情熱の仕事人。発想は“笑顔”のために生かす!東川町職員「矢ノ目俊之」



大雪山旭岳の麓に位置する「写真の町」東川町。特色のある取り組みで、町のファンを増やしています。今回の情熱の仕事人は、東川町役場の矢ノ目俊之さん。利用する人にとって魅力的な、様々な企画を仕掛けてきている熱き行政マンです。

 

新しいことに挑戦する「写真の町」

旭川空港から車で約10分。大雪山系の旭岳や天人峡を擁し、美しい山並みと田園風景が広がる東川町は人口約8,000人の町です。旭岳の雪解け水が豊かな水資源をもたらし、上水道がなく全町民が地下水で生活。その水の恵みを受けて「東川米」が育まれ、また、木工クラフト、家具生産も盛んに行われています。





被写体としてふさわしい町を目指すと同時に、大自然の魅力を発信し、その景観を守っていこうと、自治体初の「写真の町」宣言をしたのは1985年。当時、全国の市町村が町おこしを模索するなか、東川町は“モノ”ではなく、写真という“文化”に焦点を当て、町づくりを進めてきました。写真文化活動のメインのひとつ「写真甲子園」は、20年以上続く夏の恒例イベント。全国から集う高校生と地域の人たちとの爽やかな交流が生まれています。

「東川町は、新しいことを取り入れてチャレンジしていく気風があり、外から来る人を受け入れる寛容さをもっている町なんです」。そう話す矢ノ目さん自身も“東川気質”を発揮し、現在同町で実施されているサービスや事業の企画・立ち上げを手がけてきています。

 

婚姻届用紙がピンク色?! 全国初の婚姻届

松岡市郎町長新任時の2003年、経済の活性化を目的に新設された特別対策室に配属。「自由な発想で仕事ができる部署ということもあり、新しいことをやってみたいという気持ちが強くありました」。
視野を広げて事業実施のプロセスや手法などを学びたいと、企業での研修を自ら志願。当時の直属上司、町長から承諾の後押しを受け、東京のマーケティング・コンサルティング会社で3ヶ月間研修。民間の発想、マーケティングの実践を学び得ました。





東川町では2005年から、新しいデザインの「新・婚姻届」を導入しています。
婚姻届は茶色の用紙で、通常は役所に提出するだけで手元には残らないもの。それに対して、東川町の用紙はピンク色で台紙とセットになった複写式。届の写しが返却され、手元に残るという仕組みになっています。また、台紙はポケット付き。思い出の写真やCD、チケットなどを入れて封をしておける、いわばタイムカプセルの役目も果たしてくれるのです。

「新・婚姻届」の実現は、東京研修期中に見たテレビ番組で、このかたちの婚姻届が紹介されていたことに端を発します。発想に心を動かされた矢ノ目さんは、すぐさまデザインを手がけた著名アートディレクターの事務所にメールを送り直談判。東川町での採用に協力を得られることになったのです。





「夫婦になるという、いちばん幸せなそのときの気持ちを忘れずに残しておけるサービスを提供したい」。役場内部、担当部署への説明、また、前例のない婚姻届を実施にするにあたり、様式の法令確認のため何度も法務局へ。東京研修から戻って約半年後に、東川町オリジナルの婚姻届が誕生しました。
また、戸籍窓口で夫婦となった瞬間を撮影。2人の写真と直筆メッセージを東川文化ギャラリーに保存することを決め、入籍した足跡も永久に残せるようにしました。

婚姻届はどこの市町村へも提出が可能です。新・婚姻届用紙の受け取り・提出は東川町役場の窓口限定ですが、利用は増え続け、届け出する約8割が町外・道外のカップルだそうです。
「住民サービスということがもちろん第1ではあるのですが、町外の方が東川を訪れるきっかけになり、思い出の地にしてもらえることが、この婚姻届の大きなポイントです」。

 

投資して町の株主に?! 町づくり参加への東川スタイル

「ひがしかわ株主制度」も、またユニークです。同制度は、2008年から始まった「ふるさと納税」の東川版。その中身は、東川町を応援したいという町内外の人に「投資(寄附)をして「株主」になってもらい、町づくりに参加してもらおうというものです。東京研修中の人との出会いから、企業の株主優待制度にヒントを得て、立ち上げにつながりました。





「集まったお金の使い道を町が決めるのではなく、応援したい事業を選んで投資でき、1度投資をしていただくと永久に株主となります。単なるふるさと納税のかたちではなく、寄附をしてくださる方の満足度が高かったり、関わりが続いていったり、そういう仕組みがつくれないかと考えました」。
株主には、町内のコテージ宿泊が半額になるなど施設の優待利用や、1年に投資した株数に応じた株主優待も用意しています。

例えば、森と環境を守る森づくり事業では、この事業に投資している株主が全国各地から参加して植樹を実施。町民との交流機会にもなっています。また、オーナーズハウス建設事業は、集まった資金で、写真活動に関わる人たちや株主が来町時に利用できる施設づくりを目指しています。
株主数は4,500人を突破し、投資累計額は約1億1,800万円(2015年9月末時点)にのぼるそうです。

 

「誰のためにやるのか」。ブレない軸

「誰のためにやるのか」。発想のスタートは、すべてそこからだといいます。どんなサービスや事業も、「町民、東川に関わる人のためにならなければ、絶対に町のプラスにはならない」というのが矢ノ目さんの信念です。

「新しいことをしようというときは、役場内にプロジェクトチームをつくって町長にプレゼンをします。僕ひとりがアイデアを出すわけでもやるわけでもありません。その事業が利用してくださる人にとって、楽しい、うれしいと思えるものだろうか、未来に笑顔が見えるだろうかとスタッフみんなが考え、チームで動くことができているのが東川の強みのひとつだと思います」。





矢ノ目さんは、東川町と同じ上川管内の愛別町出身。転職を経て東川町の職員になり、はじめに就いた部署が商工観光課でした。
「僕は外から来たわけですが、イベントをしたり商品を企画したりするときに、商店の方々や農家さん、町の人たちが惜しみなく協力してくれるんですよね」。
そんな東川に「仕事で恩返しをしたい」という思いが、矢ノ目さんの原動力になっています。
現部署は保健福祉課の社会福祉室。何か明るい未来に向かえる取り組みができないだろかと模索中です。

「写真の町」をキーワードに町の質を高める工夫をし、様々な事業を取り入れて魅力を発信している東川町。移住して創作の場を構えるアーティストや、カフェなどを開いたりする人も増え、人口はここ20年数年で約1,000人増加しているといいます。

北海道を訪れる機会があったら、ぜひ訪ねてみてほしい町です。




 

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