情熱の仕事人。食を軸に“つながり”を生み、広げる。株式会社グロッシー代表「北村 貴」



インターネットを活用したマーケティングにいち早く着手し、ビジネスを切り開いてきたマーケター。食の生産者と食卓をつなぐことに取り組み、また、地元・十勝の働く女性のキャリアデザインに向けた活動の担い手になるなど幅広く活躍。北村貴さんに話をうかがいました。

 

29歳で起業。東京で成功を掴む

帯広市に本社を置く、株式会社グロッシー。同社では全国各地の料理教室、約300人の料理家とのネットワークを生かし、プロが提案するレシピと食の情報サイト「フードソムリエ」の運営、企業の商品・メニュー開発やプロモーションを手がけるなど、食に関連する様々なビジネスを展開。また、味覚を磨く「MIIKU(味育)」という食育活動にも取り組み、子供たちに向けた食体験の場や、通信教育の大手と提携して「食育実践プランナー」講座も設けています。





北村さんは浦幌町の出身。短大進学で十勝を離れ上京。卒業後、石油メーカー、人材派遣会社を経て、マーケティング業界へと飛び込みました。
折しも時代はインターネットの黎明期。パソコン通信で人とつながり世界が広がっていく面白さを体験し、人気女性誌のオンライン版のプロデュースにも携わっていた経験から、北村さんはマーケティングにもネットが“使える”と考えます。しかし、当時在籍していた会社では理解されず、「ならば」と独立・起業の道を選択したのです。

まだ珍しかったインターネット専業のマーケティング会社を、仲間と共に立ち上げたのは1997年のこと。ネット上に女性モニターを組織化し、迅速にリサーチを行える仕組みを構築。化粧品や下着をはじめ、様々なメーカーをクライアントに商品開発を手がけていきました。

 

自身のリソースを生かしながら食のつなぎ手に

東京で成功を収める一方、膨らんでいたのは「人口が減り寂しくなっていく故郷」への思い。「何かできることはないだろうか」。Uターンを決意し、戻ってまず始めたのが食材のネット通販でした。
十勝、北海道の本当においしい食材を届けるために、自ら生産現場へ。生産者の思いや考えを知ることは、自身の新たな役割を見出し、また、マーケティングのテーマを食に絞り込む契機にもなりました。

「課題は販路でした。マーケットはどこにあるのかと考えた時、食に興味・関心の高い生徒さんが集まる料理教室ではないかと。それで各地の料理教室、料理家をネットワーク化したんです」。
2007年、グロッシーを設立。当初は販路確保が目的だったこのネットワークが、現在のビジネスの強みになっています。





いま目指しているのは、東京でのキッチンスタジオの開設です。
「私たちの事業における一貫したテーマに、食のつくり手と食べ手をより近づけようということがあります。料理家のネットワークも生かしながら、マーケティングはもちろん、十勝をはじめ各地の食材も含めて、このスタジオを食の情報を発信していくハブ的な場所にできたらと。食から人と人、人とモノ、地方と都市、日本と世界をつないで、イノベーションを起こしたいですね」。
 
「食べることは人間の生きる基本」と語る北村さんの思いであり、経営理念は「毎日のテーブルにストーリー」をというもの。「良質で役立つ情報の発信にこだわって、自分の食べているもの、食材・産地に興味を持つことや、食卓から食生活を見直したり豊かにしたりするきっかけをつくっていけたらと思っています」。
開設を目指しているキッチンスタジオでも会員を募り、週1回みんなでつくって食べる「晩ごはんの日」を計画しているそうです。
 
常にアイデアを抱えている北村さんの仕事のテーマは、「課題解決」だと話します。
「小さな疑問や気づきをふくらませていって、共感性が高ければ社会的な課題だろうと。多くの人は実地体験からしかアイデアを育てることができないと思うのですが、私はその最たる人だと思っているんです」。




 

輝く女性たちが地域をもっと元気にする

地域の活動にも熱心な北村さん。そのひとつに、事務局を担う「十勝キャリアデザインネットワーク」があります。農業、飲食業、自営業など異業種の女性で組織された同ネットワークは、北村さんが講師を務めた起業塾をきっかけに2009年に発足。会員は約30人いるそうです。
 
「十数年前に十勝に戻ってきた時、女性の働き方に驚きました。社内でキャリアアップを求めたり、起業を考えたりすることはまだ特別なことで、それは女性側にも経営側にも課題があると感じました。必要だったのは、学び合う場と支え合う仲間。悩みや経験を共有しながら、互いに成長していこうと活動してきています」。

活動は一定の成果を見せ、立ち上げからこれまでの間に、管理職に昇任したり起業した人がいたり、会員の方々のキャリアステージは大きく変わっているといいます。

隔年で開催している「キャリアデザイン大賞」では、十勝で働く女性のロールモデル(手本)を発掘して顕彰。「身近な人のチャレンジや頑張りを伝えていくことで、『私も頑張ろう』という人を増やしていきたい。女性が元気になることで、地域に必ずメリットが生まれると思っています」。
 
同じようなグループがオホーツクエリアでも立ち上がったそうです。北村さんたちの活動自体が、他地域の働く多くの女性に一歩踏み出す勇気と共感をもたらし、まさにロールモデルとなっています。





調理講習や各種セミナー、食材商談会など、サッポロビールが運営する飲食店向けのフェア「繁盛店の扉」が4月13日に帯広市で開催。このフェアで行われるプログラムにも北村さんが関わっています。

帯広と東京オフィスを行き来し、各地も飛び回る北村さん。パワーの源は「ごはんをつくって人と楽しく食事をすること。出会う方々からの刺激」といい、仕事を続けられるのは「社員のおかげ。支えられています(笑)」と感謝を口にします。
 
一歩先を見て歩み続けてきている北村さんに、「最終的にたどり着きたいところは?」と投げかけると、強くこう返ってきました。「自分の町、浦幌ですね。いつか故郷に貢献できる仕事をしたい。そう考えています」。

 

関連リンク

株式会社グロッシー
フードソムリエ
料理家ネット
一般社団法人日本味育協会
十勝キャリアデザインネットワーク