようになりました」。
 
宮城さんは札幌出身で、関東の大学に進学。一時は東京で就職しましたがUターン。半導体のエンジニアとして長年勤め、平成21年に独立し(株)クワイアンを立ち上げました。
その独立時期、宮城さんの心の中にあったのがウクレレだったそうです。
 
「仕事なので半導体からは離れませんが、漠然と自分のためのウクレレが欲しいと思っていました。大学の時に初めて北海道を離れて、自分は本当に北海道が好きなんだということに気づいたんです。それで、自分のためのウクレレなら、できたら大好きな北海道の材料でできたものがいいなぁと考えていました」。

 

道産アカエゾマツを探して、探して、たどり着いたのが下川町

独立後は本業に力を入れていましたが、しばらくして「道産材でウクレレをつくりたい、いや、つくろう!それを商品にしよう!」と決意。そこから、ギターやピアノなど楽器の材料に道産のアカエゾマツが使われていること、有名なバイオリン職人も道産アカエゾマツを使っていることを知り、ウクレレ用の道産アカエゾマツを探す日々が始まりました。
しかし、北海道の木だからどこにでもあると思ったら、どこを探してもアカエゾマツが全くありません。「植樹した人工林のものはあるんです。が、ウクレレをつくるには人工林のアカエゾマツではサイズが合わず、木目も荒い。天然木が必要なのですが、それがなかなか出てこなかった」(宮城さん談)。
そんな時、下川町に地元の天然アカエゾマツを使って楽器をつくろうとしている人がいるという話を聞いて、ツテを使ってそこにたどり着ついたそうです。

 
下川町のアカエゾマツ▲「Ezo’s Ukulele」の原材料、アカエゾマツの天然樹木
 

「これはもう、奇跡的というか、運命というか、本当に縁だったのだと思います」と宮城さん。下川町でアカエゾマツの入手ルートは確保できました。

 
ウクレレの原材料として、アカエゾマツを丸太で購入▲ウクレレの原材料として、アカエゾマツを丸太で購入
 

そこで丸太(原木)を購入し、下川町の製材所でウクレレ用に製材、乾燥し、自社倉庫にストックしているそうです。

 
下川町の製材所でアカエゾマツを製材▲下川町の製材所でアカエゾマツを製材


材料が確保できたら、次はようやくウクレレづくりです。
「私は、ウクレレをつくる技術も知識も持っていませんから、つくれる人に依頼しなくてはなりません。道産材でウクレレをつくりたいという話を、あちこちで熱く語っていると、これが出会えるものなんですね。当別町でギター製作をしている職人さんが私の気持ちを理解してくれて、手をかしてくれることになりました」(宮城さん談)。
 
 
当別町でウクレレ製作▲「Ezo’s Ukulele」はすべて手作業です
 

当別町でウクレレ製作
 
当別町でウクレレ製作

しかし、ここでもまた試行錯誤が続きます。大きさ、板の厚み、穴の大きさなど、何もかもが手探りだったそうです。宮城さんは「板をはずしては削り、またくっつけて、ああでもない、こうでもないを繰り返し、アカエゾマツに最適な構造を見つけるのに実験を重ねて研究しました」と話してくれました。
 

試作品を手にする宮城さん▲「Ezo’s Ukulele」の試作品第1号を手にする宮城さん。「すべては、ここから始まったんですよ…」と感慨深げに話してくれました
撮影:チバ

 

ウクレレ完成!したっけ、ハワイで売ってみるか

試作品をいじっていじって1年、ウクレレはようやく完成しました。次のステップとして考えたのは、これをどうやって世に出すか、ということ。つまり、商品販売をどうするかということです。 
そこで宮城さんは、ハワイへ飛びました。ウクレレといえば、ハワイ!だったら、本場で勝負してみようという発想でした。「Ezo’s Ukulele」を持って、楽器店に飛び込み営業をしたそうです。
 

ハワイのショップで販売している「Ezo’s Ukulele」▲ハワイのショップで販売している「Ezo’s Ukulele」

 
「ハワイの人たちはとても親切で、飛び込みで行っても話を聞いてくれるし、ウクレレを見せたら、とても好意的に協力してくれました」と宮城さん。また、ハワイで営業している時に、偶然にもハワイを拠点にしている日本人アーティストと出会い、その人の紹介もあり営業もスムーズにできたそうです。

 

何十年後も、北海道発のウクレレとして国内、国外へ

「Ezo’s Ukulele」は、平成27年度の札幌スタイル新規認証商品に選ばれました。ハワイのショップでも売れています。また、ハワイのプロのウクレレ奏者が「Ezo’s Ukulele」で弾いたCDも発売される可能性があるそうです。「北海道の材料でできたウクレレが欲しいな」という宮城さんの想いは、たくさんの人たちとの出会いでカタチになり、少しずつ世界が広がっています。

 
札幌スタイル認証「Ezo’s Ukulele」▲札幌スタイルに認証された「Ezo’s Ukulele」。ソプラノサイズとコンサートサイズの2種類展開。メイン素材は道産アカエゾマツで一部に道産エンジュを使用
 

歩き始めたばかりの北海道のウクレレ「Ezo’s Ukulele」ですが、これからの目標を宮城さんに尋ねました。
「今年の初夏くらいに生産体制が整う予定です。そして札幌市内の楽器店でも販売できるよう動いています。やり始めたことは、継続しないとダメだと思うんです。なので、あせらず、できることを一つひとつ積み重ねながら、何十年後も北海道発のウクレレでいたいと思っています」。
近い将来、札幌コンサートホール Kitaraに「Ezo’s Ukulele」の音色が響くかもしれません。もしかしたら、PMFやサッポロ・シティ・ジャズでも、「Ezo’s Ukulele」を手にした奏者が登場するかもしれません。そう考えると、ワクワクします。
 
ところで皆さん、そろそろ「Ezo’s Ukulele」の音色が気になりませんか?取材の時に、宮城さんにちょっと弾いてもらいました。

 
▲「へたくそなんで…」と言いながら弾いてくれた宮城さん。使っているのは「Ezo’s Ukulele」ソプラノサイズ
 

ウクレレの音色を聞き比べたことはありませんが、宮城さんが弾いてくれた「Ezo’s Ukulele」の第一印象は、とても柔らかく、まろやかな音だと感じました。ウクレレはハワイの青空が似合うのでしょうが、北海道のウクレレの音色は、北海道の森や緑の牧場、美瑛のパッチワークの丘や十勝の広大な畑が思い浮かびました。
皆さんは、どうですか?
 
 

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