いくつ読める?釧路町の「難読地名ロード」を走ってみた

十勝の広尾町から根室市の納沙布岬まで、300km以上にもおよぶに及ぶ海岸線は、「北太平洋シーサイドライン」と呼ばれています。




そのうち、釧路市の隣町の釧路町を走る約40kmは難読地名のオンパレード。いつの間にか「難読地名ロード」と呼ばれようになり、道道142号沿いには釧路町が建てた22枚の難読地名の解説看板まであります。
北海道の地名はアイヌ語がベースで、そこに漢字をあてたので難読ですが、それがまた魅力でもあります。また、アイヌの人たちの伝統的な生活、当時の北海道の自然環境を理解する上で貴重な文化財産ともいえます。
今回は釧路市側から尻羽岬を目指すルートでドライブ。途中、霧が立ち込めすべての看板は探せませんでしたが、その中から難易度の高い地名を紹介しましょう。
※釧路町「時空旅行~地名の散歩道」(郷土の地名生活文化を知る会)を参考に解説していますが、わかりやすいように一部、個人的主観で表現している部分もあります。ご了承ください。




 

又飯時/嬰寄別

初っ端から難問です。「又飯時」は普通に読むと「マタメシドキ」ですが、そう簡単ではありません。「嬰寄別」にいたっては、まったく思い当りません。

又飯時:マタイトキ、海の瀬の荒いところ。
一説には「山奥にいても浪の音高き所なり」と古文書にあるため、この解釈としたそうです。読み方はわかれば、この漢字をあてたのも「なるほど」と思えますね。

嬰寄別:アッチョロベツ、楡(ニレ)の皮を漬けておく川。
アッ=オヒョウ楡の皮。アイヌの人たちは織物の繊維として利用。楡の樹皮を川に漬け、その繊維を取り機織りをして樹皮衣をつくっていたそうです。

ベツ=川。ぺッ、ナイも川を表すことが多いようです。北海道の地名には、登別や陸別など“別”がつく地名が多数ありますが、近くに川が流れていることが多いのです。また、それだけ川は生活に欠かせない大切な存在だったことがわかります。



 

浦雲泊/跡永賀

同行したカメラマンは自信を持って、「ウラウンパク」と「ソクエイガ」と答えていましたが、正解やいかに?

浦雲泊:ポントマリ、舟がかりが出きる小さな入り江。
うわー、これは絶対に読めませんね!ポン=小さい、トマリは日本語から入って来たアイヌ語だそうです。意味は船着き場。小さな船着き場と解釈するのが自然でしょうか。泊村、利尻島にある鴛泊(おしどまり)港など、トマリとつく地名は道内にいくつもありますね。
跡永賀:アトエカ、昔海であったところ。
これは納得。アトゥイ=海、オカケ=跡のところが転じて、アトエカ。



 

冬窓床

このルート最大のミステリーなのが、「冬窓床」。もう「フユマドユカ」としか読めません!ムリヤリ読めば、「トウソウショウ」?

冬窓床:ブイマ、海の中に立っている岩。
この地名についてはアイヌ語のブユモィ=穴の入り江から転じたといわれていますが、なぜこの漢字をあてたのかを含め、謎だらけ。釧路町によると、そもそも、地名の漢字を考えた人が誰なのか、また読みにくい漢字を選んだ理由もはっきりしていないとのこと。謎は深まるばかり。一字もかすらない“床”の存在意義がわかりません。



 

入境学/賤夫向

むむむ、これもかなりハードルが高い。「ニュウキョウガク」と「センフコウ」としておきましょうか。

入境学:ニコマナイ、川尻に流木の集まる川。

賤夫向:セキネップ、樹木の少ない山で石落ちるところ。
道道から少し登った高台にある展望広場からは眼下に太平洋が見渡せ、断崖絶壁の海岸線や奇岩も見ることができる。樹木が少ない山で石落ちる=断崖という意味がわかります。



 

分遣瀬/老者舞

読者のみなさん、ついてきてくださいね。さぁさぁ、コチラも横綱級。何と読むでしょう?

分遣瀬:ワカチャラセ、水が滝となって落ちているところ。
周囲には滝や川は見当たりませんでしたが、昔は7~8戸の人家があって滝水を飲用水としていたそうです。

老者舞:オシャマップ、川尻に倉の形をした岩山があるところ。
「ロウジャマイ」としか読めません!

道道142号沿いに看板はありますが、実際の集落はそれぞれ道道から海岸へと下ったところにあります。すでに人家のないところもありますが、昔から昆布漁などが盛んだったようです。老者舞も大きな集落がありました。



 

知方学/去来牛

ゴールの尻羽岬まであと少し。どう見ても「チホウガク」であり、「キョライギュウ」であります。

地方学:チポマナイ、川口に魚がたくさん集まるところ。
チポは、魚を意味するチェプに由来。ナイ=川なので、鮭などが遡上する川があったのかもしれません。ここも九十九折の坂道を下って海岸線に向かうと大きな集落があり、静かな入り江がありました。

去来牛:サルキウシ、葦(よし)の群生しているところ。
横綱級の難読地名をこれだけ見てくると、違和感なく「サルキウシ」を受け入れている自分に気づきます。サルキ=葦、ウシ=群生。葦は湿地帯の植物なので、この一帯は湿地や沼があったのかもしれません。



 

尻羽岬

ようやく尻羽岬に到着!当日は濃霧だったため、釧路町に画像をお借りしました。晴れていると、こんなに美しい太平洋を眺められるんですね!

最後まで読んでくださったみなさんは、もうお気づきでしょう。この「尻羽」は「シリハ」とは読みません。「シレパ」と読みます。最後の最後まで、すんなり読ませてくれないところが、釧路町難読地名ロードの奥の深さです。





結果的に、「なぜこの漢字をあてたのか?」という最大の疑問は解けませんでしたが、アイヌの生活文化や北海道の自然環境を知る上で、貴重な文化的財産。地形に地名の由来や意味を重ね合せながらドライブするのも、また一興です。

 

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