情熱の仕事人。「梅光軒」のラーメンで北海道・旭川と世界をつなぐ!「井上雅之」



旭川市に本店を構え、創業からまもなく半世紀。旭川ラーメンの老舗「梅光軒(ばいこうけん)」の味は今、アジア各国へも広まっています。ラーメンで世界に挑む、梅光軒2代目で株式会社オーシャン代表、井上雅之さんの情熱に迫ります。

 

アメリカ留学で得た、気づき、夢

動物系と魚介系のスープを合わせたダブルスープが主流で、しょうゆ味が有名な旭川ラーメン。その名店の1軒、梅光軒のラーメンは、豚骨・鶏ガラからとったスープに魚介ダシをブレンド。中細のちぢれ麺に絡む、こってり深みがありながら後味あっさりの“こてあっさり”なスープが特徴です。





1969年に創業した梅光軒。父親の店の門を叩いたのは、井上さんの決意の表れでした。
アメリカの文化に興味をもっていたことから、地元・旭川の高校を卒業後に単身渡米。ネバダ州の語学学校に通ったのち、ロサンゼルスの大学でマネジメントとマーケティングを学びました。
「自分が影響を受けたこの地に、日本人として何か礎を築けないだろうか」。新たな引き出しが増えていくうちに、そんな思いが芽生えていました。
 
海を隔てた環境に身を置いて見えてきた、日本、北海道。そして、それまで興味がなかったという家業のことも俯瞰できたことによって、井上さんは気づきました。「父の職業、ラーメンこそ日本の文化」だと。





5年半に及ぶアメリカ生活を経て帰国。「ラーメンで海外にいきたい」。その訴えに対し、父親から返ってきた言葉は、「寝言をいう前にまず、つけ場(調理場)に10年居ろ」というものでした。24歳で弟子入り。修業は掃除からのスタートでした。
一心にラーメンと向き合う父親、兄弟子。その仕事から井上さんは、ラーメンの素晴らしさ、奥の深さを思い知ったといいます。

 

シンガポールを皮切りに、香港、台湾へ

修業を始めて10年が経った頃、海外進出のチャンスが訪れました。2006年、梅光軒の海外事業を担う会社として、株式会社オーシャンを設立。同年に井上さんは、シンガポールへと渡ります。
東南アジアの“熱”を肌で感じ、さらに紹介を受けた店舗物件は、オフィス街が目の前という立地。「いける」と踏み、Baikohken Private Limited 社を立ち上げて、2007年にシンガポールでの出店を果たしました。





総席数70席のところを、まずは50席に抑えて開店。しかし、いざ暖簾を上げたものの、1日の来店客は20名ほど。苦戦する日々が続きました。
半年が過ぎ撤退も覚悟していた矢先、現地のテレビ局が梅光軒を舞台に“日本のラーメン”を解説する番組を制作。この番組の放送が起爆剤となり、来店客数は20倍以上に増えました。「今は日本から相当数のブランドが進出していますが、当時はごくわずか。ラーメンという食べ物が、ほとんど知られていなかったんです」。
この3年後、日系百貨店に2店目を出店。そして2012年には香港、また、数年間にわたってテストマーケティングをしてきた台湾に進出するに至りました。





海外初出店当時から一貫しているのは、日本と同じ味を提供すること。
「味は変えていませんが、アジア圏の方は塩気に対してデリケートな傾向があるため、味が濃いと感じたら白湯スープを足して食べていただく。シンガポールでは卓上に唐辛子オイルを置き、台湾ではガーリックチップを用意して、お客さまがカスタマイズできるようにしています。でも、『これが私たちのラーメンです』とやってきたので、スープを薄めるお客さまは少なくなってきていますね」。
 
また、すべての店舗に日本人の社員を配置しているそうです。
「僕たちが積極的に現地に行って、ソフト面も含め日本のクオリティを体現する。日本をスピークアウトしていく。今の時代、我々の商売に求められていることですし、そうすることが将来的に日本のためになると思っています」。

 

ラーメンを広めることで、旭川に還していく

2016年、また新たな挑戦が始まっています。この2月にアジアを代表するハブ空港、香港国際空港に出店。加えてベトナムへの進出、台湾新店舗の開店も決まっています。そして、梅光軒のラーメンはアメリカへ。ハワイに出店するため、すでに同国東海岸デラウェア州で会社を立ち上げ、準備を進めているそうです。
 
「7月、ワイキキでオープンさせます。これは、世界中から観光の方が集まるハワイというマーケットで、私たちのラーメンがどのように認識されるのかというトライアル。思い切りやってみます」と力を込めます。





グローバルな視野で可能性にチャレンジしていく井上さん。その行動は、「梅光軒を育ててもらった」旭川に対する思いと結びつきます。
 
「いろいろな場所で梅光軒の味を提供していくことで、ラーメンを食べた世界の人たちに旭川を訪れてもらい、国際交流につながっていけばと考えています。そのためにも、市民のみなさんが誇りに思えるような、“梅光軒のあるまち・旭川”といってもらえるようなブランドになっていきたい」。また、こうも語ります。「旭川では野菜・果物、お米がつくられています。農家さん、加工業者さん、僕たちのような飲食店が一緒になって食産業を盛り上げ、発信していく未来に向かっていけたら」。





自分の足で動くからこそ、人と巡り会い、道が開けていく。チャンスを掴んだら、全速力で突き進むのみ。ビジネスプランには、ヨーロッパも見据えたさらなる展開が盛り込まれています。
「世界にラーメンを」。井上さんの情熱は、これからも国境を越えていきます。

 

関連リンク

梅光軒
株式会社オーシャン